第六話 小石川編:晴人の問題点
晴斗くんとの出会いは小学生まで遡る。
家が近かった私たちは毎日のように遊んだ……
でも、彼はあることがきっかけで笑わなくなり、
そのまま引っ越してしまった。
私たちが再会したのは高校生になってから。
晴斗くんってば、ひどいんだよ。
私のことを忘れていたし、ちょっとむくれたら、
「小石川が綺麗になり過ぎて気づかなかった」だってさ。
もう、口まで上手くなっちゃって。
私は、また晴斗くんと一緒に過ごすようになった。
昔に戻れたみたいで嬉しかったけど、彼には問題があった。
それは、女友達が多いことだ。
私は他の子に負けないように、毎日、彼のそばにいようと努力した。
それでも、彼は気づけば別の女性と遊んでいた。
彼は私のことをどう思っているのだろう。
彼から告白されても、答えは出なかった。
本当に私のことが好きなのだろうか……
その疑念を拭うことができない。
何より、彼のことを信用できない自分が、
嫌だった。
私が彼を振ってから一週間後、
綾園先輩に告白しているところに出くわしてしまった。
そして、先輩に振られたら、また私に告白してきた。
……私はどんどん晴斗くんを信用できなくなっていった。
彼を嫌いになれたらどんなによかったか。
それでも、彼を誰かに取られるのは嫌だった。
私はわがままだ。彼と一緒にいればいるほど、
苦しくなる。
でも、一緒にいないのはもっと苦しかった。
もう、どうすればいいの……誰か……助けて……
最近、気づけば泣いていることが増えた。
誰もいない夜の公園で、ブランコに座っていた。
「ぐすっ……晴斗くんと一緒にいる時は、笑ってられるのに……」
「お嬢さん、ご一緒しても?」
まったく……この人は……
私は泣き腫らした目で彼を睨んだ。
「えっ、ごめん! 俺ってば空気読めてなかった。
小石川さん、また学校で!」
逃げようとする彼の、制服の裾を掴んだ。
「へぐっ!」
彼は変な声を出してよろめいた。
「小石川さん、危ないって」
「晴斗くんなんて、転んで足を骨折すればいいんだ」
そうすれば、どこにも逃げられずに済むから。
私が死ぬまでそばでお世話してあげるから。
「小石川さん、さすがの俺でも傷つくぜ」
私をたくさん傷つけたんだ。
晴斗くんだって少しくらい傷ついてもバチはあたらないでしょ。
「晴斗くん……私を不安にさせないで」
「不安? もしかして、俺の成績のことか?」
彼に私の気持ちなんて伝わりっこない。
だって、これまでもそうだったから。
だから、私が彼を拒絶し続けて、それでも私を追いかけてくれるなら、彼を信じられるかもしれない。
それが何年後になるかは分からないけど。
その時が来たら――私は彼の告白に二つ返事で頷くかもしれない。




