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カナリアさんの秘密のお部屋  作者: クロ
第四章 開拓
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閑話 君はこんなにも



カナリアの様子がおかしかった日は過ぎ、翌日の朝。

僕は身支度を済ませると、カナリアからの伝言を受け取った通り、中庭へ向かう。

白い光は夏の初めを感じさせる。

時の流れは早いもので、もう彼女と会って何ヶ月も経つらしい。


今日はまだ、カナリアと顔を合わせてない。

今から始めて、カナリアと会う。


その事実に若干胸を踊らせながら、カナリアの姿を探す。

彼女はすぐに見つかった。

大きな木の真下。

光に照らされた銀髪が美しく輝いてる。

その輝きは、どんな宝石よりも眩しい。


「カナリア。」


声をかける。

彼女がパッとこちらを振り返った。

琥珀と新緑の瞳に僕が映った時、どうしようもないくらいに喜びが溢れる。

そして、彼女もまた、僕を見た時に瞳が和らいだ。


君が僕と同じ感情を抱いてくれているのかと勘違いしてしまいそうになるが、そっとそれに蓋をして過ごしている。

失うのが怖いから。

知らないうちに、僕は随分と臆病になったらしい。


カナリアの目を見つめ返した時、何やらいつもと違う雰囲気を感じた。

彼女はこんなにも、大人の目をしていただろうか。


「あのね、ロベルト。私、あなたに伝えたいことがあるの。」


無垢な瞳に魅入られ、その美しさに息を呑んだ。


「愛してる。大好き。」



それは、いつものそれとは違って。

ふんわりと微笑みながら、そう言った。


その笑顔を見た瞬間、思った。


僕は、何を恐れているのだろう?

カナリアはこんなにも、まっすぐ伝えてくれたというのに。


「私とー


「カナリア。」


続く言葉を遮る。

あまりないことだから、カナリアも驚いたようで、口を閉ざした。


ざあっと、風が吹き抜ける。


カナリアの前まで歩き、そして、地に膝をつけ、カナリアを見上げた。

見開かれた琥珀と新緑の瞳に、僕が映っている。


自分の心臓が早鐘を打っているのがわかる。


それでも、僕がいうことは一つ。

君のその瞳に、いつまでも映っていたい。


「それは、僕から言わせて。」


息を吸う。

普段の僕なら考えられない行動だ。

こんなにも感情に従ったことがあっただろうか。




「…愛しています。カナリア・リベ・アーレンス様。

どうか、私が貴女の側に立つ事をお許しいただけますでしょうか。

…私と、婚約を結んでいただけますか?」





そっと手を差し出し、カナリアを見上げる。


彼女がどんな選択をしてもいい。


カナリアが最後、幸せでいてくれれば。

けれど本音を言えば、僕が君を幸せにしたい。





「……はい。」





カナリアの瞳が涙で揺れる。

海の波のようで、綺麗だ。


差し出した手に、白く細い手が重なる。

これから先も、この手を守っていこう。


君が、そんな風に笑えるように。


ぎゅっと手を握り、腕の中にその華奢な体を収める。

細い体に縋り付くように抱きしめた。

カナリアが座り込み、僕の首に手を回す。

柔らかな温もりが背中に伝わった。



「ありがとう。…本当は、ずっと、怖かったんだ。君が、僕と同じ感情を抱いていないかも知れないって。でも、違ったみたいだ。」


カナリアの目尻に浮かんだ涙を食べる。

温かくて、しょっぱい。

君が流す涙が、幸せの涙になるよう努力するよ。


「!」


カナリアが驚き、こちらに目を向ける。

その頬は赤く染まっていた。

その仕草でさえ、愛らしい。


ふっと頬が緩む。


「だって、君はこんなにも僕を愛してくれていた。」


カナリアは、僕の頬に手を当てると、優しく、柔らかく笑った。

それはまるで女神のように美しく、柔らかな笑みだった。


「私、気付くのが遅かった。でも、やっとわかった。ロベルトの言う通り。私は貴方をこんなにも愛しているし、貴方も愛してくれている。ありがとう。…私、ロベルトが大好きよ。」


その言葉がどれだけ僕を歓喜させたか、きっと君はわからない。

じわりと胸に浮かぶこの感情が、いつまでも続くように。


この温かな温もりを失うことがないように。

幸せな君を見続けられることが、何よりも嬉しい。


空がどこまでも続くように、未来もどこまでも続いていて欲しい。

そう願っては駄目だろうか?


きっと女神様は簡単には願いを叶えてくださらないけれど。

君という女神様に祈ろう。


ずっと側にいさせてね。



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