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第23話 深喰魚

三章開始です!三章もぜひ見ていってください!

 身体の中から、何かが抜け落ちたような感覚があった。

 今まで自分の身体を巡っていた電気が、完全に消えている。

 鱗の間に溜まっていた微かな痺れもない。

 獲物へ噛みついたときに流れ込んでいた電気もない。

 何度身体に力を込めても、以前のような電撃は発生しなかった。

「……本当に、捨てたんだな」

 俺は自分の身体を見下ろした。

 いや、海の中だから正確には見下ろすという表現はおかしい。

 自分の身体を眺める。

 以前の電鱗魚とは明らかに違う。

 身体の形も、鱗の感触も、筋肉の付き方も違っている。

 何より、身体が軽い。

 いや、

 軽いというより、身体をどう動かせばいいのかが分かる。

 尾を振る。

 身体が滑る。

 少しだけ角度を変える。

 一気に方向が変わる。

 さらに力を込める。

 身体が深く沈み込む。

 そこから尾を振ると、一瞬で前へ飛び出した。

「……速い」

 思わず声が漏れた。

 今までとは違う。

 単純に筋力が上がっただけじゃない。

 海そのものを身体で感じ取れるようになったような感覚だった。

 水の流れや水圧。

 遠くを泳ぐ生物の動き。

 それらが以前より鮮明に感じられる。

 これが、深喰魚。

 俺が選んだ新しい姿。

 電気を捨てた代わりに、もっと深い場所へ行くための身体を手に入れた。

「どうだ?」

 横からアンコウが近づいてくる。

「……かなり違う」

「そうか」

 アンコウは短く答えた。

 その後ろではカジキが俺の周囲を泳いでいる。

 何度か距離を取り、俺と同じように泳いでみる。

 オウムガイは少し離れたところからこちらを観察していた。

 仲間たちの姿を見る。

 アンコウ。

 カジキ。

 オウムガイ。

 そして魚群。

 みんな、俺についてきてくれている。

 それが嬉しかった。

 だが、同時に、一つの問題が頭に浮かんだ。

「……俺だけ、変わったんだよな」

 誰も答えなかった。

 それが答えだった。

 俺は進化した。

 けれど、仲間たちは進化していない。

 もちろん、以前からこいつらは強かった。

 アンコウにはアンコウの戦い方がある。

 カジキには圧倒的な突進力がある。

 オウムガイには硬い殻と知恵がある。

 それでも、

 これから俺たちが向かおうとしている場所は、今までとは違う。

 もっと深い。

 もっと暗い。

 もっと危険な場所だ。

「……このまま行って、大丈夫なのか?」

 俺が聞くと、カジキがこちらを見る。

「グルル」

 問題ない。

 そう言っているように聞こえた。

「お前は相変わらずだな」

 思わず笑う。

 だが、その直後。

 俺は海の奥を見た。

 そこには、光がない。

 今まで俺たちがいた場所よりも、さらに深い場所。

 暗闇が、まるで巨大な口を開けているように広がっている。

 俺はそこを見つめた。

 怖くない。

 むしろ、行きたかった。

 もっと深く。

 もっと強い生物がいる場所へ。

 もっと多くのものを喰らえる場所へ。

 けれど俺は一人じゃない。

 そのことだけは、もう忘れたくなかった。

「行こう」

 俺が言う。

「ただし、全員でだ」

 アンコウが頷いた。

 カジキが泳ぎ出す。

 オウムガイも続く。

 俺たちは、深海へ向かって進み始めた。

次回も見てください!いざ深海へ!!

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