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Fランク魔術師がゆく~才能無くても世界最強~  作者: キズキ
ポルケ村編 第2章:テント爆散から始まる魔法DIYと、領主様の夕食会

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第29話 チンクトリアの葉と幾何学的な床

クレアの方を見ると、手のひらを上に向け驚愕の表情だった。そして、その手は青かった。


「この葉っぱ、呪われてるの?私、アンデッドになるのかなぁ!?」


アルトは自分の手を見て、クレアに見せる。


「僕もだよー。多分、色だけだよ」


クレアは不安そうだ。


「でも!でも!!葉っぱからは青い汁なんて出てないよ!」


クレアは葉っぱを手で握りつぶす。確かに、葉っぱからは黄緑色の液体しか出ていない。

無理やり絞りだした汁はクレアのワンピースの袖を汚し、クレアは裾で、手を拭った。

アルトはすべて理解していたわけではないが、ノーマンの3つの依頼はすべて色に関するものなのではないかという気がしていた。

とにかく依頼だけは完了させてしまおう。不安そうなクレアを促し、せっせと葉を摘み取る。革袋がチンクトリアの葉でいっぱいになるころ、クレアのワンピースの袖と裾は青くなった。

それを見たクレアは少し安心すると同時にショックも受けていた。


「うげぇ、これ、洗ったら落ちるかなぁ」


冒険者ギルドに行き、報酬を受け取る。次のめぼしい依頼を探すも、Eランクの依頼は出ていない。明日からはFランクの依頼をこなすしかないようだ。

今日はノーマンへの支払いを済ませるためにバルディア商会へ行かなければならない。露店へ行くクレアと共に冒険者ギルドを出る。

またもクレアは露店で大はしゃぎだ。


「アルト!見て!!今日は黄色とオレンジ色の飴玉が新発売だって!!何味なんだろ!?でも、この黄色、昨日のアムレンセみたいだね」


「クレア、多分、明日は青い飴玉が発売されるよ」


「なんで?」


不思議そうにしているクレアとはそこで別れ、バルディア商会へ向かう。その途中、もう少し南の方にも子供向けの露店ができていることに気付く。しかし、客はいない。

少し覗いてみると、彩り豊かな品ぞろえのバルディア商会の露店とは違い、無色の飴玉、白や生成りの小物を置いていた。あまり魅力的とは言えない内容だ。

いや、本当はそんなことなかったはずなのだ。その商品は一昨日までのバルディア商会の露店と比較すると大して差はないのだ。

店主は生気のない顔で、アルトを見上げ、声をかける。


「いらっしゃい……」


アルトに欲しいものはなかった。一通りの商品を見終え、アルトはバルディア商会へ行く。

店内にはノーマンと店員がいた。当然のことながらノーマンは上機嫌だ。ノーマンへの支払いを済ませる。

手元に残るのは小銅貨4枚だけだ。ここから、小銀貨1枚を稼がなければならない。アルトは暗い気持ちで家の建設地へ向かう。ガラクは疲れた顔で座り込んでいた。


「ガラクさん、チンクトリア持ってきたよ……どうかしたの?」


ガラクはアルトを見る。


「いやぁ、どうもしとらんよ。ここのところ忙しくてなぁ。ちと疲れただけじゃ。お主の家の床だけじゃなく、ノーマンさんとこを含め、何人かの商人から飴だの子供向けの小物だのの急ぎの発注が入ってなぁ。まぁ、今日からはノーマンさんの依頼だけになったが。不眠不休の3日間だったのじゃ」


子供Fランク冒険者経済圏の裏で活躍していたのはガラクだったのだ。

もちろん、一番の勝者は前もって露店を準備したバルディア商会だ。しかし、それに伴い、類似品の生産依頼が便利屋であるガラクに集中した。

それも予想していたノーマンはすでに新製品の準備をしていた。色付きの商品を都市から輸送したのでは、コストもかかる。村周辺で手に入る素材で、安価に着色する方法が必要だった。

他者が参入する頃には最早、以前の商品に魅力はなくなっていた。もっとも割を食ったのは他の商店だったであろう。せっかく新たにガラクに作らせた商品のほとんどは不良在庫となった。

アルトとクレアは図らずもその裏で暗躍させられていたのだった。


ノーマンもガラクもしっかりと儲け、アルトには小銀貨1枚の借金、テントを壊したことは全く関係ないことではあるが、アルトはなんだか納得いかないものを感じる。

ガラクはよっこらしょと立ち上がり、近くに広げてあった大きな布を手繰り寄せながら、続ける。


「まぁ、床は完成したから、安心しとくれ」


布の下からは、完璧に平らな真四角の平面が現れた。アルトは驚く。ここは村の西の外れ、まだ木もたくさんある未開拓な場所である。そこに幾何学的に完璧な四角形が突如として現れたのだ。

アルトは言葉を失う。そして、少ししてから、ぽつりと言った。


「魔術みたい」


ガラクは愉快そうに笑う。


「魔術師のお主が言うか。がっはっは」


アルトの思う魔術師はただの塊を生み出すような存在ではない。自分は果たして魔術師と呼ばれるにふさわしいものだろうか。


ガラクはモルタルの原料と、混ぜるための壺やモルタルを塗るための道具など、それからレンガのための型枠や鉄板など、一式を置いて帰っていく。

アルトは少しずつ壁を作り始めたが、すぐにモックに夕食に呼ばれる。明日からはFランク依頼と壁づくりを繰り返す日々が続くのだ。焦る必要はない。

アルトは夕食を終え、詰所の片隅で1日を終える。やはり、無限袋で魔術の練習をしながら。


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