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ポンコツ海賊令嬢と人魚姫のドタバタ航海記――この恋、沈没寸前です!――  作者: 明石竜


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9/10

Voyage 9 幽霊船レストランへようこそ

 鏡海への手前で、霧が出た。

 朝から白く、濃い霧だった。十メートル先が見えない。帆が湿って重くなった。ネリネが羅針盤と地図を交互に見ながら、慎重に航路を計算している。

「どのくらい続く?」

リヴィアが尋ねた。

「この海域の霧は、午後まで続くことが多いです。ただし、今日は少し質が違います」

「何が違う?」

「通常の霧より、匂いがあります」

 リヴィアが鼻をきかせた。確かに、何か匂う。潮の匂いではない。もっと別の、油と香辛料が混じったような。

「料理の匂いがする」

リヴィアが言った。

「します」

「なんで海の上で料理の匂いが?」

「分かりません。ただ、この方向に何かあります」

 たこまるが帽子から顔を出した。

「姫さん、匂いが分かるか」

「はい。魚料理です。それと、海藻を使った何かと、深海の香辛料。あとは……少し、魔法の匂いがします」

「魔法の匂い?」

リヴィアが反応した。

「魔法を使っているものの近くで、こういう匂いがすることがあります。何かを隠すための魔法に多い」

「隠すための魔法?」

「姿を消しているものが、近くにあります」

 ネリネが羅針盤を確認した。

「風が変わりました。霧の中心がこの先にあります。そこから匂いが来ている」

「向かってみる?」

リヴィアが提案した。

「危険性は不明です」

「危険なら逃げる。近づいてみる価値はある」

「承知しました」

 シーラビット号が霧の中を進んだ。匂いが強くなった。料理の匂いが濃くなって、腹が鳴った。ピピが「お腹すきました」と言った。ネリネが「黙っていてください」と言った。

 霧が少し薄くなった。

 船が見えた。

 大きな船だった。シーラビット号より三回りほど大きい。船体は古びていて、帆は黒ずんでいる。窓から灯りが漏れている。甲板に人影はない。

「幽霊船?」

ピピが反応した。声が少し小さかった。

「幽霊船じゃない。料理の匂いがする幽霊船はない」

 たこまるが言う。

「でも誰もいないように見えます」

 ミルフィナが突っ込んだ。

「姿を消す魔法がかかっていると言った。乗組員がいないように見えるだけだ」

「では、近づいてもいいですか?」

 ピピが尋ねる。

「おれに聞くな。船長に聞け」

「船長?」

「近づく」

リヴィアは迷わず言った。

 シーラビット号を並べると、向こうの船に文字があった。古い書体で、「レ・ヴァーグ」と書いてある。波、という意味の言葉だ。

「幽霊船レストランの話、聞いたことがある?」

リヴィアが全員に尋ねた。

「聞いたことがあります。この海域に出るという噂は、古くから港町で言われています。実際に乗った人間の話は、あまり聞きませんが」

 ネリネが答えた。

「実在するのですか?」

ミルフィナが尋ねた。

「実在した。目の前にある」

 リヴィアがそう言ってほどなく、向こうの船から、声がした。

「いらっしゃいませ」

 低い、落ち着いた声だった。甲板に、人が現れた。年配の男で、白い帽子と白いエプロンをつけている。料理人の格好だった。

「本日はレ・ヴァーグへようこそ。席にご案内します」

「え、普通に入れるの?」

リヴィアが尋ねた。

「どなたでも。ただし、ルールがあります」

「ルールは?」

「席についてからお伝えします。まず、乗船してください」

 リヴィアはたこまるを見た。

「どう思う?」

「罠なら、匂いまでつける必要はない。食欲を刺激して引き寄せているなら、捕まえる目的ではなく、客として扱う目的だ」

「行く」

リヴィアが言った。

 乗り込むと、甲板は見た目よりずっと広かった。魔法で内部が拡張されているのか、外観と内観が一致しない。案内された先には、テーブルと椅子が並んでいた。それぞれの席に、小さな灯りが置いてある。

「席についてください」

 リヴィアたちが座った。たこまるだけはテーブルの上に乗った。

「ルールをお伝えします。このレストランでは、お客様が料理を選ぶことはできません」

「できない?」

リヴィアが突っ込んだ。

「こちらが判断して、お出しします。何が来るかは、座るまで分かりません。それが嫌な方は、今すぐ席を立っていただいて構いません」

「なぜそういう仕組みなの?」

「料理人として、客に合った料理を出すためです。メニューを見て選ぶより、正確に合うものが出ます。ただし、保証はしません」

「保証しないの?」

「完璧な人間はいません」

 リヴィアは全員を見た。全員が席に残っていた。ピピが「食べ物が来るなら何でも」という顔をしていた。ベルが無言でテーブルの木材の質を確かめていた。

「では続けて」

「ありがとうございます。もう一つ、値段についてです」

「高い?」

「食べ終わってから決まります」

「食べる前には分からないの?」

「料理の価値は、食べたあとでないと分かりません。また、払えないほどの額にはなりません。ご安心ください」

「ネリネ」

「……承知しました。一応、財布は持っています」

ネリネは複雑な顔を浮かべていた。

 最初に来たのは、スープだった。

 透き通ったスープで、中に細い海草と小さな魚が入っている。一口飲んだ。

「……おいしい」

リヴィアが言い、

「おいしいです」

ミルフィナも舌鼓を打った。

たこまるの前に、小さなカップに注がれたスープが置かれた。

 たこまるが少し固まった。

「……うまい。なんで分かった」

「何が?」

「おれの好みを」

 スープを見た。深い海の貝からとった出汁の味がした。普通の料理人には出せない味だ。

「さすがだな」

たこまるが認めた。

 次の料理が来た。リヴィアの前に置かれたのは、焼いた魚だった。港町でよく食べる種類ではなく、もっと深い海の魚だ。

 ミルフィナの前には、人間の料理とは少し違うものが来た。生に近い状態で、香辛料の使い方が違う。

「これは、人魚が食べる料理の作り方に近いです」

「分かるの?」

「王宮で食べたものと、似ています。でも少し違います。人間の料理の影響が混じっています」

「両方を知っている料理人が作ったのかもしれません」

「そうかもしれません」

 ピピの前には、大量の揚げ物が来た。ピピが黙って食べ始めた。止まらなかった。

 ベルの前には、野菜の料理が来た。大きな皿に、山積みになっていた。ベルが無言で食べ始めた。量が多くても、ベルには問題ないようだった。

 ネリネの前には、整然と盛り付けられた料理が来た。品数が多いが、量は少ない。少しずつ、多くの種類を食べるのが好きなのを、見抜かれていた。

「正確ですね」

「どうした」

「こちらが言わなくても分かるのが、少し悔しいです」

「なんで悔しいの?」

「自分の好みは、自分だけが知っていると思っていたので」

「観察力があるのね、あの料理人に」

「そうです。それが、少し」

「悔しい」

「……はい」

 食事が進んだ。

 途中から、たこまるが料理長の方をじっと見始めた。

「たこまる、何してる?」

「見てる」

「何を」

「あの料理人を。手元と、目と、出す順番と。料理の組み立てを」

「研究してる?」

「ライバルとして認識している」

「突然?」

「突然ではない。最初から、この料理の構成は興味深かった。スープで胃を開いて、次に淡い味で慣らして、そのあとに主役を出す。順番の計算が精確だ」

「たこまるの料理と比べてどっちが上?」

「今は負けている」

たこまるが珍しく素直だった。

「素材の引き出し方が違う。深海の食材の使い方を知っている」

「悔しい?」

「ライバルが強いのは、いいことだ」


 食事が一段落したころ、料理人が戻ってきた。

「いかがでしたか?」

「美味しかったです」

ミルフィナが言った。

「光栄です。ご満足いただけたなら」

「一つ聞いていいですか」

リヴィアが料理人に尋ねた。

「何でしょう」

「なぜ、幽霊船のふりをしているの? 近づきにくくない?」

「近づきにくい方がいいのです。本当に料理を必要としている人間だけが来てくれればいい。怖いと思って引き返す人間は、そもそも縁がなかった人間です」

「でも、怖くて帰る人の中にも、料理が必要な人がいるかもしれない」

「そうかもしれません。ただ、私は全員を満足させることはできない。来た人を、できる限り満足させることだけを考えています」

「……そういうもの?」

「料理人の話です。船長の話は、また別でしょう」

「わたしは船長だから、全員を満足させないといけない」

「そうですか?」

「乗組員の全員を、目的地まで連れていく。それが船長の仕事でしょ」

「全員を満足させることと、全員を目的地へ連れていくことは、別のことでは」

 リヴィアが少し黙った。

「……別のことね。そうね。同じじゃない」

「目的地へ連れていく方が、あなたには合っていそうです」

「どっちが合ってるか、あなたに分かるの?」

「少しだけ。料理の好みと同じくらいには」

 デザートが来た。

 小さな貝殻の器に入った、白いものだった。一口食べると、甘くて、冷たくて、海の香りがした。

「これは何?」

リヴィアが尋ねた。

「深海の水草から作ったものです。人間にも人魚にも合う味にしました」

「なんで人魚に合う味も考えたの」

「今日はお客様の中に人魚がいると分かっていましたから」

「分かってたの?」

「近づいてくる前から、海流の変化で分かります。人魚が近くにいると、流れが変わります」

 ミルフィナが少し驚いた顔をした。

「私のことが分かりましたか」

「おぼろげに。ただ、どういう方かは分かりませんでした。来てみて、分かりました」

「どういう方でしたか」

「海を見ている方でした。ずっと、料理を食べながらも、窓の外の海を見ていました」

 ミルフィナが窓を見た。霧の向こうに、暗い海が続いている。

「習慣です。海底では、上の方の光をよく見ていました。今は、上から下を見ています」

「逆になりましたね」

「はい。でも、どちらも綺麗です」

 料理人が立った。

「お時間をいただいてよろしいですか。一つだけ、情報をお伝えしたいことがあります」

「情報?」

リヴィアが反応する。

「私はこの海域に長く留まっています。様々な客が来て、様々な話を聞きます」

 料理人は、ゆっくりとした口調で続けた。

「星潮の冠の手がかりを見つけるには、沈んだ時計塔へ行ってみるとよいかもしれません。あそこには、冠が何を開き、何を閉じるものなのか、古い記録が残っているという話があります。確かかどうかは分かりません。ただ、参考になれば」

「沈んだ時計塔」 

「鏡海の南の端、大きな岩礁の近くです。普通の船では近づけない深さにあります。ただし、人魚がいれば別かもしれません」

 ミルフィナとリヴィアが、同時に顔を見合わせた。

「ありがとうございます」

リヴィアが言った。

「お役に立てれば」

 会計が来た。ネリネが受け取って、金額を確認した。顔色が変わらなかった。リヴィアは少し驚いた。

「高かった?」

「常識的な範囲です……少し高いですが、この料理なら納得できます」

「ネリネが納得するのは珍しい」

「美味しいものには、払えます」

「そういう価値観を持ってたのね」

「船長が無駄遣いをするので、普段は節約を心がけています。それだけです」

「無駄遣いしてないわよ」

「地図に一ヶ月分の食費を使いました」

「あれは投資よ」

「今のところ、投資の回収が不十分です」

「沈んだ時計塔の情報が来たじゃない。回収中よ」

「……まあ、そうですね」


 レ・ヴァーグを出ると、霧が少し薄くなっていた。夕方の光が霧を橙に染めて、柔らかい色になっていた。

 シーラビット号に戻る前に、ミルフィナが甲板の端で海を見ていた。リヴィアが近づいた。

「どうした?」

「少し、考えていました」

「何を?」

「王宮のことです」

 リヴィアは黙った。

「さっき、料理人が言いました。ずっと海を見ていた、と。私は気づいていませんでした。見ていたことは知っていましたが、それが他の人にも分かるとは思っていませんでした」

「癖なのね」

「王宮でもそうでした。謁見の間の窓から、上の光をよく見ていました。女官たちに何度も注意されました」

「窓を見るなって?」

「上の空にならないように、と。でも、なぜ上を見るのかは聞かれませんでした」

「なんで上を見てたの」

「外があるから、です。外に何かあると思っていたから、見ていました。王宮の中には、全部あると言われていました。必要なものは全部、王宮にある。でも、見たことのないものがある気がしていました。本の中にある、見たことのないものが」

「今は?」

「今は、見ています。ここにいれば、本の中のものに会えます。歌う貝殻に、空飛ぶクラゲに、幽霊船のレストランに」

「怖くなかった? 幽霊船」

「少し、最初は」

「でも入った」

「リヴィアさんが行くと言ったので」

「それだけで?」

「リヴィアさんが判断したことには、理由があると思いました」

 リヴィアは少し黙った。

「……そんなに信用していいの。わたしのことを」

「信用しています」

「会って、まだ数日よ」

「日数は関係ありません」

「なんで」

「リヴィアさんは、岩礁の中でも舵を離しませんでした。嵐の海に落ちても、海から目を逸らしませんでした。たこまるさんに突っ込まれても、最終には正直に言います。そういう人だと分かっています」

「それだけで?」

「じゅうぶんです」

 リヴィアは海を見た。霧が晴れてきて、水平線が少し見えてきた。

「……わたしが判断を間違えたら?」

「一緒に間違えます」

「それでいいの?」

「間違えたら、また考えます。正しくすればいい」

「簡単に言う」

「難しいことですか」

「難しいわよ。一緒に間違えるって、信頼がないとできない」

「だから信頼しています、と言っています」

 リヴィアはミルフィナを見た。ミルフィナは海を見ていた。銀青色の髪が、夕の風にゆれている。

「……あなたは、王宮に戻りたいとは思わない?」

「今は思いません」

「この先も?」

「この先は、この先に考えます」

「そうね」

「リヴィアさんは、戻ってほしいと思いますか」

「……思わない。でも、あなたの話だから、わたしが決めることじゃない」

「では、私が決めます」

「どう決めるの?」

「今は、ここにいます」

 それだけだった。

 たこまるが甲板から言った。

「おまえら、夜飯を作るからいい加減船に戻れ。さっき食べたばかりだが、たこまる料理の意地がある」

「食べた直後よ」

「精神的な話だ。あの料理を超える意欲が生まれた。試作する」

「試作するの?」

「ライバルに負けたまま終われない」

「負けてるって認めるのね」

「今は負けている。これからが勝負だ」

「……じゃあ戻る」


 シーラビット号の船内に戻ると、たこまるは当然のように厨房へ向かった。

「待ってください」

 ネリネが財布を押さえた。

「幽霊船で食事をしたばかりです。これ以上、食材を減らす必要はありません」

「腹が満ちることと、船で飯を作ることは別だ」

「別ではありません。食費は一つです」

「黙れ」

「黙りません」

「あたし、お腹いっぱいだけど食べます!」

 ピピが元気よく手を上げた。

「食べるなとは言っていません。作りすぎるなと言っています」

「では、少なめにたくさん作る」

「矛盾しています」

 たこまるが厨房に入る。

 その後ろを、ベルが無言でついていった。

「ついてくるな」

「……見てるだけ」

「見られると作りにくい」

「もちもちしてる」

「感想を言うな」

 結局、厨房からはすぐに鍋の音が聞こえ始めた。

 リヴィアとミルフィナが甲板に残った。

 夜の海が広がっていた。霧がすっかり消えて、星が出ていた。

「リヴィアさん」

「何」

「明日、時計塔へ行きますか」

「行く。料理人の話が本当なら、冠の手がかりがある」

「深い場所です。私の魔法が必要になります」

「頼む。ただし、無理はしないで」

「無理かどうかは、やってみないと分かりません」

「無理になりそうだったら言って」

「言います。リヴィアさんも、無理になりそうだったら言ってください」

「わたしは大丈夫よ」

「言ってください」

「……分かった」

 波の音が続いた。星が増えた。

「海の聞き方を、今夜教えると言いました」

「覚えてる」

「今から教えてもいいですか」

「今夜はいい。疲れてるでしょ。たこまるが言ったように」

「疲れていません」

「疲れてる。歌を二回使った」

「……たこまるさんに言われたことを覚えているのですね」

「当然よ。乗組員のことは覚える」

「乗組員」

「あなたも、今は乗組員よ」

 ミルフィナが少しだけ笑った。

「では、乗組員として言います。少しだけ、教えてもいいですか。長くはしません」

「……五分だけ」

「はい」

 二人で並んで、海を見た。

「目を閉じてください」

「閉じた」

「波の音を聞いてください。音の高さが、少しずつ違います。分かりますか」

「……分かる。高い波と、低い波がある」

「高い波は、遠くから来ています。低い波は、近くで生まれています。遠くの天気が、波の高さで伝わってきます」

「遠くの天気が分かるの?」

「全部ではありません。でも、大きな嵐が遠くにあると、波が少し高くなります。今は、穏やかです」

「穏やか」

「はい。明日も、たぶん波は穏やかです。鏡海の近くなので、さらに落ち着いていきます」

「目を開けていい?」

「どうぞ」

 目を開けた。海は暗くて、波は小さかった。

「少し分かった気がする」

「上手いです」

「五回で覚えられる?」

「五回、教えれば」

「じゃあ、あと四回」

「はい。明日また」

「時計塔から帰ってきたら」

「はい」

「約束ね」

「約束です」

 たこまるが厨房から声を上げた。

「できたぞ。食えるか食えないかは別として、できた」

「食べに行く?」

リヴィアが尋ねた。

「食べに行きます。さっき食べましたが」

「意地があるって言ってたから」

「たこまるさんの意地を、応援したいです」

「そういうこと言うから、たこまるがあなたに甘いのよ」

「甘いですか、たこまるさんは」

「あなたにだけ。わたしには辛い」

「リヴィアさんには、辛くするくらい大事にしているのだと思います」

「……どういう理屈よ」

「大事な人には、厳しくする人がいます。たこまるさんはそういう人です」

 リヴィアは空を見た。

「……そうかもしれない」

「分かっています」

「わたしは分かってなかった」

「でも今分かりました」

「そうね」

 二人で厨房に向かった。

 たこまるが作った料理は、レ・ヴァーグのものとは全然違う味だったが、それはそれで、悪くなかった。


 食事を終えて船に戻るころ、リヴィアは手すりに寄りかかって、料理人から聞いた話を思い出していた。

 沈んだ時計塔には、冠に関する古い記録が残っているかもしれない。

 ただ寄り道をしただけではない。今日は、次に進むためのものを手に入れたのだ。

「……行く場所が、はっきりしたわね」

「はい」

 隣で、ミルフィナが頷いた。

「それに、私も少し分かりました。上から下を見ることと、下から上を見ることは、同じ海を見ていても違うのですね」

「難しいこと言うわね」

「でも、大事なことのような気がします」

 リヴィアは少しだけ笑った。

「じゃあ、その大事なことも持っていく。時計塔まで」


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