1人の障害者を取り巻く実態(?)⋯人生(?)
・このエッセイは、胸糞が悪いエピソードがある。
あと、あとがきが長い。
私と彼女の関係の話がある。
私は境界知能の彼女と15年間付き合っている。
だから、彼女がどんな人生を歩んでいるのか知っている。
彼女は境界知能と自閉スペクトラムによって、本来ならスムーズに学べている『暗黙の了解』を学べておらず、友達がいない。
そうなると、彼女は寂しさが募るわけだが、そこに個人宗教家がつけ込んだり、不当な扱いをしてくる家族から離れられなくなる。
私は彼女に友達を作りたい。だから、彼女のLINEに同級生から連絡がきたことを喜んだ。
しかし、蓋を開けてみれば、友達のいない彼女につけ込んだ金銭の搾取であり、私はそれを「おかしい」と彼女に伝えた。
彼女は「それでもいいよ。友達だから」と言った。
私は「友達なら金銭ではなく、好きなことを話したら?」と提案した。
彼女は「分かった!」といい、同級生に「まめきちまめこって知ってる?」と聞いた。
同級生から返ってきた返事は「?」1つだけであり、彼女が「ネットで漫画を描いている人だよ」と送ると、返事はなく、ブロックされていた。
真性のクズである。
他にも、彼女の家族は、立場の低い彼女を『自身たちのストレスを捨てるゴミ箱』として扱った。
彼女は言い返せず、寂しさから家族というコミュニティに依存している。そのため、家族から嫌われるような行動はできない。
彼女の家族は、彼女を人として扱わない。
この非文明的仕草が、彼女の母による「彼女が大好きだった祖父の死を彼女にだけ伝えない」という非常識な行動を引き起こした。
そして「〇〇(=彼女)が好きだから保育士になったんだよ」と言ってきた姉は、彼女にアレルギー物質を恫喝して食べさせる、という刑事事件になりかねない問題を起こした。
◇
彼女は境界知能だ。けれど、自分を善人だと信じなければ明日の呼吸もできない、小癪な言い訳を毎日、毎日並べる醜悪な人間ではない。
確かに彼女は、浮気を10回以上した。
嘘も、数百回以上ついている。
だからといって、彼女は人を食い物にしなければ生きていけないような、下劣さを持っているわけではない。
彼女のそれらの行動は、愛着障害や対人関係能力の低さから来るものであり、9割改善した今では、元来の気質である『優しさ』が十分に発揮されている。
◇
私は知ってほしいのだが、「境界知能だから」と言って、必ずしも悪であるとは限らない。
確かに問題は多いのかもしれない。
しかし、境界知能とは対極にいるはずの高知能者が刑事事件を起こしたり、モラハラをしてしまうことを考えると、『悪』は誰でも行う。
――そして、夢も希望もないことを言うが、彼女はろくな死に方をしない。
なぜなら、彼女がしてきた行いによって蓄積した『人生の負債』を返済する力が無いからだ。
この負債とは、嘘をついて無駄にした時間、人を信じれず、伸ばされた手を振り払った回数。そして、ストレスを他人にぶつけた回数によって溜まっていく。
それは必ず、人生のどこかで返済しなければならない。
いま、彼女はキラキラした将来があると夢を見てる。しかし、いずれそれが妄想であることを体感することになる。
私が努力したとしても、返済までの期限を引き延ばすくらいで、負債そのものを消すことができない。
境界知能で愛着障害を持つ人間が立ち直ったけれど、「酷い死に方をしました」といった分かりやすい物語にはならない。
絶望が永遠に続き、彼女の意思に反した緩やかな死を迎えることになる。
そして『負債の返済』はどんな人間でも起こる。
それが、「障害者を取り巻く実態を知りたい」と言う人間が見落としている重要なことだ。
私は彼女と共に地獄に落ちる。
これは悲劇でもなんでもない。
守りたかった宝物が地獄に転がっただけだ。
このエッセイはフィクションではない。
1人の障害者を取り巻く実態である。
【あとがき】
私は彼女と一緒に地獄に落ちるわけだが、15年間何もしてこなかったわけでは無いし、諦めているわけでもない。
生きていると分かるだろうが、『その人自身の課題』と『生きる中での課題』というのはまったく別ものだ。
彼女自身の課題に取り組む中で、外から女性の悲鳴が聞こえたり、隣人が泣き叫ぶ女性を何度も壁に叩きつけたりするといった『生きる中での課題』に遭遇する。
それらの解決が終われば、今度は彼女がアトピーになったりして、『彼女自身の課題』に遭遇してしまう。
そんな日々のなかで、彼女の愛着障害はほとんど完治し、不安障害を持っている彼女が、未来に咲く、つぼみの話をキラキラした表情で語れるようになったという実績は、まぁまぁの成果だと私は思っている。
◇
そもそも、ここまで時間がかかってしまったのは、彼女が出会ったときの私のイメージを引きずり、長年見下していたからだ。
私は彼女と出会ったとき、髪の毛はブロッコリーみたいで、ヨレヨレの服を着たまま、人間失格を読んでいた。少年院から出てきたばかりで、まだ社会に適応できていなかった。
彼女はおしゃれだったから、そんな私を「下」と見下していたようだ。けれど私は、気合と考えるスタミナがすごい人間であるため、彼女は何度も「こいつは下の存在ではない」という衝撃を受けることになった。
彼女は出会った時点で、ブロッコリー頭でヨレヨレの服を着た新入生が、2ヶ月そこそこで、学校中に友達や知り合いを作り、上級生がひしめく階で、人間失格を読んでいるという違和感に気づくべきだった。
それから、彼女と付き合い始めた私は、のちに、彼女が境界知能であり、愛着障害であることを知った。
彼女は私に「絶対、頭がいいよ。知能検査を受けてよ。そしたら自分が人とどれくらい違うのか分かるよ」と何度も言ってきた。
私はそれに「知能が分かったとしても、俺のすることは変わらない」と言った。
これは、ビリー・ミリガンという多重人格者が言っていた「私の知能が分かっても、私は変わらない」といった理屈を理解していたからだ。
しかし、私は知能検査を受けることになった。
結果は全検査iq128だった。
ワーキングメモリが高いから、常に脳へ負荷がかかってるみたいなことを言われたと記憶してる。
それから私は、いろんな能力が伸びていった。
自分のままでいいのだと気づいたからだ。
そうすると、私を見下していた彼女は、もはや見下すことができなくなった私の存在を、今度は否定するようになった。
その癖が、彼女と生きようとする私との関係を悪くし、彼女自身の愛着障害や不安障害を治すのを何十回と妨げた。
彼女の『見下し癖』は、彼女の人生そのものを否定していた。
つまり、何が言いたいかというと、「見下し癖」や「存在を認めない否定」は人生を長期的に蝕む性質があるということだ。
私は彼女という宝物を守りたいと思っている。
だから、日々頑張っている。
もし私が夢半ばで死んだら、境界知能の人間に遠くからでいいから、1回だけでも優しくしてあげてほしい。
ほら、何でもないことに「ありがとう」と言われたら嬉しいでしょ?
あなたのその優しさが、誰かの死を防げるかもしれないからね。




