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第25話 最初の獲物

 深海へ入ってから、しばらく獲物を見つけられなかった。

 魚の数が少ない。

 それだけじゃない。

 今までの海では普通に見つけられたような小さな生物さえ、ほとんど見当たらない。

 その代わり、

 たまに見つかる生物は大きかった。

「何かいる」

 俺が言った。

 暗闇の向こう。

 何かが動いた。

 巨大な魚影。

 俺は身体を低くする。

 獲物がこちらに気づいていない。

 なら一気に行く。

 尾を振った。

 身体が前へ飛び出す。

 水を切り裂く。

 獲物がこちらに気づく。

 遅い。

 俺は一瞬で距離を詰めた。

 噛みつく。

 硬い感触。

 獲物が暴れる。

 俺は離れない。

 もう一度噛む。

 そして

 獲物は動かなくなった。

「……」

 静かだった。

 俺は周囲を見る。

 アンコウも。

 カジキも。

 オウムガイもいる。

 だが誰も攻撃していなかった。

「……終わった?」

 アンコウが聞く。

「ああ」

 俺は答えた。

 倒した。

 勝った。

 それなのに

 嬉しくなかった。

 俺は気づいてしまった。

 俺が速すぎる。

 強すぎる。

 以前なら仲間たちと一緒に戦えた。

 だが今は、俺が飛び出した瞬間に戦いが終わってしまう。

 カジキが近づいてくる。

「グル……」

「悪い」

 何となく謝った。

「俺が先に倒しちまった」

 カジキは首を振る。

 怒ってはいない。

 それでも。

 俺自身が納得できなかった。

「これじゃ……」

 俺は獲物を見る。

「これじゃ、みんなで戦えない」

 アンコウが静かに口を開いた。

「ならば、どうする?」

「え?」

「お前が弱くなるのか?」

「それは……」

 考えたこともなかった。

 俺が強くなったことは悪いことじゃない。

 ならば。

 別の答えを探すしかない。

「……俺だけじゃなくて」

 俺は仲間を見る。

「みんなが強くなればいい」

 アンコウが目を細める。

「簡単に言うな」

「分かってる」

 仲間には俺と同じ《捕食進化》はない。

 俺のように、何かを食べれば進化できるわけじゃない。

 だからこそ。

「俺たちなりの方法を探そう」

 そう言った。

 カジキが身体を震わせる。

 アンコウも黙って考えている。

 オウムガイが静かに言った。

「……それなら、調べてみましょう」

「何を?」

「進化についてです」

 その言葉を聞いて、俺は改めて仲間たちを見る。

 これから先

 俺だけが進化するのではない。

 こいつらも

 こいつら自身の力で変わっていく。

 そんな未来が、初めて見えた気がした。

面白かったでしょうか?次回もぜひ読んでください!

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