ゲコサマガエルの唐揚げ
リンナさんのキャラが若干崩壊気味
町にたどり着くと思ったより賑やかな町だった。
人がわいわい賑わっていたり酒を飲んで陽気そうに笑う人達で溢れていた。
「へえ、思ってたよりいい感じの町だな」
町の中を4人で闊歩していると隣にいたエルドが楽しそうに呟いた。
「そうだね、こういう雰囲気嫌いじゃないよ僕は」
「尚也もそう思うか? だよなー!」
「はん、こんな下民の戯れを見て何が楽しんだか」
それに対極してリンナは不機嫌そうだった。
横を向いて苛立たしそうに歩いている。
そうだリンナはアステルド国のプリンセス。
こういうのは初めてだったりするのかもしれないな。
「リンナさんがここにしようって言ったんだろ」
「わかってるわよそんなこと。ていうか酒臭い! 早く静かなところに行きたいわ」
「リンナさーん、ララはこの雰囲気新鮮味があって好きですう」
「何よみんなして私を仲間外れなの!」
まさかのリンナアウェイだった。
リンナはぷりぷりと怒ってしまう。
「まあまあ、落ち着きなってプリンセス。これでも食って元気出せよ」
エルドがいつの間にか夜店で買ってきたらしい唐揚げ(何のだろう?)の串を差し出した。
リンナは見た途端に怪訝な表情を浮かべた。
「い、要らないわよそんなの。まず食べ物なのそれ」
「ゲコサマガエルの唐揚げ。結構うまいぞ」
カエルの唐揚げかー。正直僕のいた世界でもあったっちゃあったけれども進んで食べるものじゃないので当然食べたことがない。
リンナも然りのようだな。
確かにアンキロステラ王国の王族の食事を複数回食べたがどれも高級料理と言えるものばかりだったな。
つまりリンナは王宮の食事しか食べたことがないのである。
食わず嫌いってやつだな。
「ゲコサマガエルってあの醜い雑魚モンスター? 無理! 私には食べれないってば!」
「おいおいプリンセスこれからの旅もこういう物を食べていかなきゃなんないんだぜ? これぐらい食べれないと」
「くっ! 何よ、エルなんとかのくせに生意気よ! いらないってば!」
珍しくエルドが優位に立っていた。
昼間の時とはえらい差である。
必死にリンナが抵抗する中で急に
ぐ~と可愛らしい音が聞こえた。
「っ!!」
リンナが顔から火が出るくらいに真っ赤になって下を俯いた。
どうやらリンナはお腹がすいているようだ。
当然その隙を逃すエルドでは無かった。
「おや、今何か腹の音のようなものが・・・・・・?」
「う~~~~」
リンナが可愛らしく唸っていた。
なにこれすげー可愛い。
さらにエルドが追討ちをかける。
「誰かな~~ここら辺で聞こえたような~~」
まで言ったときリンナは無言でエルドの串を奪い取り一気に口に含んだ。
リンナまさかの敗北!
やはり食欲には勝てなかった!
最初は泣きそうになりながらもぐもぐと咀嚼していたリンナだがその表情が徐々にほころんでいく。
最終的にはにへらと幸せそうに笑顔を浮かべた。
「美味しかっただろ」
エルドがニヤニヤしながら尋ねるとリンナははっとしてすぐに表情を元に戻した。
「べ、別にっ美味しいとか思ってない!」
「あっそう、残念。もう一本あるんだけどな~」
「えっ! 欲し---なんでもないわよ馬鹿!」
リンナがぽかぽかとエルドを叩いていた。
ああもう可愛すぎる、普段とのギャップがやばいって。
隣のララも「リンナさんをペットにして愛でたいですう」ととろけるような表情をしていた。
「悪かった悪かった! はい、あげるから許して? な」
エルドが差し出した串を少し迷った様子を浮かべてからそっとその串を受け取り美味しそうに口を動かしていた。
いいなあ美味しそうだな。
「エルド僕も食べたいそれ」
「ララはむしろリンナさんを食べちゃいたいですう」
「と言うと思って買ってきておいたぞ。ほれ! ララに関しては我慢しろの一択で」
ララの変態発言を流しながらもエルドは僕とララに串を1本ずつ差し出してくれた。
すぐに口に咥える・・・・・・と、口の中でジューシーな肉汁が溢れ出す。
カエルは鶏肉のような味わいだと聞いていたがこのカエルはそれ以上だ。
「うまっ!!」
「はうっ! ララ感動しちゃいそうですう!」
僕とララが美味しそうに頬張るのを見て「そうだろそうだろ」とエルドが嬉しそうに頷いていた。
「尚也は異世界から来たんだったな。この世界の飯もいけるだろ?」
「うん、王国で食べてた時から美味しいと思ってたけど個人的には庶民的な味の方が好みだよ」
あまり高級料理という料理は食べてこなかったのでこの唐揚げの方がしっくりきた。
これは文句なしに星5つあげられる。
「ララもリンナさんと一緒で食べたことなかったですけど美味しいですう」
ララは感極まった様子でぱくぱくと平らげていた。
そういやララも王国の城に住んでたよな? リンナとどういう関係なのだろう?
なんとなく疑問を抱いたので尋ねてみるとララは笑いながら
「知らなかったんですか勇者さん。ララはリンナさんのいとこにあたるんですよ。勇者さんが来るのをずっとあの城で待っていたんですう」
「そうなんだ。でも親御さん達に別れの挨拶しなくてよかったの? いなかったみたいだけど」
その言葉を聞いてもララは変わらず笑顔のままで。
「ララの両親は殺されましたよ、勇者さん」
いつもと変わらないニコニコとした笑顔でララは言った。
一寸も変わらない笑顔で。
本当に見事なくらいに笑顔で。
なぜどうしてこんなにも表情一つ変えないでそんなことが言えるのだろう。
強烈な違和感に飲み込まれそうになる。
「っ! そんな話ここでしなくていいじゃない! ねえ、それより皆もっと他の夜店で食べ歩きましょうよ! ねえララ!」
「そーですねえリンナさん! ララもっと美味しいもの食べたいですう!」
リンナが慌てた様子で取り繕い、提案する。そしてララは何事も無かったようにリンナの袖を嬉しそうに掴んでいた。
その後ろでエルドに小声で話しかける。
「ねえ、ララって一体・・・・・・?」
「聞くなよ、俺にもわからないんだから」
エルドは複雑そうな表情を浮かべ、頭をポリポリと掻いた。
「まあきっと色々辛いことを経験したのは間違いないだろうな。かわいそうにまだ幼いのに」
リンナがこっそりとこちらの会話の様子を伺っていた。
リンナはこちらの視線に気づくとすぐに前を向いてしまった。
----ララはいつも明るくて活発でハキハキとしていて。
でもそれがもし。もしかすると・・・・・・
いや、やめだこんなことを考えるのは。
これはララが話すべきときに聞けばいいだけの話。
いつも通り接してやればいいのだ、それだけだ。
簡単なことだ。それがきっとララのためにもなるはずだ。
「お兄さんと勇者さん! 早く来ないと置いていきますよお!!」
元気よく叫ぶ少女の声に僕たちは返事してからすぐに彼女の小さな肩を追った。




