第九十一話 決着、そして帰還
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【セドリック・ノエル視点:戦いの果て】
わずか数センチという目前の距離で、カイルの姿が掻き消えた。
「くっ、消えた……!? 取り逃がしたか!」
セドリックは即座に周囲の魔力残滓を探り、ノエルも鋭い感官で辺りを警戒したが、もはや男の気配は微塵も残っていなかった。
『セドリック、あいつ、匂いも完全に消えた。もうここにはいないと思う』
「……仕方がありません。逃がしたのは痛手でしたが、これ以上は深追いもできないでしょう。この件はすぐにユエ様へお伝えする必要がありますね」
セドリックは視線を、地面に横たわる捕虜たちへと向けた。
「とりあえず、捕獲した彼らを拠点へ運びましょう。……しかし、これだけの人数をどうやって運びましょうか」
人工魔核を移植されたダークエルフが15人、キメラの少年が1人、そして闇組織の残党が5人。計21人という大所帯だ。
『大丈夫! 私に任せて!』
力強く答えたノエルが、ユエと同じ重力魔法を発動させた。
すると、気絶した捕虜たちの身体がふわふわと宙に浮き上がる。
「ノエルさん、いつの間に魔法を……? 来る時も結界魔法を使ってくれていましたね」
驚くセドリックに、ノエルはふふふ、と誇らしげに笑った。
『ユエがね、あの「念話の鏡」でやり取りしたときに教えてくれたの。私もキメラ化した影響で魔法が使えるようになってるって。それで、いろいろ手ほどきしてもらったんだよ』
身体強化程度の魔力操作しかできないセドリックは、その言葉に少しだけ羨望の眼差しを向けた。
「……私も、いつか攻撃系の魔法を使ってみたいものです」
そう言って肩を落とすセドリックを見て、ノエルは「あ……」と気まずそうにあたふたし始めた。
そして、大きな腕でセドリックを優しく包み込むように抱きしめた。
『ごめんね、セドリック……私、君を傷つけるつもりじゃなかったんだ……』
その不器用で真っ直ぐな優しさに、セドリックは思わず吹き出してしまった。
「いえいえ、私の方こそすみません。羨ましいとは思ったものの、決して傷ついたわけではありませんから安心してください」
その言葉にノエルはホッとした表情を見せ、浮遊させた捕虜たちを数珠繋ぎにするように制御しながら、拠点への帰路に就いた。
【ヘリックス村:拠点への帰還】
拠点に辿り着くと、心配そうに待っていたノアが真っ先に駆け寄ってきた。
「うわぁ! おかえり! 二人とも無事でよかった……! って、何その人たち? 侵入者?」
「ええ。危険ですので、全員無力化した上で連れてきました。これでも元変異種ですから、対処は可能です」
セドリックはノアに状況を説明しながら、鋭い眼差しを捕虜たちに向けた。
「ノエルさん、私は大至急ユエ様と連絡を取りたいので、彼らの見張りをお願いできますか?」
『わかった! 任せて、しっかり見張っておくよ』
セドリックはノアから通信機を受け取ると、遠く首都にいる主への報告を開始した。
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あと、2話は21時までに、なるべくだすようにします。




