肉
「あたしなんかが外食に!?」
ニンナが驚いていた。もしかして料理屋でご飯を食べるのは初めてなのだろうか。
ちょっと緊張してる感じだった。
「・・・いいよ、出す。」
まああんまり自覚ないけど、これでもご主人様だしな。もしかしたらそれが普通なのかもしれないけど。
「い、いやでもほら。妹達に悪いですし。あはは・・・」
「・・・おみやげも、いいよ。」
そういえばニンナは、妹達をどうするつもりなのだろう。
何なら姉妹ごと預かってもいいのだが、この世界の奴隷のこととか全然わからないしな。
「・・・!・・・!?!?!!!!??!?!?」
ニンナがものすごい顔をする。顔芸じみていた。流石に驚き過ぎだろうに。
そういえば自分にとっても初めて働いて稼いだお金なんだな。それで食べる飯ってなんか真人間みたいだ。
なんだろう、引きこもりニートもやればできるものである。まさかこういう形で社会に出るとは思わなかったが。
「ねえねえ、食べたいものあるー?」
ノエラがニンナの様子を見て少し面白がりながら言う。言われても自分はこの世界の料理わからない。
うーんここはニンナに任せるか。
「・・・ニンナが、好きなので。」
「・・・。」
「・・・ニンナ?」
放心して何も言わなくなった犬耳少女がそこにいた。
――――
「到着ーっ!」
ノエラが言う。結局自分もニンナも特に選べなかったので、ノエラがよく来るらしいこの店になった。
今朝とはまた別の串焼きの店だ。ちなみにニンナも名前は知っていたらしい。ニンナの口ぶりからすると、串焼きというか肉全般の店なのだろうか。
「ほ、本当に、あたしが来てもよかったのでしょうか・・・。」
ニンナはガクガク怯えていた。
「ナオ様にも本当に、申し訳ないっていうか、あたしなんかこんな店で食事させてもらう価値・・・」
別に俺は気にしないし。むしろ奢るくらいでそこまで恐縮されるのが困るというか。
ていうかニンナって結構明るそうな雰囲気なのに、意外と内心卑屈なのだろうか。
「・・・ニンナと、食べたい。」
「ナオ様・・・なんてお優しい・・・でもあたしはナオ様に何も・・・」
ニンナが目をうるませて、涙ぐんだ声で言う。
飯奢るだけでこんな反応する子だと、なんかちょっと肉奢ったりするだけでどこでも付いてきそうである。
うーんちょっと危ういぞ。
「じゃあ・・・後でその、搾って。」
「はい、今晩のお乳搾りはお任せくださいませ!」
「・・・」
ハキハキとした声に、無邪気な笑顔でそう言われるのが、ちょっと辛かった。
・・・実は腹黒でいじめに来てるとかではないよね?結構さっき黒かったし。
そんな会話をしているとノエラが既に奥で席を取っていた。自分たちもそっちに行かせてもらおう。
ニンナと一緒にカウンターへ行く。店の中は、
3人揃って座ると、恰幅のいい中年の女性がドスンドスンと、オーダーを取りに来た。うーん豪快だ。
「ご注文はッ!!」
声でかっ!
「私いつものでー。」
「あ、あたし、ハムバーギ!」
かなり緊張しながらニンナが叫ぶ、おばちゃんのさっきの大声にも負けない勢いだ。
リラックスしているノエラとは対照的だった。
「はいはい。いつものと・・・ハムバーギね!」
ニンナの叫びを受けてかおばちゃんも叫び返す。笑顔がやたらと眩しかった。
「そこのアンタは?」
「・・・おすすめで。」
悪い人じゃないんだろうけど、正直こういうテンションは苦手だった。
ゆっくり食べたい限りである。
――――
ノエラ曰く、今回の報酬からノエラの取り分を引いて、大体昨日の宿のあの部屋を半年は取れるくらいの収入にはなるらしい。
もっと安い所でいいなら、食費も含めて半年以上はこの街に滞在できるそうだ。
そんなわけで勢いで店まで来てしまったが、少なくともそれを今すぐ心配しなくてもいいだけのお金はあるらしい。
正直ちょっと貰いすぎな気はする。
とはいえ足は自前で出して、一応それなりに危険もあるし、そんなものなのだろうか。
まあ一番大きいのは無知な貴族相手にぼったくれたからなのかもしれないが。いい仕事を回してくれたムッカさんには感謝しよう。
副組合長も・・・苦手だけどまあ。後で時間が空いたらお礼を言いに行こう。
「はいよッ!」
大きな声がフロア全体に響く。料理が来た。いや料理というよりとにかく山盛りの肉が来た。
何の肉かわからないが、全てが肉、肉、肉だ。付け合せに野菜もあるが、とにかく肉だった。
食べきれるだろうかと一瞬心配したが、ノエラとニンナの食べるペースを見てその杞憂は完全に失せた。
「美味しいですナオ様!このハムバーギ美味しい!食べてるあたし凄い!」
「・・・その、ゆっくり。」
「すごい!ハムバーギ凄い!ナオ様凄い!」
ハンバーグらしき肉料理を溶かすような勢いで食べながら、ニンナが言う。
そんな焦って食べてもいいこともないだろうに・・・。
「ねえねえナオ、昨日の夜ちょっとだけ言ったと思うんだけど。」
ニンナの様子を眺めながらノエラが言う。落ち着いた調子だが、ナチュラルにすごい速度でステーキらしき肉を食べていた。
なんでこの子らこんなに食べれるんだろう。
「・・・なに。」
「今朝の見て思ったの、これは絶対にナオにしか頼めないことだって・・・聞いてもらえるかな?」
ノエラがいつになく真剣な様子だった。まあまだ会って2日程度だけど。
ちなみに1枚目のステーキらしき肉はいつの間にか消えていた。
肉食べたいですね。




