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Fランク魔術師がゆく~才能無くても世界最強~  作者: キズキ
ポルケ村編 第4章:冒険者のリアルと、少年の旅立ち

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第49話 6年前の悲劇と迷宮への誘い

結果的には『魔石持ち』は見つからなかった。

アルトたちが元の位置に戻ってきた後、次々に他のパーティーも戻ってきた。

結局、何の成果もないまま、また30人でぞろぞろと冒険者ギルドまで戻った。

まずは報酬として小銀貨1枚が支払われる。その後は会議も兼ねた夕食会となった。費用は冒険者ギルド持ちだ。

とはいえ、あまり楽しい雰囲気ではない。今後の方針を決めねばならないのだが、今回の大捜索でも見つからないとなると、打つ手はなかった。

結果的に紛失した際に魔石はすでに壊れ、消失したと考えるのが妥当であった。しかし、ダンをはじめ、長くこの村にはいる者は慎重な姿勢を見せていた。

言葉の端々に6年前の悲劇という単語が出てきた。6年前というと、アルトやクレアが生まれた頃の話のはずだ。


最終的に村外で活動する者に注意喚起をするということで決着した。楽観視できないとしても実質やれることがないのだ。

話がまとまると、戦士風の男が声をかけてきた。


「おう、何かお前らすごかったらしいな。ゼノから聞いたぜ」


よく見ると、先ほどゼノに話しかけてきたのと同じ人物だ。確か名前はザックだ。

お互いの最近受けた依頼の話をする。他の冒険者とこういった話をするのは初めてだった。当然のことながら、『魔剣』は浮いているのだ。他の冒険者パーティーとつるむことなんてなかった。

ひとしきり話した後、ふと、ザックが聞いてきた。


「そういえば、お前ら、Cランクになる気はねぇのか?ずっとDランクだろ?必要だったら、推薦してやるぜ」


Cランク冒険者になるためにはDランクの依頼を10回連続で成功させるだけではなく、Cランク冒険者5名からの推薦が必要なのだ。ザックはこの推薦を申し出てくれている。

ザックの申し出は嬉しかった。しかし、それ以上に視界の端でダンが複雑な表情を浮かべているのが気になった。アルトはお礼を言い、とりあえずはうやむやにする。


「ありがとう。ちょっと考えてみるよ」


少しして夕食会はお開きとなる。アルトはダンと帰路につく。西地区は職人が多い。ほとんどの家がレンガ造りに変わっていた。2年前とは様変わりした道を歩く。

ダンは唐突に質問をする。


「なぁ、アルト。お前、王都の学校に行く気はないか?」


あまりに突然の話にアルトは何の返事もできず、ダンを見上げる。


「今すぐって話じゃないんだ。6歳ってのは節目の歳なんだ。多くの学校が6歳の春から入学を受け入れてくれる。魔術学校なんてのもあるぞ」


「とうちゃんは学校、行ったの?」


「子供のころ、俺のうちは貧乏でな。俺は学校へは行けなかった……」


「そっかぁ」


そこで、会話は途切れ、その話はそのままとなる。


寝床に戻ったアルトは魔術の練習の前に少し考える。

Cランク冒険者へ昇格。学校へ行く話。

きっと、ダンはアルトに冒険者を続けて欲しくないのだ。

冒険者はいつ死んでもおかしくない仕事だと、幾度となく聞かされてきた。そして、それは実感としても分かってきた。

アルト自身、どうしても冒険者として生きていきたいと思っているわけではない。

かといって、そこまでそれを忌避しているわけではなかった。

ただ単純に今は毎日が楽しい、それだけだ。そういえばクレアも同い年だ。クレアはどうするのだろうか。明日、クレアに聞いてみよう。それだけ決めて、アルトは魔術の練習を始めた。


「巡る大気の理よ、器の内に見えざる指先を這わせよ。千の風を縒り合わせ、異なるものを一つに融和せしめん、ブリーズステア」


2年間、何の成果も得られていないブリーズステアの練習だ。1日に最低20回、これを詠唱すると決めている。アルトはすでに1万回以上唱えていた。しかし、今日もやはり成果はない。次に移る。目下のところ練習中の魔術だ。


「万象を司るベカスの神よ。我が魔力を糧として、原始のベカスを此処に顕現せよ。ベカスボール」


ベカスとは野鳥の名前である。以前、依頼で捕まえた高級食材のあれだ。アルトは別に鳥を作りたかったわけではない。もともとは生きたカカシを作れるかどうかという発想によるものだった。

喋るカカシは作ることができたのだ。今度は生きたカカシを作ろう。そう思い、1年半ほど前に初めて、これを詠唱した。

さすがに家の中で魔物を作り出すわけにもいかない。それで、野鳥にした。それだけのことだった。

詠唱してみると、手から膨大な量の魔力が吸い出される感覚があった。実現の可能性が十分に感じられた。しかし、それは繰り返すと魔力切れを起こしかねない量の魔力だった。

それ以来、1日に1回だけ、この詠唱をすると決めた。

日課が終わったら、後は無限袋に手を突っ込んでの射出速度、生成速度、生成位置、生成サイズなどの地味な訓練に移り、そのまま寝落ちした。


翌日、いつものようにクレアとモックと西の詰所で落ち合う。すると、その日はモックがある提案をしてきた。


「大親分、親分、あっしは今日、行きたいところがあるんですが……一緒に来ていただけやすか?」


クレアがすぐに聞く。


「どこどこ?」


モックが、少しためらいつつ、答えた。


「迷宮……です」


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