↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/39

「新品」の定義が思ってたのと違った。



 私は大きな書店で、トリイヘイデンという作家が書いた『よその子(単行本)』を新品の状態で見つけた。


1997年に出版された『よその子』が、いまだに新品で売られているのは、物凄く珍しい。



 本の頭に指を引っ掛け、それを引き出してみると、表紙の四分の一が日焼けして、色が消失していた。


本来であれば、赤の表紙に奇妙な空気感を漂わせる絵が載っているはずだが、表紙の左上から中央に伸びた幅広い白と、その白を縁取るように滲んだ黄土色が、その素晴らしい表紙を台無しにしていた。


私はその表紙を見て――あれ?本屋って新品の物を売ってるわけじゃないの?これじゃ中古のほうが状態いいじゃん――と思った。



 私は家に帰って「新品」の定義を調べた。明確な法があるわけではないらしいが、新品とは“消費者の手に1度も渡っていない商品”を言うようだ


 私はこれにとても驚いた。


 私が思っていた新品は、誰にも購入されていない「綺麗な状態の商品」だった。


だから、“消費者の手に渡っていない”という条件を満たしていれば、どれだけ状態の悪いものでも、一応「新品」と名乗れそうな様子に小さなショックを受けた。


 しかし、同時に「なるほど」とも思った。


 通販サイトのレビューを見ていると、「新品を買ったはずなのに、中古のような悪い状態の物が届いた。」といった不満の声をチラホラ見る


そういった消費者の不満を作り出しているのは、この『新品』に対する認識のズレなのだ。


 販売者は「状態が悪くても、誰の手にも渡っていないから『新品』」と考え、販売する。


しかし消費者が考える『新品』とは、「きちんと保存されていて、誰にも買われたことがない商品」だ。


そういった『新品』に対する両者の認識のズレが、消費者の不満を作り出している。



◇

 私はそれを知って思ったのだが、「新品」として販売されている物が本当に新品であるのか、消費者には確かめる方法が無いように感じる。



 それを踏まえると、消費者は『物を買う』という行為について、「状態を見てから買う」といった対策をとるものの、依然として不利な売買を行わなければならない、弱い立場にある。


だからこそ、メルカリのような、ほぼ匿名の人間が販売するサイトを利用するときには、「届いた品物を開封する動画を撮影する」といった自衛策が必要になるのだろう。



 結局のところ、こういった『新品の要件』をみんなが知らないから、商品の売買は成り立っているのかもしれない。


もし消費者が「新品であることを証明するものはありますか?」、「その証明の正当性はいかにして担保しているのですか?」なんて販売者に追求し始めたら、大変なことになるからね。



⋯⋯私は好きだけどね。


そういった世界。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。