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「一」で和議という「儀式」を見届けた次郎兵衛は、この「二」で、その中身——具体的な条文と向き合います。豊臣秀頼を天下の主として奉じつつ、政務の実権は家康を筆頭とする合議で運営する。前田、宇喜多、毛利、島津——いずれの家も本領を安堵される。

これは、史実の関ヶ原後に訪れた「徳川一強」の天下とは、明らかに違う形です。この章で示されるのは、次郎兵衛たちの戦いが、単に「勝敗」を変えただけでなく、「天下の設計図」そのものを描き変えたという事実です。

 和議の条文には、いくつかの重要な取り決めが記されていた。


 豊臣秀頼を、なお天下の主として奉じること。ただし、政務の実権については、徳川家康を筆頭とする合議によって運営すること。関ヶ原に参陣した諸大名は、いずれも本領を安堵されること。前田家、宇喜多家、毛利家、島津家――それぞれの立場は、大きく損なわれることなく、この先も存続することとなった。


 史実の「徳川一強」の天下とは、明らかに違う形だった。徳川家の力は、確かに抜きん出てはいる。だが、それに拮抗しうる諸大名の連合が、なお健在なまま、天下の均衡を支えている。


「これは……天下が定まった、と言えるのだろうか」


 署名の儀が終わった後、秀家が、次郎兵衛にそっと囁いた。


「殿。おそらく、これで全てが終わったわけではございませぬ。ですが」


 次郎兵衛は、静かに、しかし確かな声で続けた。


「少なくとも、多くの命が、これ以上失われずに済みました。それだけでも、大きな一歩かと存じます」


 秀家は、深く頷いた。


この場面で書きたかったのは、「天下が定まった」という言葉を、あえて疑問形で提示することでした。「これは……天下が定まった、と言えるのだろうか」という秀家の呟きには、この和議が完全な解決ではなく、あくまで「均衡」の一形態に過ぎないという、この物語全体を貫く価値観が表れています。

「少なくとも、多くの命が、これ以上失われずに済みました」という次郎兵衛の答えは、派手な理想論ではなく、彼が一貫して追い求めてきたものの、最も率直な言語化です。天下統一や覇権という大きな物語ではなく、「失われるはずだった命」という、一人ひとりの重みに焦点を当て続けてきたこの物語の姿勢を、この場面で改めて示したいと思いました。

次の「三」では、この日の夜、次郎兵衛が一人、これまでの道のりを振り返り、次の戦いへの覚悟を新たにする、第二部の締めくくりの場面が描かれます。

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