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『祈現の碧』Prevalent Providence Paradigm  作者: 宇喜杉ともこ
第6章 祈りを抱く者に試練は与えられる
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祈りを抱く者に試練は与えられる その2


  ◇

  

 シャルディーンの要請を受けて宝石の収集に向かったのは、荒志郎と薫の二人であった。

 当然、宝石を集めると言っても鉱山へ掘りに行くという話ではない。そもそも原石を加工する工程を考えれば時間がかかりすぎてしまう。

 であればシャルディーンが提示した場所はどこか——その答えはシャルディーンが資料を置いていったあの廃工場であった。

 そこにはシャルディーンの研究資料の他にも、魔工品の予備や魔術に必要な材料が置かれていたのである。

 

「この広さで探すのはちょっと大変かも…………」

 

 薫の瞳に映るのは積み上げられたガラクタの山。それが大体高校の体育館分の面積に敷き詰められていると感じた。

 確かにこの中から見つけ出すのは困難だろう。だが——。

 

「織本さん、ここはワタシに任せてください」

 

 その右手が力を灯す——。

 荒志郎の『叡智闢く遡源の手(アカシック・リーダー)』による解析が始まった。

 書物、魔術用の道具・材料等はスキップ。検索フィルタを鉱石類に限定。反応複数検知。そのうちトパーズとクォーツに該当する物質がちょうど一つずつあった。

 

「あの天球儀の下にトパーズを見つけました。ワタシはクォーツの方へ向かうのでそちらをお願いします」

 

 二手に分かれて宝石の回収に向かう。素手で掻き分けて掘り進めていくが、ふと——その下から蠢動のような揺れを感じた。

 

「なんだ……っ⁈」


 動き出し、隆起し、鳴動す。

 積み上げられた物の中から探し物の宝石たちが浮かび上がる。

 宝石は廃工場の中心に集まり、融合し一つの像を作り上げた。

 

「金髪の……女性?」

 

 足元までに伸びるドレス。若い姿で、幻想的な雰囲気を漂わせる。

 

「LA——————」

 

 歌声が響く。女の声には殺意が籠っていた。

 そのことに二人が気付いたときには既に、攻撃は始まっていた。

 

「来いっ! オリガミ!」

錬成せよ(インタクト)ッ!」

 

 即座に臨戦態勢に移った。

 中空から傾れ落ちる大波の水。ガラクタの山を巻き込んで薫たちの身に襲いかかる。

 薫は風の障壁を生み出し、荒志郎は大楯を錬成して波を()き止める。

 

「こいつは……僕にとって天敵だ」

 

 薫のオリガミは火や水に極端に弱い性質を持つ。少しのミスで戦闘不能に陥りかねない緊張は大胆な行動を躊躇わせる。

 だが、あえて薫は攻めの姿勢をとった。

 

「織本さん……?」

 

 オリガミの防御を解除し、跳躍。水上をオリガミを紙飛行機のような姿に変形して滑空する。

 

「荒志郎くんも捕まって! やられる前にやる!」

 

 それが薫が下した判断だった。あのまま耐えに専念しても不利だと悟った彼は短期決着に持ち込む判断をした。

 

 距離は約二十メートル。滑空の速度からして所要時間は三、四秒といったところか————。

 

 この行動で相手が後ろに下がって距離を取るのは問題ない。まずはこの波を抜けることが大事だった。

 敵はこちらを見ながら浮遊で後退する。しかし少しずつ距離は縮まっていた。

 滑空にもそろそろ高度の限界が来た。水の発生源を少し超えた地点で一度着陸しなければならない。

 相手は再び波でこちらの動きを止めようとする。その波が脚を攫う直前に再び跳躍。二度目の滑空を行った。

 順調に追い詰めている。壁端まで行けばもう逃げることはできないだろう。

 距離というアドバンテージさえ失われてしまえば相手に強力な攻撃手段はないと見ていい。近接に自信があるのなら、わざわざ距離を離す必要はないのだから。

 

「はあっー‼︎」

 

 敵が脚を止めた。これなら届く——。

 薫は自身の拳にオリガミの力を纏わせ、渾身の一撃を放つ。

 直撃コース、もう避けることはできないだろう。

 

 しかし、その拳が金髪の頭を叩く直前————廃工場の壁をブチ破る巨大な牙が薫の眼前に現れたのである。

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