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カナリアさんの秘密のお部屋  作者: クロ
第四章 開拓
72/80

とある夜に 3

こんな形で会えるとは思っていなかった。

まるで御伽話のような再会の仕方は誰もが感動するだろう。

一つの劇の見せ所は明るく月明かりに照らされている。


「それで、なぜこんな時間にお姉様は来たの?」


抱き合っていた体を離し、訪ねた。

お姉様は照れるように笑うと、言った。


「会いたくなってしまったあら。後、悩みとか、困っていることがないかなって、考えれば考えるほど心配になってしまって、いてもたってもいられなくなったの。ごめんなさいね。」


お姉様はそこまで言って、急にハッとしたような顔をすると、両手を振って慌て出した。


「あ、違うのよ!?決して、ブロードの坊ちゃんを信頼していないわけではないの!ただ、彼には言えないことがあったらって…」


嗚呼、お姉さまは昔からそうだった。人の不安を感じ取るのが上手で、他者の気持ちに敏感で。

こんなに離れていても、お姉さまの勘はよく当たる。

まるでその瞳が、全てを映しているように。


「…私の心配は当たってたみたいね。話をするには場所がアレだから、部屋に入りましょう?お邪魔しても良いかしら?」


「うん。」


お姉さまに手を引かれて、部屋に戻る。

お姉様の背中はあの牢の中で見た時と同じで、頼もしい。

部屋のマンなあの白いソファに並んで腰掛ける。


「それで、何かあったの?」


ロベルトには言えない悩み。

言ったら、何かが壊れてしまう気がするから。


「…お姉様、この感情がわからないの。私は、ロベルトのおかげで誰かを『愛する』ことを思い出せた。でも、ロベルトに抱く感情が、みんなに抱く『愛』とは違う気がするの。本にね、書いてあったの。『あなたのその感情は恋です。』って。でも、私には恋もわからない。それをロベルトに相談したら、壊れてしまいそうなの。…私は、どうしたらいい?」


今までに感じたことのないこの感情を、誰か処理してほしい。

でも、そんなことができるのなら、人間は生まれていない。

そして、思考も生まれず、感情と名づけられたものも存在しないだろう。


遠くで、フクロウが鳴いている。

夜の帷の中で羽ばたくフクロウは、自由に見える。

真っ暗な世界に灯る、白い翼。

まるで、私にとってのロベルトみたい。


「カナリア。その『恋』を教えてくれたのも、ロベルト殿じゃないの?」


「え…?」


お姉様の静かな声は、白い空間に落ちた。

それは、お腹に氷を落としたみたいに、スッと溶けて。

私の中に、収まった。


「素敵なことね。あなたが『愛』を知れたのも、『恋』を知れたのも、全て彼のおかげなのでしょう?彼がいたから、あなたは『恋』を知ることができた。

カナリア。人間は意外と複雑に見えて、単純なところもある。

『恋』をしたことに理由を求めず、自分の心に浮かんだん感情を大事にしなさい。

ロベルト殿を思い出してみて。


最初に、何を思う?」



目を閉じて、ロベルトの姿を思い浮かべる。

青い瞳が、こちらに向くのが好き。

優しく名前を呼ばれるのが好き。



大好き。



じわりと、胸が温かくなる。

水彩絵の具が滲んだように、美しく儚い。


「思い浮かんだみたいね。その感情が、あなたの本心よ。それは、他の人と違う?」


「うん…」


そう。

愛は複雑だけど、抱いた時に思うことは単純だった。

愛おしい。

でも、ロベルトに対するのは違う。


だって、こんなにも。


「あたたかい。」


あなたの姿を見ると、極寒の地で火を手に入れたような心地になる。

暗い深海の中で、優しい手に包まれているかのように感じる。


お姉様に名前を呼ばれるのは好き。

ロベルトが呼ぶと、嬉しい。


これが、その違いなら。


「…カナリア。答えは出た?」


「うん。」


「そう。よかった。あなたの答えが、あなたの幸せに繋がることを願っているわ。」


お姉様はそう言うと、姿を消した。

光の粒が空中に消える。

皇宮に戻ったらしい。

嵐のような人は、一つ風を残して去っていった。



「ロベルト。私はー」



カナリアの口が何かを形どる。

瞳が煌めく。

宝石のような瞳が星空を映した。



***



ストレートの銀髪が大きなベッドに散らばる。

その人は起き上がると、魔法で何かを書き始めた。


『私の宝物は、まだ小さい。

あの頃と変わっていなかった。

そばに誰もいなかった。私もいることができなかった。

だから、見た目は成長しても、心は幼いまま。

本のおかげで多少の知識はあるようだけれど、感情に…『愛情』に疎くなっている。

ごめんなさい。

私がもっと強くて、誰よりも力があれば、直ぐにでも貴女の側に行けたと言うのに。

無力ね。

私はいつも大事な時に無力。


でも、そんなあの子に、感情を教えてくれた人がいる。

それが私は何よりも嬉しくて。

その人が注いでいる愛を受け止めて、あの子も愛を注いでいる。

互いに互いを満たすことができる関係は、何よりも尊く、美しい。


きっとどんな結果になろうとも、あの子は最後、笑うでしょう。

その笑顔の先にありふれる未来が明るいものになるように願っている。




                 リアナ。』




遅れた更新!

サボり気味な作者です。

桜が散っちゃいました〜。お花見し損ねました。

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