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Fランク魔術師がゆく~才能無くても世界最強~  作者: キズキ
ポルケ村編 第3章:未知なる川の向こう側へ!Dランクパーティー『魔剣』の初陣

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第43話 アルトの戦術と予言の的中

モックはいそいそと、着替えを再開した。モックのせいで、先ほどの戦闘の興奮が一気に冷めたアルトだったが、クレアははしゃぎ続けていた。


「気持ちよかったぁ!もう1回やりたいね!!」


アルトはできれば避けたかった。クレアに聞く。


「さっきのやつさ、一対一でも勝てると思う?」


「多分イケるんじゃないかな」


次はモックに聞く。


「モックはどう?」


「実際、親分みたいなことはできねぇですが、時間をかければ何とかなると思いやす」


そうなのだ。多分、アルトだけが一対一ではあれに勝てないのだ。

何かを察したモックがアルトを元気づける。


「大親分、あんまり気にすることはありやせん。まず、魔術師が一対一でフォレストベアに挑もうなんて、普通、考えやせん」


そうかもしれない。しかし、アルトの知っている魔術師はシアンのような人だ。街から7日間の旅を1人で涼しい顔をして、行うような。シアンが規格外なのだといったらそれまでだが、やはり、自分の弱さを痛感する戦闘だった。自ら当てることができた魔術は1発、モックのアシストをもらって、2発。それでも敵は倒れなかったのだ。

モックが続ける。


「それにこのパーティーで最大の火力は間違いなく、大親分です。ブロンさんを押しつぶすような規格外の攻撃、あっしらにはできやせん」


クレアも同意する。


「あれはすごかったねー、パパに勝てるなんて思わなかったよー」


考えても仕方のないことなのだが、やはり、考えざるを得ない。

話題を変えるように、唐突にモックが聞いてきた。


「そういえば、アレはどうしやすか?」


モックは倒れているフォレストベアを指さしている。

アルトはすぐに答える。


「フォレストベアは持ち運びやすい部分だと、牙と爪が高く売れるんだって。だから、運ぶ余力がない時は牙と爪だけは取っておけ。って父ちゃんが言ってた」


そう言いながら、自分の道具袋から、解体用のナイフを取り出し、さっさと牙と爪を切り取ってしまう。よし、採取完了。


「おっけー、行こっか」


モックが称賛する。


「大親分、手際良いッスね」


ここで、クレアがしてはいけない質問をしてしまう。


「で、どこへ行くの?」


3人は黙り込んだ。

正直どこへ行けば良いのか分からない。助けが来るまで待てば良いのかもしれない。ならば、安全なところへ行くのが無難だろう。しかし、安全なところってどこだろう。

もしくは、ロープをもう1度、手に入れることを考えた方が良いのかもしれない。そうであれば、街とか村とか人のいるところを目指すべきだが、最寄りの街まで1週間だ。往復2週間。それであれば、助けを待った方が良さそうだ。

そうすると、この周辺でロープを探すしかない。

そこで、アルトは提案する。


「何かロープの代わりになるものを探そう。木の弦とか何かあると思うんだ。ロープより丈夫なやつ……」


クレアはすぐに同意してくれる。


「わっかった!紐を探せばいいんだね!」


対して、モックはかなり不安そうだった。それはそうだ。ロープが切れてあんな目にあったのに、木の弦では大変心もとない。

道に迷うと取り返しがつかないので、川からはあまり離れないことにし、付近の散策を始める。

景色は村の周辺とあまり変わらない。そもそも村はかなり森の奥深くにある。ただこの森の景色が歩き続けて1週間も続くとなるとやはりぞっとするものがある。

散策を始めてすぐに何かが近づいてくる気配がある。アルトが森の先を指さし、警戒を促す。


「また何か来るよ!」


3人は身構えたが、すぐにモックが反応した。


「ぁ、こいつはあっしの得意なやつッス!任せてくだせぃ!!」


現れたのは巨大なイノシシ、フォレストボアだった。モックが前に走り出る。

そして、剣の柄で盾を2度、打ち鳴らす。

フォレストボアはモックに向かって真っすぐに突進してくる。さっきのフォレストベアよりもさらに速い。ほんの一瞬で、モックの盾にぶつかり、大きな音を立てる。

モックは盾でフォレストボアの軌道を変え、ひらりと横に避ける。フォレストボアは大木に激突し、気を失った。

一瞬で勝負が決した。さすがに得意というだけのことはある。

モックはフォレストボアの首元に剣を刺し、とどめを刺す。傍らでクレアが飛び跳ねる。


「面白そう!次、私ね!!」


なるほど、自分で攻撃しなくても良いのだ。これならばクレアのような攻撃力は必要ない。

そして、攻撃を1回避けるだけで良いのだ。これなら、モックほどの技術もスタミナも必要ない。

アルトはつぶやく。


「これなら、僕でも何とかなるか……」


モックには聞こえたらしく、驚いた顔でアルトを見ている。

フォレストボアの牙を採取し、3人は森をさらに進む。ずいぶんと薄暗く、ジメジメとした雰囲気になり始める。

そして、アルトはまた気配を感じ取る。また何かが来る。先ほどと同様の動き、これはフォレストボアに違いない。アルトは走り出す。後ろでクレアの声が聞こえる。


「ズルい!次は私の番だよ!!」


フォレストボアが突っ込んでくる。大木を背にして立つ。苔の多い悪い足場だ。願ってもない。

フォレストボアの進行方向にウォーターボールを放つ。さらにアースボールを上に被せる。

その時斜めに傾いた木の上をタタッと駆け上がるクレアが目に映る。

今はフォレストボアに集中するのだ。ただでさえ悪い足場に水と土でコーティングされた地面にフォレストボアは足を滑らせる。もう方向転換はできない。アルトはサッと右に避け、フォレストボアは木に激突し、気絶する。

モックが手を叩いた。


「うーん、大親分、さすがです」


解体用のナイフで喉元を裂き、とどめを刺す。牙を回収することも忘れない。先に進もうとしたところで、クレアがいないことに気付く。


「クレア?」


確かこの辺りで跳んだはずだったと、上を見上げると、そこにはクレアの足と……パンツが。薄紫だった。クレアルト様の予言は当たっていた。

クレアの声が聞こえる。


「アルト!見るなぁ!!」


アルトは慌てて俯いた。しかし、クレアが一向に降りてこない。かといって上を見上げるわけにもいかない。

少ししてクレアの怯えた声が聞こえる。


「アルトォ、やっぱり助けてぇ!」


もう1度見上げるとクレアは宙に浮いていた。

そして、その先には巨大な蜘蛛がいた。




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