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ポンコツ海賊令嬢と人魚姫のドタバタ航海記――この恋、沈没寸前です!――  作者: 明石竜


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19/23

Voyage 19 人魚姫の歌、海賊少女の舵

 珊瑚宮への帰路、ミルフィナが甲板で歌っていた。

 儀式の歌でも、魔法の歌でもない。ただの歌だった。言葉があった。リヴィアには意味は分からなかったが、音が穏やかで、波に似ていた。

「何の歌?」

リヴィアが尋ねた。

「子どもの頃に覚えた歌です。海底では夕方に歌う歌で、一日が終わることへのお礼と、明日が来ることへの歓迎を歌っています」

「今は夕方じゃないわよ」

「夜明けでも、夕方でも、一日の区切りは同じだと思ったので」

「そうね。一区切りついたわね」

「はい」

 ミルフィナが歌い続けた。

 たこまるが肩の上で目を閉じていた。眠っているのか、聞いているのか分からなかった。でも、足を折りたたんで、丸くなっていた。それがたこまるの休んでいる姿だと、リヴィアはこの旅で学んだ。

 ネリネが手帳を閉じた。航路の計算が終わったらしかった。

 ピピが大砲の横で寝ていた。戦闘の興奮が抜けて、そのまま眠ったらしい。ベルが毛布をかけていた。ベルがそういうことをする人間だと、これもこの旅で知った。

「ローザが来る」

ネリネが伝えた。

 ヴァーミリオン号から小舟が来ていた。ローザが一人で乗っていた。シーラビット号の舷側に手をかけて、するりと上がってきた。

「少し話せる?」

ローザがリヴィアに言った。

「どうぞ」

 二人で船尾に移った。ミルフィナの歌が遠くで続いていた。

「冠の扱いについて」

「聞く」

「あたしは、冠の所有権を主張するつもりはない。最初からそのつもりだった」

「そう言ってくれるとは思わなかった」

「言ったでしょ、最初から。古代海図が見たかっただけで、冠を手に入れたかったわけじゃない」

「でも、星潮の冠を探していると言っていた」

「探していたのは本当よ。でも、探すことと手に入れることは別。あたしが求めていたのは、何があるかを知ること。知ったから、目的は果たせた」

「目的って何だったの、本当に」

「さっき言ったでしょ。自分が強くなる理由を探していた」

「見つかった?」

「あなたの言葉から、ヒントを貰った。あたしの理由は、まだ完全には見つかっていないけれど、方向は分かった」

「どんな方向?」

「守りたいものを探すこと。あなたにはもうある。ミルフィナと、この船と、乗組員たちと、自由に航海できる海。あたしには、まだはっきりしていない。でも、探す方向は分かった」

「ローザが守りたいものを探してる、というのは、少し意外ね」

「意外?」

「あなたは、自分が強ければじゅうぶん、というタイプだと思っていた」

「昔はそうだった。でも、それだけでは足りないと感じるようになった。何かがあった時に、強さの向かう先がないと、強さが空回りする」

「この旅で、それが分かったの?」

「分かり始めた。あなたたちを見ていて」

「わたしたちが、ローザに何かを教えたのね」

「教わったのか、気づかされたのか、どっちかは分からないけれど」

ローザはそう言って、少し笑った。

「認めるのは少し悔しいけど、この旅に関わってよかった」

「わたしも、ローザが来てくれてよかったわよ」

「珍しいわね、あなたがそう言うのは」

「言える時に言う。たこまるに教わった」

「そう」

「そうよ」

 二人で少し黙った。ミルフィナの歌が続いていた。

「一つ聞いていい?」

「いいわよ」

「ミルフィナが王宮に戻ったあと、あなたはどうするの」

「戻ったら、という前提?」

「王女だから、王国での役割がある。守護者として、冠に関わる責任もある。完全に船を出てしまう可能性はある」

「……ある。分かってる」

「その時、あなたは?」

「続けてる。航海を」

「ミルフィナなしで?」

「ミルフィナなしでも、この船は動く。わたしが選んだ航路を行く」

「寂しくない?」

「寂しい。でも、それはわたしの話で、ミルフィナの選択を縛る理由にはならない」

「言えるようになったのね、正直に」

「練習した。ミルフィナが、そういう人だから」

「影響を受けたのね」

「受けた」

「素直に認めるのね」

「認める。言える時に言う」

 ローザが笑った。

「あなたらしくない言葉を、あなたらしく言うのが、あなたの得意技になったわね」

「そうかしら」

「そうよ。嫌いじゃないわ、それ」

「ありがとう」

「どういたしまして」

 ローザが戻る前に、ミルフィナのそばに寄った。

「ミルフィナ」

「はい」

ミルフィナが歌を止めた。

「さっきの歌、聞いていた。いい歌ね」

「ありがとうございます」

「王宮でも歌える?」

「歌えます。でも、あまり聞かれませんでした」

「王国の外でも、歌えるの?」

「歌えます」

「なら、いつかどこかで歌うのを聞かせて。港町の人間にも、聞かせてほしいと思う」

「そういう日が来たら、ぜひ」

「来るといいわね」

ローザはリヴィアを見た。

「あなたが、来るようにするんでしょ」

「……そうなるといいわね」

「自信なさそうね」

「分からないから」

「でも、したいとは思ってる?」

「思ってる」

「なら、なる可能性が高い。根性があるから」

「根性だけじゃ足りない場面もある」

「でも、根性がないと始まらない。あなたにはある。それでじゅうぶんよ」

 ローザが小舟に戻った。

 リヴィアは見送った。

 たこまるが目を開けた。聞いていたらしかった。

「ローザは、いい奴だな」

「そうね。腐れ縁だけど」

「腐れ縁の方が、長い付き合いになることが多い」

「そうかもしれない」

 珊瑚宮に着いたのは、昼過ぎだった。

 セレナが出迎えた。

「お帰りなさいませ、ミルフィナ様。皆さん、ご無事で」

「ただいまです、セレナ」

「評議会の動きを報告します。オルカへの調査が正式に始まりました。宝珠の奪取が証拠として採用され、オルカの評議員としての資格が一時停止されました」

「動いたのね」

リヴィアが言った。

「ミルフィナ様の評議会での発言と、昨日の戦闘の結果が合わさって、評議員の過半数が動きました。女王陛下も、正式に声明を出す準備をされています」

「オルカは?」

「海溝での失敗のあと、私兵とともに確保されました。現在、珊瑚宮内で拘束されています。評議会の審問を待つ状態です」

「速かったわね」

「準備していました。ミルフィナ様が評議会で話したあとから、動ける者に声をかけていました」

「セレナが動いてくれたのね」

「私が正しいと判断したことをやりました。リヴィア船長、冠は」

「手元にある」

リヴィアは懐から取り出した。穏やかな光が、まだ続いていた。

「女王陛下が、お話ししたいとのことです」

「分かった。行く」

 女王との謁見は、昨日の広間ではなく、小さな部屋で行われた。

 女王と、リヴィアとミルフィナとたこまるの三人と一匹だった。

「冠を、見せてもらえますか」

 リヴィアが冠を渡した。女王が受け取った。光が女王の手の上で、少し変わった。揺れた。

「……反応しますね」

女王が言った。

「守護者の家系だから」

リヴィアが言った。

「そうかもしれません」

「冠の扱いを、どうするかは、王国と、それから人間側も含めて話し合う必要があると思います。わたしたちだけでは決められない」

「同意します。ただし、今日すぐに決まることではありません。時間をかけて、話し合う必要があります」

「時間がかかる話し合いに、わたしが関われる部分は少ないかもしれません」

「なぜですか」

「わたしは人間の海賊です。王国の政治に、関わる立場にありません」

「でも、冠の鍵のひとつです」

「……そうですね」

「関係がないとは言えません。リヴィアさんが関わらなければ、冠は応答しませんでした。それは事実です」

 ミルフィナが言った。

「でも、これからどうするかは、わたしが決めることじゃない」

「そうです。あなたが決めることではありません。でも、あなたに関わる話し合いをする時に、あなたの声が必要になります」

 女王が言う。

「声が必要な時は、呼んでください」

「珊瑚宮の招待状を送れますか。あなたの船がどこにいても」

「ミルフィナが船にいれば、届きます」

「では」

女王がミルフィナを見た。

「あなたはどうしますか」

 ミルフィナが少し間を置いた。

「しばらく、リヴィアさんの船にいます」

「王宮には戻りませんか」

「今は戻りません。でも、必要な時は戻ります。今日のように、話し合いが必要な時は来ます」

「守護者としての責任を、船の上から果たすと?」

「果たせると思います。守護者が王宮の中だけにいる必要はないと、時計塔の記録にも書いてありませんでした」

「……そうですね。書いていなかった」

「船の上から見える海の方が、守護すべきものが見えやすいと、私は思います」

「なぜですか」

「王宮の中では、海が遠かったです。でも、船の上では、海がすぐそこにあります。守護すべき海が」

 女王が、少し表情を動かした。笑い、とは違う。でも、柔らかくなった顔だった。

「分かりました。あなたの判断に従います」

「ありがとうございます、母上」

「ただし、定期的に連絡を入れてください。あなたが元気かどうかを知りたいのは、女王としてではなく、母としてです」

「はい。入れます」

「それと」

女王がリヴィアを見た。

「娘をよろしくお願いします」

「……よろしくお願いします、というのは、どういう意味ですか」

「そのままの意味です。娘が、あなたの船で元気でいられるよう、よろしくお願いします」

「……はい。任されました」

「任せます」


 部屋を出たあと、ミルフィナが言った。

「お礼を言わなければ」

「何のお礼?」

「任されてくれたことのお礼です」

「任されたわよ。重い責任をもらった」

「重いですか」

「重い。王様から、娘を任されたんだから」

「でも、受けてくれました」

「受けた。断る理由がない」

「本当に?」

「本当よ。断る理由が、何もない」

 ミルフィナが、声に出して笑った。

「何が面白いの?」

「嬉しいです。それが、笑い声になりました」

「……そう」

「はい」

「じゃあ、笑っていていい」

「ありがとうございます」

「おれにも、ついでに礼を言え。おれも任された形になっている」

「たこまるさんにも、ありがとうございます」

「どういたしまして」

たこまるが珍しく、すんなりと言った。

「素直ね、今日は」

「疲れている時は、素直になる」

「疲れた時だけなの?」

「……いつでも素直だ。ただ、疲れている時の方が、素直さが表に出る」

「どっちでもいいわよ。素直な時は、素直で」

「そうする」

 夕方、全員で食事をした。珊瑚宮の食事で、豪華だった。

 たこまるが料理を一品一品試した。

どれも「うまい」と言った。

「昨日も同じことを言いましたね」

ミルフィナが突っ込んだ。

「毎回言う。うまいものにはうまいと言う」

「素直ですね」

「素直だ」

 ピピが料理を次々に食べた。

「おいしいです!」と叫んだ。

「静かに食べなさい」

ネリネが注意した。

「でもおいしいので!」

「おいしくても、静かに」

「難しいです!」

「難しくても」

「……努力します!」

「努力してください」

 ベルが一品ずつ丁寧に食べていた。

 セレナが向かいに座って、最初は距離を置いていたが、たこまるが料理の話をし始めると、少しずつ会話に入ってきた。

「王宮の料理と、たこまるさんの料理、どちらが上ですか」

ミルフィナがたこまるに尋ねた。

「今は王宮の方が上だ」

「認めるのですか」

「認める。ただし、素材が違う。深海の素材を船の上で使えれば、差は縮まる」

「いつか、縮まりますか」

「縮める」

「楽しみです」

「では、機会を作れ。船が珊瑚宮に来る機会があれば、素材が手に入る」

「珊瑚宮に来ていいのですか」

「おれが来ていいかは、おれが決めることじゃない。女王陛下に聞け」

「母なら、喜ぶと思います」

「そうか。ならば、計画しよう」

「はい」

 食事が終わったあと、リヴィアは甲板に出た。珊瑚宮の外は、夜の海だった。深海なので、暗い。でも、珊瑚宮の光が周囲を照らして、柔らかい明るさがあった。

 ミルフィナが出てきた。

「一人でいますか」

「少しだけ」

「邪魔でしたか」

「邪魔じゃない。来て」

 二人で並んだ。

「明日、出発しますか」

「明日か、明後日か。セレナとの引き継ぎが終わってから」

「次は、どこへ行きますか」

「決めていない。ローザが深海図書館の古代海図を写してくれた。それを頼りに、新しい島を探してもいい。あるいは、しばらく港町でのんびりしてもいい」

「どちらがいいですか」

「どちらも悪くないわよ。あなたは?」

「どちらでも、リヴィアさんが決めた方へ行きます」

「それは、丸投げよ」

「丸投げではありません。どちらも行きたいので、どちらでも構わないのです」

「じゃあ、両方やりましょう。まず港町で補給して、それからローザの海図を頼りに動く」

「では、そうします」

「決まり」

 少し黙った。

「リヴィアさん」

「何」

「今日、母が言いましたね。娘をよろしくと」

「言った」

「その時、リヴィアさんが任されました、と言いました」

「言った」

「どんな気持ちでしたか」

「重い責任をもらったと言ったでしょ」

「それだけですか」

「……嬉しかった。正式にお願いされた、という感じがして、嬉しかった」

「正式に?」

「今まで、なし崩しで一緒にいた。あなたが乗ってきて、そのままになって。でも、お母さんから正式に頼まれると、ちゃんとした理由ができた気がした」

「ちゃんとした理由がなかったのですか、今まで」

「理由はあった。でも、言葉にするのが難しかった」

「今は言えますか」

 リヴィアは、少しだけ考えた。 

「ミルフィナがいた方が、この船が好きよ。それが、一番の理由」

「前も言いましたね。ローザとの言い合いで」

「また言った。何度でも言える」

「嬉しいです」

「毎回嬉しいって言う」

「毎回嬉しいので」

「そういうところよ」

「どういうところですか」

「思ったことをそのまま言うところ。好きよ」

 ミルフィナは、視線をリヴィアに向けた。

「リヴィアさん」

「何」

「今日、好きよと言いましたね」

「言った」

「昨日も、好きよと言いました」

「言った」

「おとといも、確か言いました」

「言ったかもしれない」

「増えていますね」

「増えてる?」

「最初の頃は、言いませんでした。最近、増えています」

「……練習の成果よ」

「誰かの影響ですか」

「あなたの影響よ」

「そうですか」

ミルフィナは嬉しそうな声で言った。

「また嬉しいって言う」

「嬉しいので」

「分かった」

「リヴィアさん」

「何」

「私も」

「私もって何?」

「私も、リヴィアさんのことが好きです」

リヴィアは、すぐには返事をしなかった。

 視線だけが、ミルフィナの顔に止まっていた。

「……そういうことを、さらっと言う」

「思ったことを、そのまま言いました」

「分かってる。でも、さらっとしすぎ」

「どのくらい間を置けばよかったですか」

「間の問題じゃなくて」

「ではどんな問題ですか」

「……こっちの心の準備の問題よ」

「準備ができた時に、もう一度言いますか」

「……今聞いた。今聞いたわよ」

「では、受け取ってもらえましたか」

「……受け取った」

「ありがとうございます」

「礼を言うのはわたしの方よ」

「なぜですか」

「受け取れたから」

「受け取れることは、当然ではないのですか」

「当然じゃなかった。少し前のわたしなら、受け取れなかった。見たいように見ていたから、向き合えなかった」

「今は向き合えますか」

「今は向き合える。あなたのおかげで」

「お互いのおかげです」

「そうね。お互いに」


 たこまるが甲板の端から言った。

「おまえら、いつまで外にいる。夜は冷える」

「もう少しだけ」

「もう少しが長くなる。おまえらのもう少しは信用できない」

「分かってる。でも、もう少しだけ」

「……好きにしろ」

「ありがとう」

「礼を言うな」

「言う」

 たこまるが黙った。言い返さなかった。それがたこまるの、了承の仕方だと、リヴィアは知っていた。

 二人で夜の海を見た。珊瑚宮の光が、周囲を照らしていた。深海の暗さの中に、光の輪がある。その中に、シーラビット号が浮かんでいた。くたびれた船体が、光の中で、少しだけ綺麗に見えた。

「ねえ、ミルフィナ」

「はい」

「出発したら、海の聞き方を教えてくれる約束があったわよね」

「ありました」

「あと四回、残ってる」

「残っています」

「出発してから、教えて」

「はい。夜、甲板で」

「夜でなくてもいいわよ」

「夜の方が、波の音がよく聞こえます」

「そうなの?」

「昼間は風の音が混じります。夜は、波の音だけになります」

「では、夜に」

「はい」

「約束ね」

「約束です」

 海が静かだった。深海の、深い静けさだった。

 でも、静かなだけでなく、穏やかだった。星潮の海溝の前とあとで、何かが変わったのかもしれない。あるいは、変わっていないのかもしれない。でも、穏やかに感じた。

「行きましょうか」

「そうね。明日は早い」

「明日、何時に起きますか」

「日の出と同時に」

「では、私も同じ時間に起きます」

「一緒に起きるの?」

「日の出を、一緒に見たいです」

「……じゃあ、一緒に見ましょう」

「はい」

 船室に向かった。

 たこまるが後ろについてきた。

「たこまる」

「何だ」

「今日、おかえりって言われたの、嬉しかった?」

「……普通だった」

「本当に?」

「……少し、嬉しかった」

「正直ね」

「疲れている時は素直になると言っただろう」

「疲れてるの?」

「少し疲れている。だから正直になった。明日には戻る」

「明日も正直でいていいわよ」

「うるさいな」

「うるさくない」

「……うるさくはないが、くすぐったい」

「我慢して」

「……我慢する」

 船室の扉が開いた。中は暗かった。

 ミルフィナが先に入った。

「おやすみなさい、リヴィアさん」

「おやすみ」

「たこまるさんも、おやすみなさい」

「……おやすみ」

 扉が閉まった。

 リヴィアは自分の部屋に入った。たこまるが船長帽の中に潜った。

 静かだった。

 深海の静けさで、波の音もない。珊瑚宮の光が、窓から少しだけ入ってきていた。

 リヴィアは横になった。

 今日までにあったことを、順に思い返した。海溝に入ったこと。オルカとの対峙。たこまるが海中に入ったこと。冠が応答したこと。女王に任されたこと。

 それから、ミルフィナの言葉。

 私も、リヴィアさんのことが好きです。

「……受け取った」と小声で言った。

 たこまるが帽子の中から言った。

「聞こえた」

「聞こえた?!」

「聞こえた」

「黙っていて」

「黙っている。ただ、聞こえたことは伝えた」

「余計なことを言わなくていい」

「言わない。ただ、聞こえた」

「……」

「おやすみ、リヴィア」

「……おやすみ、たこまる」

 珊瑚宮の光が、穏やかに揺れていた。

 波の音がなくても、穏やかだった。

 リヴィアは目を閉じた。


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