災厄の終息
「これがナラザスの冒険者タグです。」
「先日確認した通りです。」
「で、これがラリッタの冒険者タグです。」
「まあ本物で間違いないでしょう。」
「で、これがリザルトーカーのやつ。」
「……本物ですね……」
「最後。最強勇者(笑)プラストゲインのタグ。」
「まあ勇者のタグは世界でひとつだけしかありませんしね。」
ミルク=ラッテさんは4つの冒険者タグを回収する。
「お二人とも。お疲れ様でした。」
「ホントよ!これで報酬しょぼかったら許さないわよ!」
「あー、肩こりましたよ。マッサージしてもらっていいですか?」
俺たちは完全に弛緩していた。
「ギルドマスターはびっくりして国軍まで引っ張り出してきましたが……」
「やっぱりマジのマジで軍隊動かしたんですか?」
「杞憂に終わりましたね。しょせんは人間業ですよ。」
人間業ねえ……いや普通に戦ったら普通に死んでたような……
「で、報酬の話ですが……」
「待ってました!」
「待ってました!」
「お二人は冒険者ではないので報酬はありません。」
「おい、シンシア。今からこいつを死体にするぞ。」
「オーケー、ノクタ。アンデッドにすれば言う事聞かせ放題よ。」
「落ち着いて。賞金は冒険者じゃなくても支払われます。」
俺は剣を収める。シンシアは杖をしまう。
「でも賞金が下りるまでは凄く時間がかかるので……」
「そんなにかかるんですか?」
「はい、賞金が高額すぎるので。国家予算を動かさないと難しいです。」
「いやそれ一種の詐欺じゃないですか?」
「こんなにあっけなく終わるとは誰も思ってなかったようです。」
「確かに正攻法じゃ勝てませんでしたよ。」
「5年後にもう一度こちらへお越しください。」
ご、ごねん……ご……?
「支払いは確実に行われます。滞りはあるかもしれませんが。」
とりあえずギルド内にある分のお金をいっぱいもらった。
「ノクタ。本屋寄りたいんだけど。」
「欲しい本でもあるの?」
「ある。召喚魔法の本よ。」
「ああ、正式にネクロマンサーになるための魔法か。」
「そうそう。適正だけはあるらしいから。」
あの女の子店主は元気だろうか。
「おや、くっせえ臭いがしますね。これは殺人者の臭いですねえ?」
「わかる?お前もひねってあげようか?血だまりなんとかの様に。」
「ヒッ!?」
店主の女の子はのけぞった。
「……いい呪言です。どんな本をお探しで?」
「召喚魔法の本。」
「占術魔法の習得率は?」
「占術魔法?」
「あー、ダメだこりゃ。基礎も基礎の職業ツリーもわからないとは。」
「い、いやー。一応適職がネクロマンサーなんですけど。」
「……呪言はもう使わなくてもいいんですよ?」
「いや本当に適職がネクロマンサーで……」
「マジですか?」
「マジ。」
「……ではこの本が丁度いいでしょう。」
店主の女の子が棚のかなり上の方にある本を取った。
「スピードラーニング!召喚魔法体系の全て、です。」
高そうな本だな!?
「これは召喚士が適職だった人用の本で、かなりレアなんですよ。」
「ネクロマンサーと関係があるの?」
「大あり。死霊術士は死術士と召喚士の複合上位職です。」
「で、召喚士が適職って人自体も少ないと。」
「適職がネクロマンサーなんて、世界にひとりいるか怪しいです。」
結局その本を買った。
まさか本一冊に金貨を使うことになるとは……
「じゃあ私は宿でお勉強タイムよ。」
「どれくらい時間かかりそ?」
「一週間は見てちょうだい。」
「一週間……普通に習得しようとしたら数年かかるらしいが……」
「適職って怖いわよね。」
そう言ってシンシアは宿に入っていった。
シンシアが勉強するのなら、せめてサポートはしないとな。
俺は近くにあるお菓子屋に入った。
「アップルパイ。ホールでひとつお願いします。」
「またのご来店お待ちしております!」
よし、買った。アップルパイのホール……
その次の瞬間、俺は道の段差に足を引っかけてしまった。
宙を舞うアップルパイ。べちゃりと道路に着地した……
そして馬車が通過。アップルパイは見るも無残な姿に。
「あ……あ……」
カラスの群れが飛んできてアップルパイをついばみ始める。
……向こうの方から野犬の群れが!
奪い合うようにアップルパイは引きちぎられ……
あっという間にアップルパイは消滅した。
「すみません。スイートポテトをひと箱ください。」
俺は頭を切り替え他のお菓子を買った。




