お見舞い①
第7話
学校を休んで5日目。
学校では有栖を心配する声がだんだんと増えてきていた。
普通一週間も休むとなれば、事故やインフルエンザにでもかからない限り、そうそうあることではない。
ましてや何の前触れもなく、休む理由を「筋肉痛です」と言われて、「そうですか、大変ですね」とはならない。
いやでも、50m走っただけで三日も休むくらいだし。
それ以上の事をしたんじゃないか。
それ以上の事ってなに?
いや、本当は事故に遭ったけど、心配させないように筋肉痛って言ったんじゃないか。
クラスメイトは、様々に有栖の休んだ理由について予想をたてた。
一週間休むくらいの事が起きれば、誰かしらがお見舞いにでも行こうかと切り出してもいいくらいだ。
いや、実際はお見舞いの話が出ていたのだが、休む理由が本当の事なのか、それとも何か内緒にしたいことがあるからやめた方がいいのでないか、と踏み入れてはいけないものがある気がして誰も行けないでいたのだ。
しかし、それも皆限界にきていた。
「本当の事を知りたい」
なんだかんだ言っても、つまりはそういう事だ。
でも自分が行くのは嫌だ。
そういうものだ。
東雲も、皆が知りたいと思っていて、でも休んで5日目ともなると、皆「自分が行く」とも言いづらいというのわかっていた。
「今日、僕お見舞いに言ってくるよ。なんか伝えておくことあるかな?」
帰りのHRも終わり、皆が帰ろうとする頃、東雲が口火を切った。
周りが本当のことを知りたいという好奇心の限界にきているように、それを誰も言い出さない状況に我慢の限界がきていた。
「ようやく決心がついたか~。皆お前がそう言うのを待ってたんだよ~」
生田が茶化すように言ってきた。
「ちょ、何言ってんだよ!?」
「冗談だよ!でも誰かお見舞いに行ってやんないとな!昔から知ってるお前が行けば、きっと喜ぶぜ!」
「おい、からかうなよ!昔からって、中学が一緒だっただけだし!」
「そう照れんなって!クラスの皆心配してるって言ってきてくれよ!あ、おれも心配してるってのもな!じゃ!よろしくー!」
生田は何か用事でもあるのか、そそくさと帰って行った。
他のクラスメイトにも「お願いね」と言われ、結局お見舞いに行くのは東雲一人だった。
東雲から有栖の家までは遠回りをして行くようになるが、中学校が同じだっただけに他のクラスメイトに比べたら断然近い方だった。
先生に教えてもらった住所をスマホにいれ、ナビをしてもらいながら向かい、家まで迷わずに着くことが出来た。
ピンポーン
「はいはいはい、ちょっと待ってくださいねぇ」
玄関の前の、昔ながらの呼び鈴を鳴らすと、家の中からドタドタという足音と、おばあちゃんらしき人の声が聞こえた。
ガラガラ
「はい、どちら様?」
「あ、有栖さんのクラスメイトの東雲と言います。先生に様子を見てくるように言われて来たんですが・・」
東雲はお見舞いというのはなんだか言いづらく、ちょっとした嘘をついたが、先生に住所を聞いた時に「じゃ、様子見てきてくれな!」と言われたのは確かなので、そう言うことにした。
「あらあらあら、陽葵の為にわざわざ!あらあら、さっさっ、中にどうぞ!」
「あ、もし寝てたりとかだったら起こさなくても大丈夫ですので」
「さっきちょうど起きてたから大丈夫だと思うけど、ちょっと言ってくるから、ここで待っててね!」
おばあちゃんは、自分が来たことに驚いた様子だったが、なんだか嬉しそうにしてくれているようにも見えて、東雲も来て良かったとちょっとホッとした。
少しの間待っていると、ドタドタドタと足音がしておばあちゃんが戻ってきた。
「あの子起きてたから、さっさっあがって」
「あの、これ。ちょっとしたものしか無いんですけど…」
「あらあら、わざわざこんな!ありがとね!あとで切って持ってくからね!さっ、あの子の部屋はこっちだから」
手ぶらで来るのも何だし、と思い途中のスーパーでリンゴやバナナ、お茶を買ってきていた。
おばあちゃんに連れられ2階にあがり、有栖の部屋の前に来た。
おばあちゃんが部屋のドアを開け、中にいる有栖に声をかけた。
「来てくれたよ。入ってもらうからね」
「う、うん」
中から有栖の声が聞こえた。
「さ、どうぞ。あとでもらったりんごとバナナ、切って持ってくるからね」
そう言われて東雲は中に入り、有栖と東雲は二人きりになってしまった。




