第27話 深海の巣
岩壁の向こうには、巨大な空洞が広がっていた。
まるで海底に作られた巣のようだった。
そこには大量の生物がいる。
小さな魚。
岩の隙間に潜む生物。
海底を這う奇妙な生物。
そして、それらを狙う捕食者。
「……ここ、すごいな」
食料が多い。
だが、
それ以上に危険だ。
俺たちが入った瞬間、いくつもの目がこちらを向いた。
アンコウが光を点ける。
小さな生物たちが一斉に動いた。
光に引かれている。
「なるほど」
俺はアンコウを見る。
「お前の光、ここじゃかなり役に立つな」
「役に立つ?」
「獲物を集められる」
「……同時に、敵も集まるぞ」
「それもそうだな」
その瞬間
暗闇の奥で何かが動いた。
アンコウがすぐに光を消す。
真っ暗になる。
「何だ?」
俺は周囲を見る。
見えない。
水が動いた。
何かが近づいている。
カジキが身体を構える。
俺も牙を見せた。
けれど
アンコウが光を点けた。
一瞬。
敵の姿が見えた。
大きな口。
鋭い歯。
そして。
光に反応してこちらへ突っ込んでくる。
「来た!」
アンコウが再び光を消す。
敵が迷う。
その間に俺たちは移動する。
少し離れた場所で、アンコウが再び光を点けた。
敵がそちらへ向かう。
「……なるほど」
俺は理解した。
アンコウは、ただ光を点けているんじゃない。
光を使って、敵の意識を動かしている。
どこを見るか。
どこへ進むか。
どこを狙うか。
それを光で変えている。
「アンコウ」
「何だ?」
「もう一度やれ」
「分かった」
光が消える
敵がこちらを探す。
点く
敵が向きを変える。
消える
俺たちが移動する。
点く
敵がまた動く。
その繰り返し。
そして最後。
敵は岩壁へ突っ込んだ。
《ズドォォォン》
大きな音が響く。
カジキが一気に飛び出す。
突進。
俺も続く。
二方向から攻撃を受けた敵は、ついに動かなくなった。
静寂。
「……やったな」
俺が言う。
アンコウは何も言わなかった。
頭の先にある光をじっと見つめていた。
その光が
一瞬だけ以前より強く輝いた。
「今の……なんで方向感覚を失ったんだ?」
俺が声をかける。
アンコウ自身も驚いたようだった。
「俺にも分からん」
けれど、
何かが始まった。
俺には、そんな気がした。
アンコウに異変が!次回も楽しみにしていてください!




