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Fランク魔術師がゆく~才能無くても世界最強~  作者: キズキ
ポルケ村編 第3章:未知なる川の向こう側へ!Dランクパーティー『魔剣』の初陣

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第40話 ロープ渡りとヴォイスボール

アルトは再度カカシにロープを結び付けた。カカシはふよふよと向こう岸へ行き、木の枝の周りをぐるぐると回る。そしてこちら側のロープの端も木の枝に結び付ける。アルトは木に登り、ロープを掴み、ぶら下がる。そして、そのままロープを横向きに移動して、向こう岸へ渡った。

木を飛び降り、2人に手を振る。向こう岸でクレアが飛び跳ねている。


「すごい!私も行くねー!!」


クレアも同じようにロープを掴んだが、何を思ったか、ひょいとロープの上に飛び乗った。両手を広げて、バランスを取りながら、ロープの上を歩いて川を渡って来る。クレアはバランス感覚も抜群だった。半分を過ぎたあたりでアルトに手を振る。

アルトも手を振り返す。もう余計なことは言わないが、高いところを歩いているんだから、パンツは丸見えだった。クレアはニコニコしてアルトを見下ろしていたが、ふとアルトの視線の先に気付く。急ぎ広げていた両手を閉じ、スカートを押さえる。

その瞬間、クレアは落ちた。


もうほとんど川を渡り終えており、浅瀬であったため、流されることはなかった。けれど、ずぶ濡れだ。浅瀬に座り込んだクレアは訴えるような目でアルトを見ている。アルトは何と言えば良いのか分からない。


「えっと……帰ろっか」


実際、そろそろ帰った方が良い時間だった。パラライズビーの巣は1つしか回収できなかったが、一応は依頼は達成している。そして、フォレストベアの運搬には時間がかかりそうだ。今日は川を渡れるということが分かっただけで十分だった。

帰りはクレアもアルトと同じようにぶら下がってロープを渡った。ただし、太ももの間にスカートを挟みこみ、ぴったりと足を閉じて渡っていた。アルトは明日はロープをなるべく低い位置に張ろうと決める。

岸ではモックが待っていた。クレアが食って掛かる。


「何か見た?」


モックはとぼける。


「何のことッスか?何も見てないッスよ。ええ。もちろん、神に誓って。クレアルト様に誓って」


圧縮空気玉でフォレストベアを運びながら帰路につく。森の道は高低差があり、圧縮空気玉の運用も難しい。大きな獲物でも持ち運べる魔道具が欲しい。いっそのこと、川までの道を作った方が良いのかもしれない。

西の詰所を抜け、冒険者ギルドを目指す。3人と浮かぶカカシで朝から目立っていたが、そこに頭がかち割れた熊が加わり、さらに目立つ。道行く人たちがサッと道を開ける。泣き出す子供もいた。

冒険者ギルドで、フォレストベアの依頼について聞くと、1体で十分とのことだった。すぐに引き受けて、そのままフォレストベアを引き渡した。依頼料は小銀貨5枚、肉など残りの素材も小銀貨2枚で買い取ってくれた。パラライズビーの巣と合わせて、合計8枚になった。

モックとクレアと相談して、今後の報酬は4等分にすることになる。パーティーメンバーは3人なので、4分の1は余ることになる。これは別にクレアルト様の分ではない。パーティーの共通財産にするためだ。今後、渡し舟が必要な時もあるかもしれない。そういったときにすぐに使えるお金を貯めておくことになったのだ。このお金は冒険者ギルドで預かってくれた。別の街の冒険者ギルドで受け取ることもできるらしい。

その場で報酬を分け、すぐに解散した。明日の集合場所は初めから西の詰所ということになる。


アルトはすぐには帰らず、バルディア商会へ向かう。

明日のためにしっかりと準備するのだ。店に入ると、制服を着た店員がぎょっとした顔をして、アルトの後ろを見る。

振り返ると、カカシがいた。しまった。クレアに押し付けるのを忘れていた。


「えっと、これは……村の守り神、クレアルト様です!」


店員が不審な目を向けてくる。

取り急ぎ、麻痺解毒剤3本、ついでに普通の解毒剤も3本、解体用の小ぶりのナイフ、ロープ、塩を購入した。大きな獲物を運べるような魔道具の値段は小金貨1枚からだった。

仕方なく、手ごろな道具袋を購入する。

そして、逃げるように店を出る。



家に帰り、さっさとレンガの家にカカシを片付ける。最終的にカカシはここで預かる羽目になってしまった。

ため息をつき、食事の準備を始める。久しぶりにダンと水入らずの食事だ。そこで、徹底的に川の向こうの森の魔物について聞いた。

そして、寝床での無限袋を使った魔術練習だ。まずは習慣となっているブリーズステアの練習をする。その後はちょっと変わったロックボールの練習をする。ロックボールを生成、放つまでの時間でロープを結び、そして放つという訓練だ。できれば明日からはカカシを連れて歩きたくない。

納得いくまで練習をした後はやりたかった魔術の練習もする。それは、今朝、ブロンが言った。カカシが生きているかとか喋れるかという質問に関するものだ。正直、生きたカカシを作るために何をすれば良いか分からない。

でも、喋らせることはできる気がしていた。アルトは新たな魔術に挑戦する。


「万象を司る声の神よ。我が魔力を糧として、原始の声を此処に顕現せよ。ヴォイスボール」


魔力が吸い出される感覚、やはり、これはできそうだ。声は見ても分からない。無限袋から手を出し、室内で詠唱を繰り返す。朝のブロンのセリフを思い出しながらワクワクして練習を続ける。


「これ、生きてんのか?喋れんのか?」


ある時、ブロンの声が聞こえた。成功だ。

次はクレアのセリフを思い出し、カカシに向かって手を掲げる。カカシはクレアの声で話し始めた。


「村の守り神、クレアルト様だよ!!」


こうして、クレアルト様はアクティブスキル『自己紹介』を取得した。


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