第27話「赤目守りさまの森には、妖怪の霊だって会いに来てくれる」
『お盆の森と赤目守り』の初投稿をした時の分は、削除しません。残しておいて、番外編に使います。
赤目守りの忙しい一日、迷子の子リスを探して~といった風なストーリー用に使う予定です。
今回、第一部~第三部に分けて、再度一つにまとめましたが、ストーリーの流れも確定したので、この次は分けません。
一気に、まとめるのが下手で、すみません。
龍絵と秋人の二人は驚いた。
「ミステリー・スイーツ園芸部に手を貸す?そんな話、初耳だ!」
「静花さん、それ、どういう意味ですか?私たち、瀬奈ちゃんたちから、そんなお願いされてませんよ?もう日付が変わってるから、今夜になりますけど。アキくんが、一週間のうちで、一番楽しみにしてる土曜ロードショーの日なんです。そんな夜に、出掛ける約束だなんて………」
龍絵は、秋人の気持ちを知っているので、不思議でたまらなかった。
事情を知ると、ランとカティは、毛を逆立ててトイを威嚇した。
『噛んでやる!』と目で伝えたが、トイは「ふんっ」と鼻息を荒く吐いて、見ないふりをした。
「知世さんに頼まれて、僕が引き受けた。祠に封じられた金目の鬼を復活させて、赤目守りの森を潰す計画は、赤目守り自身が立てたんだ」
「赤目守りちゃんが!?」
「おい、それも初耳だぜ」
秋人は眉を吊り上げたが、龍絵は、目を丸くして、ただただ驚いた。
「赤目守りは、森を護るのに疲れたから、成仏して森から解放されたいって。それで、瀬奈ちゃんたちは、手伝うことにした。七不思議の天鬼没塔は知ってるよね?西野小には、永遠に腐敗しない、おとのは;実名、天の亡骸が埋まっている。天を目覚めさせれば、鬼も目覚めて、金目の力も復活するんだって」
トイの話を聞いている間中、秋人は、口をあんぐりと開けていた。
龍絵は、秋人の背に額をくっつけて、下を向いていた。
森を潰す情報は入っていたが、それが赤目守りの企みだとは思わなかった。
「そうかい、あんただけ聞かされていたんだね」
静花は、トイを見て困った顔をした。
「赤目守りの策略を阻止しようと、西野小の先生たちは、気合いを入れている。それなのに、ことりが、ミステリー・スイーツ園芸部に騙されて、入部しちまった。陰謀の主犯は赤目守り、ミステリー・スイーツ園芸部が、赤目守りに加担していることを、ことりは知らなくてねえ」
ランとカティは、至極真面目な顔をして、うんうんと首を縦に振って、静花に同調した。
小菊は、ランとカティに近寄って、それからトイを見据えた。
「トイ君、瀬奈さんたちも騙されているの。あの祠に、鬼は封印されていません。成仏しているわ。昔、伊庭左中という最高奉公屋が、金目の鬼を封印したの。けれど、ことり君が三歳になった時、封印が解けた」
小菊は、一度、言葉を区切って、静花に目を遣った。
静花は、無言で頷いた。それで、小菊は、話を続けた。
「封印を解いた者は、七区の大頭ギュウジャッガンと、その妻ワカチカ。輝龍さまは、命をかけて二人を森の祠に封印して、亡くなりました。爝火さまが駆け付けた時には、輝龍さまは息を引き取っていたの。だから、爝火さまは、輝龍さまを裏切っていません」
小菊は、厳しい声音と険しい目つきで、皆に真実を告げた。
「輝龍さまが殺された、この重大な顛末を隠す為に、輝龍さまの妹君の霧花さまは、既に奉公屋と結婚されて、奉公屋となっていたけれど、自分の方が死んだということにしようと、提案されました」
「 輝龍さまが………死んでる?ことり君のお母さんは、死んでたの?」
真っ青な顔をして声を出したのは、龍絵だった。辺り一面、哀愁が漂い静まり返っていた。
「ええ。霧花さまは、輝龍さまに姿を変えて、御自分の夫と、二度目の結婚をなさったの。そして、山鹿霧子に成り済ました。輝龍さまが、爝火さまと決裂して、霧子になったと、悪い妖怪たちに思い込ませる為でした」
「どうして、そんな事を?」
震える声で聞いたのは、トイだった。そして、小菊は、ゆっくりと話した。
「輝龍さまの死が知れ渡れば、悪い妖怪、心醜い奉公屋を活気づけて、大惨事が起こります。輝龍さまを演じることが、最低な行為だと百も承知でしたが、輝龍さまの死が及ぼす影響は、計り知れなかったのです」
龍絵が、秋人の背に頭をこすりつけて、鼻を啜った。
秋人は、唇を噛み締めて、必死に涙をこらえた。
トイは、胸に釘を打ち付けられたような思いがした。
輝龍は良い妖怪たちの誇りで、トイの両親も、トイ自身も、輝龍を大変好いていた。
「私は、輝龍さまに変化できます。輝龍さまの力も使えます。霧花さまは、奉公屋となっていますので、輝龍さまに変身できても、能力までは使えません。それ故に、私と霧花さまは、力を合わせて、今まで輝龍さまを演じて参りました」
話し終えると、小菊は、静花に会釈をして狐に戻った。
この事実こそが、ことりを養子にだした理由だった。
永遠に隠し通せたら、どんなにいいかと静花は思った。
ランがカティに、そっと耳打ちした。
「ことりお兄ちゃん、泣いちゃうよぉ」
泣きべそをかいているのは、ランの方だった。
カティが、黒い前足をランの白い前足に、そっと乗せた。
「赤目守りさまの森には、妖怪の霊だって会いに来てくれるんだもの。ことり兄ちゃんのお母ちゃんも、きっと来てくれるよ。だから、僕らは森を守るんだ」




