深まる疑問
第6話
有栖は朦朧とする頭で考え続けていた。
扉が開くときにお待ちしていましたと言われた理由や、自分宛にバドミントンのユニフォームとラケットが置かれていた理由。
なぜそのユニフォームを着たら自分の運動能力以上の力が出たのか。
あのユニフォームにはどんな秘密があるのか。
布団の中で様々な疑問が浮かんできては、答えが見つからないまま疲れ果て、寝て起きては考えてを繰り返していた。
今までで一番重傷な状態の有栖を見て、おばあちゃんは心配でたまらない様子で必死の看病を行っていた。
三日目までは、なかなか熱が下がらなかったが、四日目には落ち着きはじめ、会話ができるようになった。
おばあちゃんは看病している間、ずっと聞きたかったことを聞いた。
「あんた、一体あそこで何があったんだい?」
あの日、地下室から戻ってきた有栖はなぜかバドミントンのユニフォームを着てボロボロになっていた。
それについての答えをまだ聞けていなかった。
「私にも、よくわからなかった。地下室に私宛の箱があって、その中にバドミントンのユニフォームがあって、それを着たらジャンプしたり壁にぶかったり…」
「なんだいそれは?ユニフォームを着たらジャンプしたりって、あんたが自分で跳んだんじゃないのかい?」
「自分でジャンプしようなんて思ってなかった。体が勝手に動いたの」
「勝手に?陽葵宛の箱って言ってたね。誰からだったんだい?」
「誰からかはわからない。でも、たぶんお父さんとお母さんからじゃないかな…。始めは私が運動神経悪かった時の為に、これ着て頑張れって言いたかったのかと思った。」
「あの子らが残したもの?あの子ら、そんな危ないものを残してたのかい…」
有栖はありのままを話した。
「わかんない。私がよく知らないまま着ちゃったのがいけなかったのかも。でも、サイズピッタリだったな。なんでサイズわかったんだろ」
「そりゃ、あんたの母親は今のあんたと同じくらいの背丈だったし、同じくらいに成長すると思ったんだじゃないかい?」
「そっかぁ。そうだ、おばあちゃん。私、あの部屋に自分の服置いてきちゃった。取りに行ってもらえないかな。私、まだ動けそうになくて…」
「取りに行くのはいいけど、あたしじゃ入れないでしょ?」
「これ持って行けば入れると思う。」
そう言って、枕元に置いてあった読み取り機に目配せをした。
「待って、おばあちゃんが入れるようにするから。あ、私のパソコン取ってくれないかな?」
「パソコン…これかい?はい」
「いたた…ありがと。おばあちゃんの名前と生年月日いれれば大丈夫だと思うんだ。えっと…」
カチャカチャカチャ
筋肉痛の腕を布団から出してパソコンに情報を打ち込んだ。
布団に横になりながら、パソコンにおばあちゃんの名前と生年月日を入力した。
「はい、これで大丈夫だと思う。扉の横の壁にこれを近づけて。ピピッて音が鳴るから。そしたら中に入れると思う。」
「扉の横の壁に近づけるのかい?それで開くのかい?仕組みはよくわからないけど、なんだかすごいねぇ」
おばあちゃんは有栖とは違い、こういうことには疎いようだ。
「じゃあ行ってくるね」
そう言って地下室へと向かった。
「おばあちゃんが地下室の中見たら、何かわかることあるかなぁ。あ、そう言えば部屋の中すごく散らかしたかも!中の物、何か壊れたりしてないといいけど…」
そんな独り言を言っていた数分後、おばあちゃんが戻ってきた。
「あ、おばあちゃんお帰り。私の服あった?」
「あったも何も、入れなかったよ!」
「えっ?壁にそれあててピピッって鳴らなかった?」
「鳴ったよ!ピピピピピーって!ビックリしたけど、これで開いたのかと思って扉開けようとしたけど開かなかったよ」
「え、そんな…。おばあちゃんの名前と生年月日間違えてないし、なんでだろう…」
「知らないけど、陽葵しか入れないんじゃないのかい?治ったら自分で行ってきてよ。機械物は苦手だわ…」
「うん、わかった。ごめんね」
「怒っちゃいないよ。ビックリしただけさ。まぁ、あんたがそんだけしゃべれるようになったんなら安心だ。おばあちゃんはテレビでも見てくるとするよ」
「うん、ありがとね、おばあちゃん」
そう言っておばあちゃんは居間へ向かった。
「どうして開かなかったんだろ…」
有栖にとって、また一つ疑問が増えた。




