喫茶店でのある1日part16
『今回は驚きよ。まさか神殺しをしようとする者がいると思ったら、それの原因となるのが私なんだもの』
「元凶はてめえか。よっしゃ、殺してやるから動くなよ」
さらりと告げられた言葉は膠着していた状況を変えるものだった。赤い霧が男の周囲から立ち込める。それは喫茶店の店内を削りとりながら初瀬に向かう。
『動く必要がないわ。この程度のものに干渉できない程というのは、雑魚ね。下手にすり抜けようとするから乗っ取られる。全部吹き飛ばせばいいだけよ』
「そういや、あそこでもやっていたな。だがあのときと同じと思うなよ」
店内というのは、弾幕をやるには狭すぎる。そのため、回避する場所はほとんどない。それは必然的にお互いの攻撃を相殺するしかできなくなる。閃光と赤い霧が中央でぶつかり合う。
『拡散系はこういうとき嫌ね。面で攻撃できるというのは卑怯と言いたいわ』
「てめえ、それができねえからって俺をピンポイントで狙うじゃねえか! こちらの苦手とするところを狙いやがって、それのが卑怯じゃねえかよ」
閃光は赤い霧のある一点を集中的に狙って打たれていた。その延長には男がいる。そのため、どうしても防御に回すしかできずにいた。
ならば初瀬が有利かと言うとそうでもない。前回の戦闘でもあったことだが、赤い霧は薄く広がる。密室であるこの場なら充満するのも早い。制限時間のある戦闘というのは初瀬も認識している。
「ああ、まったく。充満する霧は減らせないのよ。なんで侵食なんて能力なのかしら」
「てめえの媒体はロザリオだろうが、なぜ信託を使える?」
時間稼ぎという目的のためか、男は初瀬に媒体のことを聞く。攻撃の手が緩まることはなく、赤い霧の量が減ることもない。膠着してしまっている場で有利なのは男の方であった。
『これは信託なんて崇高なものではないわ。単に言葉を覚えるのが面倒だったからテレパシーを使っているだけよ』
「何で、それを信託とかぬかしてるんだよ!」
返事が想定外だったのか赤い霧が揺らぎ、閃光が中央から越えて男の方に行く。当たる直前に赤い霧が閃光を飲み込んで無効化されるが、男は冷や汗を流す。
「下手に時間稼ぎとか目論むべきじゃなかったか」
『残念だったわ。あそこで当たってくれれば良かったのに』
だが、その間にも赤い霧は店内に充満していく。刻一刻と制限時間はゼロに近づいているのだ。拮抗してしまっているため、時間だけが過ぎていく。
「邪神風情に二回も負けたくはないのよね。さて、その場合どうしようかしら」
溜息を吐きながらも攻めあぐねている。閃光をこれ以上は同時に打ち出すことはできない。このままだと、また初瀬の死亡で戦闘が終わるだろう。そして、男が気づいているのか分からないが、神はこの奥で匿われている。死んだら流石に隠し通すことはできない。
「策はあるのよね。時間が足りないだけで」




