第52話 冒険者の戦い方と魔石持ちの攻略
「ウォオオオオオオオン!!!!」
フォレストウルフの遠吠えが響く。遠吠えに合わせ、腰を下ろすフォレストウルフ。クレアは地面に叩きつけられる瞬間身をよじり、フォレストウルフの下から転がり出た。
遠吠えに呼応するかのように先に続く3つの穴からも複数の遠吠えが聞こえた。まだ距離は遠そうだが、これはかなりヤバイかもしれない。
フォレストウルフは立ち上がり、よちよちと真ん中の穴に向かって、戻り始める。
若干後ろ脚が内に向いている気がする。クレアは、はっとする。
「私の剣!!」
アルトとモックが止める間もなく、クレアはフォレストウルフに刺さった剣に飛びつき振り抜いた。
「ウォッホォオオオオオオオオオオオオッ!!!」
血しぶきが上がり、フォレストウルフはのたうち回る。図らずもアルトの練り上げた魔力の真下で静止する。アルトは一言つぶやいて、フォレストウルフの頭に特大のアイスボールを落とす。
「ゴメン……」
フォレストウルフはキラキラと光の粒子となり姿を消し、そこには1粒の魔石が残った。『魔石持ち』はどうやら死骸も残らないようだ。アルトは魔石を拾い上げた。その瞬間叫んだ。
「フォレストウルフ5体以上、接近中!!逃げよう!!!」
来た道を猛ダッシュで戻る。すぐに、5人の冒険者たちがこちらに向かって歩いているのに気付く。
3人はてんでバラバラに叫ぶ。
「フォレストウルフ5体!」
「逃げないとヤバイッスよ!!」
「あのね!あのね!!」
一瞬、ポカンとした冒険者たちだったが、すぐに奥からの気配を察知したらしく、アルトたちに続いて逃げる。というか、3人を追い越して逃げ去った。そりゃそうだ。6歳児2人に盾を持ったタンクよりも遅いわけがない。
出口を抜けると、5人が待っていた。
「あいつら、ピンチになると、仲間を呼ぶから厄介だよなぁ」
人の良さそうな冒険者だった。
3人は息を切らし、ろくに返事もできない。
5人は苦笑いをして、改めて迷宮に入っていった。
少しして、アルトはついて行ってみることを提案する。
他の迷宮探索者がどう戦うのか、興味が湧いたのだ。3人はまた、迷宮に入る。先ほどの開けた場所でまさに交戦中であった。
白く光るロープのようなもので、フォレストウルフは地面に押さえつけられていた。
そこに魔術師がマジックアロー、マジックミサイルなど、見たことがない魔術で攻撃を加える。
自分たちでは傷1つつけられなかった毛が焼け焦げる。
アルトはコレだと気付く。無限袋に手を突っ込み、小声で詠唱を始める。
「万象を司る魔力の神よ。我が魔力を糧として、原始の魔力を此処に顕現せよ。マジックボール」
魔力を糧として魔力を顕現するって、どういうことだろうと不思議に思う。が、使えれば何でも良いのだ。どうせ詠唱なんてそのうちしなくなる。
戦闘は続く。どうやら毛が薄くなったところは攻撃が通りやすいらしく、剣を持った連中が躍りかかる。攻撃が通り、血しぶきが上がる。
フォレストウルフが暴れ、光のロープの拘束が解ける。振られた首に激突し、壁まで飛ばされ、背中からぶち当たる。
しかし、即座にヒールが唱えられる。
そこで、クレアがつぶやく。
「なんか……冒険者っぽいね」
目を輝かせて見ているのかと思えば、クレアの様子は冷ややかだった。クレアは続ける。
「ねぇ、アルト。私たち、もっと上手くやれるよね?」
アルトは答える。
「うん……でも、もうちょっと待って。やっとマジックボールが無詠唱でできるようになったところなんだ」
フォレストウルフを何とか倒し終えた冒険者たちは装備の点検を終え、奥へ進んでいった。
そこでアルトが言う。
「いいよ、準備できた!迎え撃とう!!」
モックは少しげんなりした顔をしている。
それはそうだ。さっき、どれだけフォレストウルフの攻撃を受け流したか分からない。
モックは疲れきっているはずだ。アルトはそれを察し、モックに言う。
「大丈夫!次はそんなにかからないよ!」
広間の真ん中で、クレアは座り込んでいる。最早、アルトとクレアはリラックスしきっていた。モックだけが緊張の面持ちで辺りを見回している。
アルトが言う。
「2体来るよ!モック頑張って!!」
「ええ!!2体!?撤退じゃないんッスか!?」
速いのだ。強いのだ。モックは軽々と受け流しているように見えて、真剣なのだ。ガンッ、ゴンッ。1匹目、2匹目と何とかいなしきる。モックは青い顔をしている。アルトが言う。
「もういいよ!」
2体のフォレストウルフの首には、まるで真珠のネックレスのようにマジックボールの首輪が掛かっている。
「クレア!よろしく!!」
首輪が締まり、毛が焼け焦げると同時にクレアは2体のフォレストウルフの首を切り落とす。
アルトが宣言する。
「『魔石持ち』のフォレストウルフ、攻略完了だね!」
2体のフォレストウルフは光の粒子となって消える。
しかし、今度は魔石が残らない。モックが説明をする。
「魔石が手に入るかどうかは運次第なんでさぁ」
クレアが言う。
「そっかぁ、次は手に入るといいね!」
モックは驚く。
「次!?」
結局、その日は延々と『魔石持ち』のフォレストウルフを狩り続けた。




