第17話 次の目的地
「うーん……三人ともあんなに嬉しそうにして。
特にヴェイルは後ろからワタシにまた魔法を掛けられるかも、とは思っていないのかしら……信用されてるわね」
ストライアの側に行ってしまった三人を眺め、フィオリアは尻餅をついた格好のまま足を抱えた。
すると、
〔……フィオリアとやら〕
と何処かから声がした。
彼女がキョロキョロして探す。
近くの切り株の上に貴石の嵌ったネックレスが揃えて置いてある。
そこから人が浮かび上がっているのが見えた。
「人? 宝石の中から人が」
〔そうだ。私はヴェイルの母、パトラクトラという〕
宝石の中からパトラクトラが浮かび上がり、話し掛けていた。
「驚いたわ。宝石になってもそんな形で浮かび上がることが出来るなんて……」
フィオリアが驚愕の表情で近寄る。
〔ヴェイルが、私が出した救援要請魔法陣を外から読み解いてくれたからこうして外に出ることが出来るのだ。
お前達は石にならなかった人間を集めて、もう一度石にしようとしているのか?〕
「……そうね。大精霊がそうしろって。
そうしたら、全てのエルフの子孫は誰の事も気に掛けずに、いつか魔法が解除される日まで眠ることが出来るだろうって……〕
〔うむ。それはある意味優しさかも知れないが……しかしそれでは我らの文明は滅び去ってしまう。
それに懇意にしていた竜達や様々な動物、他の種族とも突然断絶されてしまうではないか〕
「でも、それじゃ衛竜をどうしたらいいのか分からないの」
〔私やヴェイルは、その竜に全ての人間を元に戻す魔法を掛けさせるのはどうかと考えている〕
「全ての人間を元に戻す? そんな真逆の魔法は考えられていないわ」
〔ヴェイルと私なら恐らく解析出来て、新しく作れると思う。
もう石化の仕組みの魔術方程式は手に入れている。
衛竜本体がいるのなら、より正確な魔法陣を見て作り出せるのではないだろうか〕
「……それは、ワタシと一緒に精霊族の大精霊の元まで来てくれるって事?」
〔そうだ〕
「彼、捕まって石にされちゃうかも知れないのよ? 大精霊は絶対なの。
恐ろしい方なのよ……」
パトラクトラは少し考えた。
〔……そうなれば、それは我らの力不足だったということだ。
その時は4000年の眠りを受け入れるしかあるまい〕
「勝手なこと言わないでください、母上。
俺は嫌ですよ4000年も眠るのなんて」
戻って来たヴェイルが不服そうに言った。
そしてフィオリアに向かって話す。
「俺は石にされる気はさらさら無いけど、衛竜がいるのなら精霊族の国に行く。
必ず我が妃を、そして世界の人々を元に戻すんだ」
「……妃? ヴェイルってもしかして……国王?」
フィオリアが怪訝そうに聞く。
「言ってなかったっけ?」
「最初に見た時に暁雉2羽持ってて、その後灰まみれになって子供達の食事を用意する人が国王陛下とは……
ちょっと考えにくかったわね」
彼女が首を傾げて答えた。
〔……あの〕
次に控えめな声が聞こえて来た。
フィオリアが再びネックレスのある切り株の方を見ると、トパーズの中から金髪の若く可愛らしい女性が浮かび上がっていた。
「アリア!」
ヴェイルがパッと表情を明るくした。
「アリア?」
「我が妃、王妃アリアだ」
〔アリアです。初めまして、フィオリアさん〕
「初めまして……あなた達、実はご家族で旅をしていたのね……」
フィオリアが気の毒そうに言う。
〔あの、衛竜は精霊族の竜なのに、何故竜人国ドナウザーンに封印されていたのですか?〕
「確かに、俺もそれは気になっていた」
アリアの疑問にヴェイルも同意する。
「その辺りの詳しい事も大精霊に聞いて貰った方がいいと思うの。
ごめんなさい。ワタシは詳しくは知らないのよ」
〔そうですか……〕
その日、彼らは話し合いの末、妖精フィオリアの案内で精霊族の国のファルラーンの森を目指す事になった。
「言っておくけれど、ワタシ達は衛竜の消滅を第一に考えているの。
ワタシは、連れて行く目的を果たしたからもうあなた方に何もしないけれど、国の方ではどう考えているか分からないわ。
もしかしたら危険かも知れない。用心してね」
旅立つ準備を整えた三人に忠告をする。
彼らは意を決したように頷くと、ストライアの鞍に飛び乗った。




