喫茶店でのある1日part17
戦況が膠着しているといえど、戦闘であるため十分になるかというようなときだった。
「そろそろか」
「間に合わなかったわね」
閃光が止まり、初瀬の体が崩れ落ちる。少しして立ち込めていた赤い霧が霧散し、男の姿が見える様になる。崩れ落ちた初瀬の姿を見て、男は舌打ちをしながら初瀬の方に近づく。そのとき、男は初瀬の服が濡れていることに気づいてしまう。
「これは、神様に感謝しなくてはいけないわね。よくこの場で雨を降らせる」
「てめえ、神をこの場に匿っていやがったな」
『気づいていなかったの? なら笑うしかないわね。神様の力が水に反応するとは私も知らなかったけれど』
神の所在がここだったことと、初瀬が生きていたことは、男は予想していなかった。そのため、男の意識の隙間を縫うかの様に飛んできた閃光を回避することはできずにまともに直撃する。
『やっぱり神様を蔑ろにする奴はあれね、油断が多いわ。私も人のこと言える訳ではないけれど』
服についた埃を払いながら立ちあがる。男は咄嗟に回避を試みた様子だが、間に合わずに右腕が吹き飛んでいる。流石に赤い霧の効果が完全にない訳ではなく、意識が蝕まれていくのは初瀬にも止められない。
「てめえ、神の力を……」
『貴方が想像している通りよ。信託ではないとは言え、神様を信仰している私が何で使えないと思ったのかしら』
初瀬が行ったのは、神が作りだした水を再現して体内に吸収させ赤い霧の影響を打ち消すというものだ。閃光として普段使っているが媒体であるロザリオは、信仰する者の力を使うという物ということを知っている人は少ない。
閑話休題。
『さあ、仕切り直しとしましょうか。私はまだ死んでいないし、貴方も死んでいない』
「しぶといな。てめえはとっとと死ねば苦痛は無くなるだろうが」
口元は弧を描きながらも、その目に温度はない。続けようと提案している初瀬だが、長期戦の様なものをしたのは久しぶりなため、取り繕う余裕はない。
「何でこんな策にしてしまったのかしら。時間稼ぎなんて、一番得意なのは白夜じゃない。ごり押ししかしてない私には向かないわ」
「この場は侵食できねえしなあ。正々堂々とか俺の柄じゃねえんだがな」
邪神である男の言葉は、諦めを含んだ声音だった。時間稼ぎが苦手と初瀬は言うが、今回のこの戦闘に関しては成功している。誰かしらが入らないといつまで経ってもこの戦闘は終わらない。
それが分かっているからこそ、二人はやる気がない。戦闘を続けるが戦況が変わるのはいつか分からない初瀬の策が使われるときだが、それを男が待つかというのは分からないのだ。逃げに徹されると初瀬は男を追うことはできない。
「そこまでして勝ちたいか、という訳でもないのよね」




