第33話 クレアのおめかしと野鳥の狩猟
そういえばクレアと戦うのは初めてだった。色々気付くこともあるはずだった。だが、とにかくアルトは早く出かけたかった。
すぐにロックボール5発を放つ。
クレアは低い姿勢でロックボールの下をまっすぐに掻い潜ってくる。体が小さいからこそできる動きだ。ブロンと稽古をするのとは勝手が違う。
そのまま下から斬り上げてくる。辛うじて木剣で受け止めると同時に、剣先から小指の先程のロックボールをクレアのおでこに放った。パシュンと間抜けな音を立てて放たれ、おでこに命中する。
「痛っ!」
クレアはおでこを押さえるが、その腕をつかみ、アルトは引っ張る。
「さぁっ、依頼行くよー」
クレアは抵抗する。
「ちょっと待ってよー、せめて着替えさせてよー」
アルトはそれもそうだと思い手を離す。クレアはひっくり返った。不機嫌そうに起き上がり、自分のテントに着替えに行く。
そして、物凄く機嫌良くテントを出てくる。着ている服はいつものワンピースではない。青いスカートに白いシャツ、薄い黄色の上着を羽織っている。
呆気に取られたアルトにクレアが声をかける。
「アルト、行こ!」
「う、うん」
アルトは気を取り直す。やらなければならないことは多いのだ。
まず、クレアに依頼の内容を説明する。
ベカスという鳥を捕まえるということ。ベカスがどれか分からないため、とにかくいろんな鳥を捕まえるということ。なるべく無傷で捕まえなければならないこと。
それから、最後に言う。
「僕が空気玉で鳥を落とすから、クレアが捕まえてね」
「わっかった!楽しそう!!」
今日は北の生垣から出て、岩山まで行き、西の方をぐるっと回ることにした。
クレアは楽しそうだ。
「ここ通るの初めてだね」
そういえば、クレアを連れてここを通るのは初めてだ。3週間前、ここから帰ってきたところをクレアに見つかったせいで始めた冒険者だったが、まさかここまで色々なことがあるとは思わなかった。
この3週間を夢のように感じる。
少し感傷的なアルトをよそにクレアはすでに生垣の穴に頭を突っ込んでいる。
「ここだよね?あれ?通れない。何か引っ掛かった!」
助けようと近づくも、ジタバタし始め、スカートが翻る。いつものやつだ。
「クレア、パン……」
パンツと言おうとして、アルトは止まる。いつものやつではない。クレアはピンク色の可愛らしい下着をつけていた。
クレアは気付き、スカートを生垣の枝に残したままサッと向こう側へ抜けた。
「きゃあ!!」
続いてスカートもサッと向こう側へ抜ける。少し時間を開け、アルトも生垣をくぐり抜け、立ち上がる。
クレアは真っ赤な顔でうつむいていたが、上目遣いにチラリとアルトを見る。
アルトは急に恥ずかしくなり、そっぽを向いた。
クレアがポツリと言った。
「行こっか」
「そうだね」
少しの間、2人は無言で歩く。そこで、アルトが口を開く。
「ぁ、いた」
「えっ?」
「鳥だよ。多分、この森で一番ノロマなやつ」
「どこ?」
「あそこ」
アルトは前方の地面を指さす。クレアには枯葉しか見えないようだ。
「どこ?」
「前」
アルトは空気玉の準備をしながら、クレアをたしなめる。
「あんまり近づくと逃げちゃうよ」
クレアがそこから3歩近づいた時、枯葉の中から枯葉の塊がバサバサと音を立てて舞い上がる。
アルトは上空に圧縮空気玉を作り出し、塊を叩き落とす準備をする。
クレアはまさかそれが鳥だとは到底思っていなかった。だが、自分の目の高さまで舞い上がった時にやっとそれが鳥であることに気付く。
その瞬間、鳥の首はクレアの手に収まっていた。
鳥を捕まえるのはクレアに任せて正解であった。
クレアはこともなげに言った。
「うん、この鳥、遅いねー」
アルトとしては、かなり近づくまで逃げないからノロマと言ったのであって、鳥自体の飛ぶ速さが遅いという意味で言ったのではなかったが。
まぁ、結果オーライである。
クレアから鳥を受け取り、首をへし折って木の枝に逆向きに吊るす。
次の獲物は木に止まっていた。さすがにクレアでは届かない。アルトの出番だ。
圧縮空気玉をぶち当て、鳥を威嚇する。飛び立ったところを真上に準備していた圧縮空気玉を解放し、風圧で真下へ落とす。
クレアが真下にスッと移動し、キャッチする。そして、首をポキッ。逆向きに吊るす。
同様に木の上に生息する鳥はかなりの種類がいる。北の岩山に着く頃にはかなりの数の鳥が枝にぶらさがっていた。
何も考えずに捕まえまくったため、同じ種類の鳥も結構ぶら下がっている。
クレアが少し不機嫌そうに言う。
「アルト……お腹減った。これ、ちょっとくらい食べてもいいよね?」
確かに朝食抜きでここまで狩り続けてしまった。アルトもお腹は減っている。
「同じ種類のやつだったら、別にいいよ……でもそのままじゃ美味しくないかも。」
「何でもいい!お腹すいた!!」
適当に平らな岩を探し出す。毛をむしった鳥を2つ並べ、上からファイアーボールで焼く。
脂の焼ける香ばしい匂い。美味しそうだ。
しっかりと火が通ったことを確認し、2人で食べる。
「まっず……」




