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妃が石にされたので、世界を救う旅に出た  作者: 久遠悠羽


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第3話 みんな、生きてた!

 次の日の朝、ヴェイルはルロイの

「ヴェイル兄上、起きて!」

と言う声で目が覚めた。


 見るとベッドの中で彼とユティナディアが自分を覗き込んでいた。


「……ああ、二人ともおはよう……」


 昨日の慣れない作業と子守の疲れからか、寝ぼけ眼を擦りながら返事をする。


「おはよう兄上。ねえ、これ見て。

 リューク兄様の宝石」


 ルロイが両手でルビーを持って差し出した。


 よく見るとその表面から薄っすらと魔法陣が浮かび上がっている。


「魔法陣……? そうか救急救援要請の呪文!」


 ヴェイルはガバリと起きると、魔法陣に書かれている古代エルフ語を詠唱した。


 すると、ルビーの中からスウウと半透明の姿でリュークが現れた。


「リューク!」

「リューク兄様!」


 ヴェイルとルロイが同時に叫ぶ。


〔やっと読み上げてくれたか……〕

 目を開けた彼が呟く。


「兄様! 兄様ぁ!」

 ルロイが抱き付こうとするが、彼の身体に触れることはできない。


「立体映像?」

 ヴェイルが言う。


〔ああ、その様だな〕

 リュークが残念そうに返してきた。


 驚く兄達のやり取りに、見ていたユティナディアが泣きそうな顔になった。


「でも……取り敢えず中の人間は生きているって事だよな?」

 彼の姿に、やや安堵したヴェイルが問う。


〔ああ、そうだな。

 石にはされたけれど、生命活動をせずとも生きてはいられるみたいだ。


 お前にどうやってそれを知らせるか分からなかったけれど、災害時に使う救急救援要請呪文を思い付いたんだ。

 最も、こうやって外側から詠唱してくれる人がいないと出て来れないんだけれど……〕


 その時、ユティナディアが叫んだ。


「兄様見て! 母様と姉様の宝石からも魔法陣が出てる!」


 見ると、母パトラクトラのブラックダイヤとアリアのトパーズからも救援要請魔法陣が出ていた。


 早速ヴェイルが詠唱する。

 リュークと同じ様に、パトラクトラとアリアの姿が浮かび上がった。


「母様!」

「アリア!」


〔ユティナディア、ヴェイル……これは一体どうしたことだ〕

 パトラクトラが問う。

 

 その横で、

〔ヴェイル……おはよう……昨日は私、まだ眠っていて……〕

と、皆の非常時に寝ていたアリアが赤くなっていた。


「いいんだ、アリア……君が無事なら」

 ヴェイルが目元に微かに涙を溜めて応えた。



〔石化の影響で意識は途切れ途切れになるのだが、外の様子は感じ取れる。

 昨日の国の状態はほぼ分かった。

 どうやらお前達以外の人間は全て石にされている様だな〕

 リュークが言う。


〔元から竜であるユティナディアとルロイはともかく、私でさえ石になっているのに何故ヴェイルは石化していないのだ?〕

 パトラクトラが不満げに言った。


「それは分からない……何かの防御が掛かったんじゃないだろうか」


〔ふむ。しかし大人が誰もいなければ我らは永遠に石のままかも知れないからな。

 お前が石化していないのは不幸中の幸いだ〕


「原因はなんだと思う? 母上」


〔……分からんが……竜が絡んでいるのは間違いないだろう。

 石化能力と言えば竜だからな〕


「でも、現在の竜の中で石化が出来る種類は石白竜ピエドラブランカしかいない筈。

 一体どんな竜がこんな規模で……」


〔アリア。お前は何か知らないか?〕

 パトラクトラが『ドラゴンキラーの勇者』でもあるアリアに聞く。


〔分かりませんが……竜人族のドナウザーン公国とは関係ないのでしょうか。

 かの国が数千年前から封印を続けている古代魔竜がいるとの話を、以前聞いた事があるのですが……〕


「あっ」

〔そう言えばそんな話を先代から聞いていた様な気が……〕

〔うむ。私も失念していた……多分そいつが石化の竜だ。よもや封印が解けたのか。

 何をやっているのだドナウザーンの者達は〕


 アリアの言葉に、ヴェイルとリューク、パトラクトラの合点がいった。


〔しかし、原因が分かったからと言ってどうすれば……あ……〕

 話を進めようとしていたリュークの姿が、急に薄くなって行った。


「?! まさか、映像で出て来られる時間に制限があるのか?」

 ヴェイルがそう言いながら、急いで自分の魔法陣を出し、何かを書き足し始めた。


〔そうみたいだな……どれぐらい出て来れるんだろう〕

 リュークが口惜しそうに言う。

 パトラクトラとアリアの姿も薄れて来た。


〔いずれもう少し長時間出られる様になる。と思う……〕

 なす術のないパトラクトラも希望を伝えるしかない。


「三人とも、この術式を転写して」

 ヴェイルが書き上がったばかりの魔法陣を、それぞれの魔法陣に重ねながら言った。


〔これは?〕

「宝石の中からでも自主詠唱で外部に顕現出来る術式だ。

 英霊召喚の応用術。

 今、俺が外から接触して魔道を開いたから、これを唱えると自分で出て来れる様になると思う」


〔オレ達は幽霊扱いかよ。だが助かる。また試してみよう〕

 それだけ言うと、リュークは時間切れなのか、消え去ってしまった。


〔ヴェイル、ユティナディアとルロイを頼む。対策は追追おいおい考えよう〕

 パトラクトラもその言葉を残して消えてしまう。


〔ヴェイル……〕

 アリアが手を伸ばした。

 ヴェイルも応えるように自分の手を重ねる。

 しかし触れ合う事は出来ない。


〔……またね〕

 そう言いながら微笑む瞳に、キラリと涙が光ったかと思うと、彼女の姿もスウと消えてしまった。


「兄様……」

「母様ぁ……」


 ルロイとユティナディアが泣きながら呼ぶ。


「大丈夫。みんな一緒だよ。

 ここに……ちゃんといるんだよ」


 ヴェイルは二人に優しく声を掛けると、静かになってしまった宝石達に目を落とした。


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― 新着の感想 ―
わあああ!!!みんな生きてた!!(;;) 宝石から姿が現れて会話できるの、切ないけど希望があってすごく好きです…! アリアさんとヴェイルさまがお互い手を伸ばすのに触れられないところ、胸がぎゅっとなりま…
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