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やっぱり罠だったじゃねぇかよ

すいません、ケータイが壊れて出先で執筆できなかったこと+少し煮詰まって書きにくかったことが原因で遅れてしまいました。

次回からは戦闘に入るので少しは早く投稿できると思います。

「準備できたかい? 『B』」


 だだっ広い『特究』のエントランスホールに立っていると、後ろから声がかけられる。

 その声に振り返ると、そこにいたのはヤスヒロだった。

 いや、声でわかってはいたけどさ。


「まぁな、粗方は終わったよ」


 吹き抜けの天井を見上げながら答える。

 3階までの吹き抜けの天井はとても高い。


「それよか、そっちはどうだ?」


「こっちも終わったよ。重要なものや、入院している患者は全て地下のシェルターに避難させた。

 勿論、彼女もそこにいる。だから心配せずに思いっきりやっていい」


「あぁ、サンキューな」


「お礼なんかいいさ。……ただ、今日掛かった電気代金くらいは払ってくれると助かるかな」


 ヤスヒロは周囲を見回しながらお道化たように言ってくる。

 そこには建物に元からついていた電灯とは別に、高出力のライトが設置されていた。

 もうそろそろ日付も変わる頃だというのに、そのライトが建物の内部を昼間のように明るく照らし出している。


「……ちゃんと終わったら払ってやるよ」


「さすが、億万長者は太っ腹だね」


 いくら支払うことになるかと頭の中で考えゲンナリしながらも答えると、笑いながらヤスヒロは言葉を返してくる。

 そこに――


「おい、師里もろさと。まだ写楽さんとレイちゃんは着かないのか?

 そろそろ、いつ現れてもおかしくない時間だぞ」


 建物の奥から四十万しじまが現れて問いかけてきた。


「あぁ~、そうだな。少し遅いな……」


「連絡も取れないし、何かあったんじゃないか?」


「いや、そんなに心配することもないだろ。レイに何かあれば俺には分かる。

 そのうち来るだろうさ」


 その問いかけに俺は、心にもないことを答える。

 多分、俺の読み通りならあの2人が間に合うことはない。


「そうかもしれないが、もしも間に合わなかった場合お前たち3人だけで大丈夫なのか?」


「まぁ、何とかなるようには準備したつもりだよ」


「そうか……けれども最悪な場合も考えられる。気を引き締めておいてくれ」


「わかったわかった。お前にも『魔弾』渡したんだから、いざってときは頼むぜ」


「それこそ分かっている。

 とにかく、もう警戒するべき時間だ気を抜くんじゃないぞ」


 そう言って四十万は来た道を戻り、建物の奥へと戻っていった。


「ってことだヤスヒロ。お前も地下に避難してろ」


 近くにいたヤスヒロへと顔を向け、声をかける。


「そうだね、そうしておこうか。邪魔になっちゃ悪いしね

 それじゃ『B』頑張ってくれたまえ」


 ヤスヒロは両手を白衣のポケットに突っ込み、猫背のまま俺に背を向け去っていく。



 真昼間のように明るい深夜のエントランスホールに1人取り残される俺。

 シーン と静まり返る。

 その静かな空間でじっと俺は椅子に座る。



「所長、仕掛けは完璧じゃぞ。これでいつ来ても大丈夫じゃ」


「周囲にはいくらオレのコピーと言えども手こずるほどの結界が張り巡らされている。……ここ以外の場所に、だけどな」


「しかし、ホントよく考えつくものじゃ」


 しかし、その静かな空間も長くは続かない。

 外から大きな自動ドアをくぐって2つの人影が現れたからだ。


 1人は黄緑色のジャージを着た少女。

 俺の相棒ことスズ。


 もう1人は杜宮高校の女子制服を着た中性的で男女どっちかわからない少年。

 俺の昔の仲間で、今回の原因を作った大馬鹿ことアヤであった。


「あぁ、ご苦労さん。少し休んでくれ」


 この2人には周囲に結界を張ってもらったのだ。

 勿論、いくら強力な結界であってもアヤの技能を持つ相手を止めることはかなわない。

 だからただ結界を張るのではなく、同時に罠仕掛けた。


 結界に〝ほころび〟を作っておいたのだ。


 あからさまにならないように、ほんの僅かな綻び。

 だがしかし、奴はこれを見逃さずに突いてくるだろう。

 アヤと同じであるのならば確実に、相手の弱い場所をついてくるはず。

 そこを待ち伏せて、叩く。

 そういう作戦だ。


「ところで、レイと写楽は予定通り着いておらんようじゃな」


「てゆーか、そうじゃないと困るだろ。

 オレの影が取り返せねーじゃん」


 スズの疑問にアヤが答える。

 そう、この場に2人が――特に写楽さんがいないことは俺達が仕組んだことだ。

 アヤの影を取り返すにはどうしても写楽さんの『眼』が邪魔だったのだ。

 でも、理由もなく引き離したわけでもないけど。

 写楽さんにはレイと〝アレ〟を守ってここまで来てもらわねば困る。


「よし、それじゃ2人とも位置についてくれ」


 もう周囲は真っ暗だ。

 いつ来たっておかしくない。

 休んでいた2人に声をかける。


「……本当にいいのか? 所長1人だけで」


 しかし、不安げにスズが問い返してきた。


「問題ない。というかここを抜かれたら終わりだ。一応手は用意してあるとはいっても、なるべく保険はかけておきたい」


 1つの場所で迎え撃つのではなく『蒼白月ペイルムーン』が保管されている場所までの道中に、戦力を分散させて配置しておくという手だ。

 何重にも保険をかけて、必ず敵を食い止めるという意図がある。


「わかった、アキラもがんばれよ」


「無理だけはするでないぞ、いざという時はお主が頼りなんじゃからな」


 スズとアヤはそう言って、建物の奥へと消えていった。

 再び静寂に包まれるエントランスホール。




 そうして1人になってから数分。




「……来たか」


 研ぎ澄ましていた感覚が侵入者を捉える。

 入り口に目を向けると同時に、その自動ドアが開き3つの人影が現れた。


「あ~、やっぱり罠だったじゃねぇかよ」


[シカタナイ ココイガイ オマエタチ ハイレナイ]


「仕方ないでしょうムゥ。それに、どこから入ったとて戦うことになるのです。

 遅いか早いかの違いだけ」


 そんな風に言葉を交わす3人。


 1人は昨日戦った『影』。


 もう1人は、深い青色のタキシードを着こんだ男。

 髪を短く刈り込んでいるのはわかるが、それ以外の顔の造りは大きなパピヨンマスクで覆われてわからない。


 そして最後の1人はスズやアヤから聞いていた通りの、青いドレスを着て、パピヨンマスクで顔を隠した女性。


「なるほど、今夜は総力戦ってわけか」


 座ってた待合用のイスから立ち上がり声をかける。


「いいぜ、かかって来いよ」


 俺は静かに構えをとった。

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