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「一」で危機を悟った次郎兵衛に、猶予はほとんど与えられません。この「二」で、秀家からの正式な下命が下り、史実で描かれていた構図が、そのまま現実として動き出します。

岡越前守との対峙、そして夜更けに訪れる達安からの警告——次郎兵衛は、知っていたはずの展開を、なぞるように追体験させられます。ここで試されるのは、彼の知略ではなく、迫りくる刃をどう受け止めるかという胆力です。

第二章で築いた達安との信頼が、ここで初めて具体的な形——命を守る一報——として実を結びます。積み重ねてきたものが、静かに、しかし確かに、次郎兵衛を支え始める場面です。

数日後、秀家からの正式な下命が下った。


「次郎兵衛、蔵入地の拡大について、そなたに検地の差配を任せる」


 次郎兵衛は、深く平伏しながらも、内心で身の引き締まる思いだった。史実と寸分違わぬ役目が、今、己の手に委ねられた。


 案の定、命が下ったその日のうちに、岡越前守が次郎兵衛の執務部屋を訪れた。


「次郎兵衛殿。此度の検地、まさか我らの知行地に手をつけるおつもりではあるまいな。そなた、金銀を好むと専らの評判ぞ」


 越前守の声には、隠しきれぬ険があった。


「岡殿。まだ何も決まってはおりませぬ。まずは、現状の把握から――」


「白々しいことを申されるな。長船殿、浮田殿らが、そなたに耳打ちしておることぐらい、承知しておる。蔵入地を増やすとなれば、削られるのは我らの土地であろう」


 次郎兵衛は、返す言葉に詰まった。史実の家正が、まさにこの構図の中で命を狙われたことを、身をもって思い知らされる瞬間だった。


 その夜遅く、達安が次郎兵衛の屋敷を密かに訪ねてきた。


「次郎兵衛殿。今宵は、決して一人で出歩かれるな」


「戸川殿……何かご存じか」


 達安は、声を潜めた。


「越前守殿の郎党が数名、殺気立っておるという噂がある。此度の検地の一件で、頭に血が上っておる者がおるのだ。まだ確証はないが――用心されよ」


 史実で刺客に襲われた夜が、今まさに、この世界でも訪れようとしていた。だが、決定的に違うことが一つある。次郎兵衛には今、達安という味方がいた。


この場面の核心は、次郎兵衛が何もできないまま夜を迎える、という点です。岡越前守の詰問に、彼は満足な返答すらできませんでした。知略で切り返すことも、その場で誤解を解くこともできない——次郎兵衛にとって、珍しく「無力さ」が前面に出る場面として書きました。

それでも最後に一筋の光が差すのは、達安の忠告です。「戸川殿のご忠告がなければ」という第三節の一文につながるように、ここでの達安の行動は、第二章で積み重ねた小さな信頼が、初めて命を守る形で返ってきた瞬間です。策略や弁舌ではなく、人間関係の積み重ねそのものが、次郎兵衛を救う伏線になっています。

史実で刺客に襲われた夜が、今まさに訪れようとしている——この一文で終えることで、次の「三」への緊張感をそのまま持ち越す構成にしました。

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