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リストバンドと空間モニター

第13話


作業は夜まで続いたが、東雲は、あんまり夜遅くまでいてはいけないとおばあちゃんから言われ、途中で帰った。


有栖はその後も一人で作業を続けた。


次の日、有栖の頼みで午前中から東雲は作業の続きを手伝う為、有栖の家に来て手伝いをすることになった。


そして、会うなり有栖が言った。


「東雲くん!!出来たよ!!!」


「え!?出来た!?」


「うん!!!」


「え、出来たって、昨日の今日じゃん!?」


「うん!完成じゃないけど、だいたい出来た!見てみて!」


なんと有栖はたった一晩でユニフォームを改造してしまった。


しかもユニフォームの改造だけでなく、空間モニターまで作ってしまったようだ。


昨日、東雲は手伝うと言っても機械ものに特別強いわけではなく、作業を始めた有栖に当然のごとくついて行くことが出来ず、早々に手伝いを諦めていた。


しかし、有栖には手伝ってほしいことがあった。


「え、こ、こうすればいいかな・・?」


「うん!そうそう!そのままで!・・じゃあ次はちょっと動いてみて!」


東雲は、有栖に言われるまま、バドミントンのプレーを、止まったり動いたり指示され、動画や写真を撮られていた。


ちょっと恥ずかしい気持ちを持ちながら撮影がスタートしたが、途中慣れたせいか、スマッシュを打つ瞬間に「はっ!」と声をだすなど、ノリノリになる場面もあった。


楽しい撮影も、数時間も続けば東雲は疲れ果て、最後の方は絞ったまま乾いた雑巾のようになっていたが、有栖は元気だった。


そんな苦労が報われたのか、有栖がたった一晩で空間モニターを作ってしまったのだ。


この空間モニターのすごいところは、何も無いところ、例えば何も置いていない体育館に、バドミントンのネットやコートを映し出すし、相手まで映し出してしまう。


モニターで映し出されたシャトルを使って、この相手と実際の対戦をすることが出来る。


自分が打ったシャトルに相手が反応し、本当に対戦している感覚になれるのだ。


しかも、この対戦相手は選ぶことが出来る。


あらかじめ撮影したり、データとして取り込んだ相手なら、その人本来の強さや動きのクセなどを再現した状態で対戦が可能になるのだ。


つまり、YouTubeなどに動画が投稿されている選手や、オリンピックの金メダルリストと対戦をすることも可能ということだ。


まさに夢のようなモニターだ。


それを、有栖はたった一晩で作ってしまったというのだ。


「さすがにちょっと寝不足だけど」


と有栖は言っているが、いやいや、寝不足程度で作れてしまうことに驚きだ。


昨日、東雲が、体力を搾り取られるまで撮影に付き合わされたのは、これの為だった。


この空間モニターを、昨日二人でバドミントンをした場所で使ってみようと、二人で庭へ移動した。


庭のちょうど良さそうな場所を選び、地面に空間モニターを置いて作動させた。


ヴンッ


重い音がして、目の前にバドミントンのネットが現れた。


「うわっ!本当にネットが出てきた!!コートもある!!しかも、僕までいる!!」


「やった!!うまくいった!!」


「すごい!!本当にここにネットがあるみたいだ!これを一晩で作ったなんて、信じられないよ!!」


「えへっ!でも、やっぱ昼間だから光がちょっと弱いかな?えっと、ここで調整してっと・・」


このモニターの投影には、光によるもののようだ。


しかし、プロジェクターのように機械からスクリーンに光をあてるようなものではなく、コートなどの一定の範囲をモニター自身が覚え、コートと同じ広さの光による膜を作り出し、この膜の中にある光がそれぞれ色を映し出すことによって映像が現れる仕組みになっている。


光の膜の中で光が反射している為、モニターの周囲に多少の障害物があっても影で映像が消えるようなことは無い。


「ねぇねぇ!ちょっと僕やってみていい!?」


「うん、もちろん!」


「うわぁ、自分と対戦とか初めてだなぁ。緊張する!」


東雲は、初めての自分との対戦に頭の中では困惑していたが、未知の体験というのは、この困惑が楽しいものだ。


「あっ!あっちも動いた!!」


この光で出来たコートの中では、対戦の意思を示すと、相手もそれを察知し試合を始める流れになる。


シャトルは、持っている感覚こそ無いが、リアルに持っているかのように指の動きに合わせて羽が動いている。


「僕の準備はいいよ!東雲さん、何か始めの合図お願いできるかな?」


「うん、わかった!えっとね、こういう時って何て言うのかな・・。えっと、じゃあ・・よーい、どん!!」


「そ、それは違うんじゃないかと思うけど、まあいいか。えいっ!」


パシッ


シャトルを打った音まで再現されたが、ラケットにはシャトルを打った時の小さな振動まで再現されていた。


東雲の動きに合わせて敵東雲も動いて打ち返してきた。


本体東雲もそのシャトルを追い、打ち返した。


同じ人間同士の戦いの為、拮抗した打ち合いになったが、なんとか本体が打ち合いを制した。


「はぁはぁ。これ、すごいね・・!!あれ、昨日有栖さんがずっと撮ってた映像でしょ?」


「そう!東雲くんに頑張ってもらったから、いろんな動きができるようになってたね!」


「いやぁ、こんな風に出来るんだね。すごいや!」


「いろんな動き撮影させてもらったから、撮影してないような動きでもある程度は本人っぽく動いてくれるようにしたんだ!じゃあ次は、私もやってみようかな・・」


「うん、やってみてよ!自分のこと客観的に見てみたいし!」


「うん、それじゃ・・」「


そう言ってコート内に入りながら、右手につけていたリストバンドを回した。


「東雲くん、合図お願いします」


「うん!それじゃあ・・始め!」


「えいっ!」


パシッ


有栖のサーブから始まった。


パシッ


パシッ


お互い互角の打ち合いが続いた。


「えいっ!」


パシッ


敵東雲の打ち損ねで、ネット際にポーンとあがったシャトルに、タイミングを合わせて打ったスマッシュが見事に決まった。


「やった!勝った!」


「勝ったって・・。まだ1ポイントしか取ってないよ」


「あっそっか・・!バドミントンって何点取るの?」


「え?えっとね、確か、21点で1ゲームで、2ゲームを取った方が勝ち、じゃなかったかな?」


「えっ、バドミントンってそんなにやるの・・?」


「そんなにって・・。この前の動画見て知ってるものかと」


「・・ごめんなさい。点数まで見てなかった」


「いや、謝ることじゃないよ。それより、さっき始める前にリストバンド回してたね!もしかしてそれが?」


「あっ、気づいた?そう!これがユニフォームの改良版!!リストバンドだけでユニフォームを着た時と同じ効果が出るようになったの!」


「それだけでいいんだ!って、それをたった一晩でって、何度聞いてもすごいなぁ。あ、でもこの前みたいにはならなかったね」


「うん、動きの強さも変えられるようにしたんだ!10段階で変えられるようにしたんだけど、うまくいってよかった!」


「強さも変えられるんだ!今のは僕といい勝負って感じだったけど、今のは10段階中でどのくらいだったの?」


「え?」


「今のは、10段階中でどのくらいだった?」


「えっと・・、1・・です・・」


「あっ、そ、そう・・」


「ごめんなさい・・」


「い、いや、聞いたのは僕の方だし・・!ははっ、そう、だよね・・!あぁ!そう言えば、僕の他にも対戦相手っているのかな!?」


「う、うん。まだうまくいかないと思うんだけど、いるよ」


「へぇ、どんな相手なの?」


「えっと、高橋さんと、松友さん・・」


「え?誰?」


「高橋さんと、松友さん・・。オリンピックの・・」


「それって・・タカマツペア!?金メダル取った人たちがいるの!!??」


「うん、せっかくならと思って・・。ダメだったかな?」


「いやいやいや!ダメってことはないけど、いきなり金メダル取った人を選んじゃうとか、発想がすごいなぁ・・」


「このユニフォーム・・じゃないか、リストバンドを使うとどのくらい強くなれるか知りたかったから」


「そっか!そうだね!それはすごい気になる!今できるの?」


「うん、相手を変更すればできるよ!・・ほら!」


ヴンッ


「ほ、ほんとだ!タカマツペアだ!すごい!!」


「いろんな動画からデータ取っただけだから、まだ映像は荒いけど・・」


「いや、でもすごいよこれ!試合、早く見てみたいな!」


「うん!それじゃあ、やってみるね・・」

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