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『祈現の碧』Prevalent Providence Paradigm  作者: 宇喜杉ともこ
第6章 祈りを抱く者に試練は与えられる
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祈りを抱く者に試練は与えられる その8


 試練——自らの願いを通すための通過儀礼。その相手が分霊とはいえ神であるならば、それは試練を課すものとしては十分な存在と言えよう。

  

「そういうことなら、僕は——僕たちは」

 

 正面切って、堂々とこの試練を乗り越えるのみ。

 問答の合間に他のメンツも合流した。

 

「まったく、アンタは一人で突っ切りすぎだっての」

「今回ばかりはアナタ一人に任せはしませんよ」

「僕だって足手まといとは言わせないよ」

「オレも先輩として気張っていかねえとな」

 

「一緒に戦おう——僕たちでならきっと」

 

 ——大丈夫。それは何も今回だけの話じゃない。彼らがいる限り、僕は鬼にはならないさ。

 武を求め、死闘を望み、その末に至る道が鬼だと言うのなら——義心を以て、乱れを()かし(さち)を振り撒く道こそが彼らの灯す道であった。

 

空想基盤仮設・火の型オーム・マーヤー・アグニ——!」

 

 勝負の火蓋を切る炎。空想基盤たる魔法陣を何度も切り替えて様々な技を駆使する。

 

 ——『流土鞭』、『突穿風』による立体的高速移動。

 ——『砲扇火』、『刺棘驟雨』による空間制圧攻撃。

 ——『円環乱波』で攻撃を防ぎ、『虚影歪捻』で相手の急所を突く。

 

 美佳の動きに続いて、僕たちも後を追う。

 

 ——梁山先輩による『牙』の斬撃が碧水の防御をこじ開け、その隙間から見えるトリープの姿を『蛇目(かがめ)』で拘束する。

 ——僕と薫が先輩の作った隙に碧水/突風を放つ。

 ——その一方で荒志郎は何かを『錬成』していた。

 

「幸斗さん、織本さん、こちらに来て少々お時間をください」

 

 僕は問いかけられて、攻撃の手を止める。

 薫も声に気付き集合する。

 

「それで、僕たちを呼んだ理由は?」

 

「ワタシは素晴らしい閃きをしました。幸斗さんの『碧水』と織本さんの『オリガミ』……合わせれば最強なのではと」

 

 …………荒志郎ってさ、もしかして思ってたより賢くないのかな? そう疑いたくなってしまう発想だが、何か算段があってその発想をしたのだろう。

 

「…………一応聞いておくけど、何か策があって言ってる?」

 

 そう言うと荒志郎はドヤ顔でこちらに視線を向け、楽しげに説明を始めた。

 

「フフ、よくぞ聞いてくれました! これなるは対都市規模災害級怪異迎撃砲・フェンシュイバレル(仮)ですッ!」

 

 思いっきり手を振り見せびらかしたそれは、異質な大砲の砲身であった。

 

「えっと……真面目に言ってる?」

 

「ワタシは真面目ですよ? 前々から思っていたんですよねー、二人はシンプルな力ですので、合体して使うことができるんじゃないかと。四元素的にも相性はいいですし、合わせれば強力な効果を発揮できそうです————ので、是非二人に協力していただければと」

 

「僕たちはどうすればいいの?」

 

「それは単純明快ですよ。この砲身に二人の力をチャージするんです。そして溜めたエネルギーを隙を見て放つ————ということですのでぇ! 美佳さん! 梁山先輩! なるべく長く相手の動きを止めててくださぁい!」

 

「ちょっ……いきなり無茶言ってくれるわねアイツ……っ!」

 

「だが、拘束という面に関しちゃ、オレの得意分野だ。いいぜ、どれだけ保てばいい?」

 

 以前もこのような会話があったな、と感じる。けれど今回の先輩の声には余裕があった。

 もちろん命をかけた勝負でないこともあるだろうが、それ以外にも理由があるだろう。

 

「チャージまで十秒、照準合わせ完全停止三秒ですっ!」

 

「オーケー、その三秒はウチに任せて!」

 

 その言葉を信じ、僕と薫はチャージを始めた。

 こちらを狙うトリープから身を挺して守るのは『円環乱波』で防御を張る美佳。背後をとって挟撃を仕掛ける梁山先輩の『牙』。

 トリープが全速力を出さず対応してくれているのがまだ幸いだ。今のスピードであれば、梁山先輩が『蛇目』を使わない限り、攻撃を当てられるし、躱すこともできる。

 その急襲のおかげでかなりの時間を稼ぐことができた。

 

「チャージ完了! あとは照準を合わせて放つだけです!」

 

「だったら、こいつの出番ねっ! 『流土鞭・縛縄』——ッ!」

 

 美佳が放つ魔力の縄は、(つた)のようにしならせ、うねり、絡みつこうとする。

 だが、速度が足りない。伸びた鞭はトリープを追うが、その距離はどんどん離されていく。

 その一瞬が勝機を運ぶ。トリープは流土鞭を避けるべく速度を上げ、空中を高く登っていった。

 そう——『蛇目』は視界内にいるものを止める魔眼。故にどれほど遠くとも見えているのなら射程内。ここからならばどれほど速度を上げても視界内に収めることができる……‼︎

 

「『蛇目(かがめ)』————ッ!」

 

 停止は一瞬、しかしそれで十分。

 流土鞭による拘束に成功。そして照準は定まった。三秒前!

 

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