第3話 兄を待つ弟 ①約束
扉の鈴が鳴った。
入ってきたのは、小学校高学年くらいの少年だった。
ランドセルを背負ったまま。
少しだけ俯いている。
ルナが慌てて立ち上がった。
「い、いらっしゃいませ」
少年は店内を見回す。
そしてルナを見て、まっすぐ歩いてきた。
「…なんだ、ガキじゃねぇか…。」
メルトは書類から驚いた表情で顔を上げた。
それでもルナは気を取り直して尋ねた。
「ど、どのようなご依頼でしょう」
少年は握りしめていた星を差し出す。
少し欠けた、小さな星だった。
「兄ちゃんに伝えたいんだ」
少年は星をだした。
メルトが立ち上がる。
「年齢で配達員を判断するのは感心しませんね」
「彼女は私が認めた郵便屋です」
少年は目を丸くした。
そして俯く。
「ごめんなさい」
小さく呟く。
「僕だって兄ちゃんを探したんだ」
拳を握る。
「でも見つからなくて」
「何もできなくて」
唇を噛む。
「なのに」
少年はルナを見る。
「僕と同じくらいなのに」
「お前は助けられるんだなって」
少しだけ声が震えた。
「……悔しかった」
「そう…」
「わ、私は大丈夫です!いきなりだったので、驚いただけです。」
「ルナさんがそう仰るのでしたら、お受けしましょう。」
メルトは星を受け取る。
「お兄さんはどちらへ?」
少年は少しだけ空を見上げた。
窓の向こう。
青空の向こう。
もっと遠くを見るように。
「星になった」
店内が静かになる。
ルナは言葉を失った。
けれどメルトだけは変わらない。
「そうですか」
当たり前のように頷く。
「では、お名前を伺っても?」
少年は少しだけ安心したように笑った。
誰も否定しなかったからだ。
「ユウジです」
そして小さな声で続ける。
「兄ちゃんは、タクミ」




