延長戦
一昔前の話。
(このままだと、本当にまずいぞ)
あるアニメ会社の男が頭を抱えていた。
この会社は今年、三〇分のテレビアニメを週に一本つくっている。
ところが、かなり前からスケジュールが「激務」だ。夏休み最終日の小学生と、良い勝負ができるかもしれない。ああ、一日が四〇時間くらいあれば・・・・・・。
総集編を挟んで誤魔化そうにも、それは二週間前にやったばかりだ。
あまり期間があいていないのに、また総集編というのは避けたい。「総集編の再放送かよ!」とか、心ないファンに文句を言われてしまうかも。
男は深くため息をついた。
現場は本当にがんばってくれている。ここ数日は不眠不休、そんな者も少なくない。
――ゆっくり休んでいいよ。あとは大丈夫だから。心配しなくていいから。
今すぐそう言えたなら、どんなに楽だろうか。このままでは、とてもじゃないが最終回まで現場がもたない。
たった一週間でいいのだ。一週分の放送がなくなるか、または、テレビ局に納品する「しめきり」が一週間延びてくれれば、状況はいくらか好転するはず。
そこで男は気づいた。
(そういえば・・・・・・)
たしか来月に、プロ野球の日本一決定戦がある。
あれは試合終了まで放送するはずだ。それが原因で、うしろの番組が遅れたり、次週に延期されることも・・・・・・。
「これだ!」
調べてみると、ちょうどあった。日本一決定戦の第三試合だ。
テレビ局に確認してみると、この日の試合が一時間三〇分以上の延長になると、アニメは次週に延期されるらしい。そのあと最終回までの各話が、一週間ずつ予定よりも遅れて放送されることになるとか。
つまり、納品の「しめきり」が延びる! そうなったら、現場に休みをとらせることができる!
(ああいうのは、だいたい延長するものだし。いけるぞ、一時間三〇分くらい。その試合に出るプロ野球選手のみなさん、がんばって。長ーい試合になることを本気で祈っている、そんな者もいるんです)
これで気が緩んでしまい、男は眠りに落ちた。
三日ぶりの睡眠である。
次回、優勝決定間近?!




