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南海の竜が来た そのいち

 株主総会がおわって数日がたった。

 私が夜シフトの出社をしたら一階のロビーに警備ギルドの面々が甲冑姿で大剣を支えにして整列していた。

「ちょ、何なんですか」

 いつもの警備員姿の人をつかまえてきく。

「探検ギルドのギルド長がいらっしゃるんです。そのお出迎えです。早く行って下さい」

 緊張した雰囲気にふりかえると、玄関外の道に特大リムジンが入ってくるところだった。

 私はあわてて改札機に従業員証をかざす。

 普段は使われていない中二階のホールには、楽士ギルド(通称、ローエンタール楽団・ほぼ同好会)の人たちが並んでいる。

 なんか荘厳な音楽をかなではじる。どこかの国歌だろうか。

「エレベーターは停止中です」

 私は、受付の女性に端っこへと誘導された。

 そこには夜シフトのくるみさんが拘禁されていた。おとなしい彼女は、同僚が来てほっとした様子だ。

「セレモニーがあるなら、事前に知らせてくれればいいのに」

「そんなこと出来るわけないですよ。相手は世界の要人なんですから」

 ロビーに入ってきたのは、長い白髪の痩せた大柄な老人だった。香港映画で見るような錦の中国服を着て、杖をついている。

 スーツ姿の熊さんが進み出て出迎える。

「ホワンインホワンイン、タンターレン」

 拱手して片膝をつく。

「出迎え、ありがとう。立ちたまえ」

 きれいな日本語だった。

「イートウ君は元気だったか」

「おかげさまで」

「オカゲサマ…… ちょと難しい」

「ウォーツオダプーツオ」

 熊さんは、エレベーターホールまで案内する。社員証のパスもなしだ。

「こちらへどうぞ」

 一基だけ扉を開けたエレベーターへと案内する。

 エレベーターのドアがしまるとともに、ざわめきが戻った。

「すごい威厳だな」

「あの伊藤さんが最敬礼だよ」

「しかし、どこ行くんだろうな」

「あ、二十六階で止まった」

「なんで俺らの階に」

「あ、喫茶室か」

 警備ギルドの面々の声が聞こえる。

「あー、諸君。フロア内ではくれぐれも静かに。威儀をただして進め!」

 たこさんの声がした。

 一人だけ、兜に赤い毛を生やしている。

……これはわかりやすい。

 動き出した他のエレベーターに乗り込む。

 私とくるみさんは最後のエレベーターだ。


 喫茶室には裏口から入る。

 業務用エレベーターのある側に、倉庫に入れる隠し扉があるのだ。ここから更衣室にぬけて制服に着替え、厨房に入る。

「おはようございます」

 店長に挨拶する。

「セレモニー、見た? 凄かったよね!」

 アリサさん、大興奮である。

「え、どこから見てたんですか?」

「中二階。そこから業務用エレベーターで一直線よ」

「そんなルートが……」

 考えてみれば、重い楽器を抱えた楽士ギルドのめんめんが動くには裏動線が必要なのだ。業務用エレベーターが止まっても不思議ではない。

「さて、業務連絡です。現在、熊さんとギルド長は二人だけで重要な会議中です。扉は鍵をかけて貸し切りにしています。もし、お飲み物出すとしても、私だけで対応します。水の使用は極力避けて、食器を磨いてください。以上」

 アリサさんは、喫茶室のモニターの前に陣取る。

 ちらっと見ると、喫茶室の二人はティーポットを前にして会談中だ。くまさんは、かなりしぼられているらしい。


 会談は、けっこう長い時間続いた。

 一度、サンドイッチの提供をしたが、ギルド長もくまさんも手をつけなかった。

 それだけ真剣な話し合いだったのだ。

 二人が出ていくと、アリサさんが「もったいないもったいない」と言いながらサンドイッチをついばんだ。

 

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