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まだ~、あと1時間~

お気に入り登録が90人を越えていました。

当初の目標だった三桁お気に入り登録まであともう少しで、感極まっています。


これも読んでくださっている皆さんのお陰です、ありがとうございます。

これからも頑張っていきたいと思います。

 チャーチャチャチャーチャー


 軽快な電子音で意識が覚醒する。

 閉じていたまぶたを開け、身を起こす。

 体から毛布が落ちるが、構わずに薄暗い部屋で音源を探す。

 起き抜けでぼやけた視界の中でそれを見つけた。

 それは近くのテーブルに置いたままの私のケータイ。


「……はい、師里です」


『あ、レイ。その声だと寝てたかゴメンゴメン』


 受話器から聞こえてきたのは大嫌いなアイツの声。


「……何? なんか用?」


『あぁ、もうソロソロこっちに来てほしいんだ』


 不機嫌な声で答えたのに、まるで気にせずに話を続けてくる。

 コイツのこういう所、本当に嫌い。

 私のような子供のことなんか気にしていないって言っているみたい。

 大人ぶってさ。

 ……でも、逆にこっちの機嫌を取るようなこと言われてもムカつくけど。

 あれ、どっちにしてもムカつくのか。

 寝ぼけてるのかな、まぁいいか。

 1人で納得して問い返す。


「こっちって『特究とっきゅう』?」


 寝る前に『特究』行くって言ってたしな。


『そうそう。あと、そこに写楽さんもいるだろ? その人にも伝えて一緒に来てくれ』


 写楽さん?

 寝ぼけ眼をこすりながら寝ていた部屋――『B&Bトラブルバスターズ』の事務所――を見まわす。


 あ、いた。


 少し離れた来客用のソファーにうつ伏せになって1人の女性が寝ていた。

 体には毛布が掛けられ、顔をクッションにうずめている。

 ……あんな寝方で息苦しくないのかな。


「……わかった」


 答えながら、部屋の壁にかかった時計を見る。

 4時ちょっとすぎか。

 結構寝てたな。


『今からだと、準備しても6時か7時くらいにはこっち来れるな』


「たぶん」


『そうだ、シャワー浴びたかったら3階のスズの部屋のシャワー使っていいからな。

 鍵は俺の机の二段目の引き出しに入ってる』


「いや、勝手に入れないし。スズさんの部屋で浴びるならウチ帰るし」


 てか着替えたいし、絶対帰る。

 写楽さんもたぶん帰るだろう。

 2日同じ下着や服とかありえない!


 それにスズさんだって勝手に他の人に入られたり、あまつさえシャワーなんて浴びられたくないだろう。

 おんなじ女だしわかる。

 自分のものを勝手に使われるのなんて絶対にイヤ。

 いくらこのビルの持ち主だからって、勝手に入っていいなんて言う権利なんてないっての。

 てかなんで鍵持ってんだ。

 コイツはいつでもスズさんの部屋に入れるってことじゃない。

 ……今度スズさんとゆっくり話し合った方がいいのかも。

 どんなアニオタだって男は男。

 いつ襲われるものかわかったもんじゃない。


 でもホント、こういう女心に気が回んないよね男ってやつは。

 特にこの男にそんなデリカシーがあるとは思えないし。


「あのさ、勝手に入っていいとかスズさんの気持ち考えないわけ?」


『いや、スズが勝手に使っていいって言うから』


 訂正。

 スズさんは私とは違うタイプの女性なのかもしれない。


「とにかく、ウチ帰ってからそっち行くから。

 ……あんまり遅くならなきゃ文句ないでしょ、じゃ」


『あー! 待て待て、最後に一つ頼みたいことがあるんだ』


 耳から離したケータイから、慌てたような響く。


「……何?」


 再びケータイを耳に当てて問いかける。


『実はさ――』



 ☆★☆



「写楽さん起きてください」


「まだ~、あと1時間~」


 ユッサユッサ と体を揺らす。

 しかし、まるで子供のようなことを言う写楽さん。


 本当に私より一回りも年上なのかなこの人?


 というか私の回りには子供っぽい大人が多すぎると思う。

 アイツやスズさんはいい年してアニメなんかに夢中だし。

 日曜の朝は子供向けの時間だろうに、早起きしてテレビに向かってるのとかちょっと普通じゃない。

 マトモな人は四十万(しじま)くんくらいか?

 いや、あの人も根本的にはアイツとおんなじっぽいしな~。


 そんなことを考えながらも写楽さんの体を揺すり続ける。


 その時――


 ダンダンダンダン バンッ!


 と階段をかけ上がる音が響き、次の瞬間には事務所の扉が勢い良く開き、大きな音をたてる。


「えっ! 何々!? 敵!?」


 その音で写楽さんが ビクッ と跳ね起き、そのままの勢いで隣にいた私を押し倒してきた。


「キャッ! ななななんですか!?」


「伏せててレイちゃん!」


 突然のことに暴れる私を、写楽さんが床に力づくで押さえつける。

 私と変わらない、むしろ私よりも小柄に見えるのに信じられないほどの力だ。

 これが魔力操作による肉体強化なの!?

 何て無駄遣い!


「所長! なんで私を置いていったんですか!?

 レイばっかりズルいじゃない……です……か?」


 そんな風に身動きがとれないでいると、頭上から聞きなれた声が降ってきた。

 その声は学校でも、事務所(バイト)でも耳にする親友の声。

 しかし最初は勢いよかったその声だったが、後半になるにつれて衰え 、尻すぼみになっていく。


 私が声の方に顔を向けると、親友である東堂ヒトミは目を丸くして私を見下ろしていた。


 そこで自分の様子に気づく。

 カーテンを締め切り薄暗い事務所の中、床で重なりあった2人の女性。

 さっきまで寝ていて、今さっきも揉み合ったために2人とも着衣や息が乱れているし、頬も上気している。

 写楽さんの下半身に引っ掛かった毛布がどことなくいやらしい。

 いや、毛布の下にはちゃんと服を着ているんだけどさ。


 でも、端から見たらどう見えるか。

 ヒトミの驚いた顔を見れば明白だろう。

 ほら、今も大きく息を吸い込んで――




「キマシタワー!!!」




 ヒトミが訳のわからない叫びをあげた。


「ちがーう! 誤解だから!」


 訳はわからなかったが、とりあえず勘違いしていることはわかったので、大きく否定をしておいた。

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