第26話 進化は喰うことだけではない
「進化って、どうすれば起きるんだ?」
俺が聞く。
オウムガイは少し考えてから答えた。
「それが分かれば苦労はしません」
「だよな」
俺は海底を泳ぐ。
俺の場合は分かりやすい。
食べる。
喰らう。
そして進化する。
《捕食進化》。
俺だけが持っている能力。
だから俺は、進化というものを「食べて強くなること」だと思っていた。
しかし。
「普通の生物は、そうではありません」
オウムガイが続ける。
「環境に適応する。身体が変わる。能力が変わる。そういう積み重ねも、生物の変化です」
「……環境に適応する」
「はい」
俺は周囲を見る。
真っ暗な海。
強い水圧。
少ない食料。
巨大な捕食者。
この環境で生き残るためには、今までと同じ身体では足りない。
なら。
「俺たちも変わる?」
「可能性はあります」
アンコウが口を挟んだ。
「なら、ここに来た意味はあるな」
俺はアンコウを見る。
「どういうことだ?」
「俺たちが弱いなら、強くなるしかないということだ」
アンコウは自分の光を点けた。
暗闇の中に、小さな光が浮かぶ。
以前なら、ただ獲物を誘うためのものだった。
しかし今は違う。
光が海の中を照らす。
岩。
砂。
小さな生物。
遠くにいる何か。
「……見える」
アンコウが呟く。
「この暗闇でも、以前より分かる」
俺はアンコウを見る。
「それって……」
「まだ何とも言えない」
アンコウは光を消した。
その直後。
オウムガイが海底を調べていることに気づく。
「何か見つかったか?」
「いえ。ただ、この辺りの地形が妙です」
「妙?」
「自然にできたものにしては、整いすぎています」
俺たちは海底を進む。
やがて巨大な岩壁が現れた。
縦に伸びた壁。
その表面には、何かが削ったような跡がある。
「昔の生物が?」
「分かりません」
オウムガイが近づく。
俺も横から覗く。
岩壁の奥。
小さな光が見えた。
いや、光というより
何かが光を反射している。
「行ってみるか?」
オウムガイが頷いた。
俺たちは岩壁の隙間へ入っていった。
その先にあったのは。
巨大な空間だった。




