「新品」の定義が思ってたのと違った。
私は大きな書店で、トリイヘイデンという作家が書いた『よその子(単行本)』を新品の状態で見つけた。
1997年に出版された『よその子』が、いまだに新品で売られているのは、物凄く珍しい。
本の頭に指を引っ掛け、それを引き出してみると、表紙の四分の一が日焼けして、色が消失していた。
本来であれば、赤の表紙に奇妙な空気感を漂わせる絵が載っているはずだが、表紙の左上から中央に伸びた幅広い白と、その白を縁取るように滲んだ黄土色が、その素晴らしい表紙を台無しにしていた。
私はその表紙を見て――あれ?本屋って新品の物を売ってるわけじゃないの?これじゃ中古のほうが状態いいじゃん――と思った。
私は家に帰って「新品」の定義を調べた。明確な法があるわけではないらしいが、新品とは“消費者の手に1度も渡っていない商品”を言うようだ
私はこれにとても驚いた。
私が思っていた新品は、誰にも購入されていない「綺麗な状態の商品」だった。
だから、“消費者の手に渡っていない”という条件を満たしていれば、どれだけ状態の悪いものでも、一応「新品」と名乗れそうな様子に小さなショックを受けた。
しかし、同時に「なるほど」とも思った。
通販サイトのレビューを見ていると、「新品を買ったはずなのに、中古のような悪い状態の物が届いた。」といった不満の声をチラホラ見る
そういった消費者の不満を作り出しているのは、この『新品』に対する認識のズレなのだ。
販売者は「状態が悪くても、誰の手にも渡っていないから『新品』」と考え、販売する。
しかし消費者が考える『新品』とは、「きちんと保存されていて、誰にも買われたことがない商品」だ。
そういった『新品』に対する両者の認識のズレが、消費者の不満を作り出している。
◇
私はそれを知って思ったのだが、「新品」として販売されている物が本当に新品であるのか、消費者には確かめる方法が無いように感じる。
それを踏まえると、消費者は『物を買う』という行為について、「状態を見てから買う」といった対策をとるものの、依然として不利な売買を行わなければならない、弱い立場にある。
だからこそ、メルカリのような、ほぼ匿名の人間が販売するサイトを利用するときには、「届いた品物を開封する動画を撮影する」といった自衛策が必要になるのだろう。
結局のところ、こういった『新品の要件』をみんなが知らないから、商品の売買は成り立っているのかもしれない。
もし消費者が「新品であることを証明するものはありますか?」、「その証明の正当性はいかにして担保しているのですか?」なんて販売者に追求し始めたら、大変なことになるからね。
⋯⋯私は好きだけどね。
そういった世界。




