第八十五 神速の演武、戦慄する観測者たち
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次の話の時系列の調整のために、修正いれました。
ギルド【凪の観測手】の長室で、私たちがその正体を明かしてから四日が経過した。
その間、私たちはアルヴィンが「今はこれが精一杯の配慮なんだ、すまない」と苦渋の表情で用意した、監視付きの客室にて待機することとなった。
形式上は軟禁という形だが、これは彼なりの保護でもあったのだろう。
この四日間という時間は、カームの首都から「境界の町」フロンティアまで、国の重鎮たちが馬を乗り換え、不眠不休で駆けつけるために必要な最短の猶予でもあったのだ。
そして今日、ついにその時が訪れた。
カーム国の守護を担う者たちが、私たちの「力」を直接見極めるべく、演武場へと一堂に会したのである。
現騎士団長バルトロメウス・クリーグ、宮廷魔導師長セレナ・アシュフォード。
さらにギルド長アルヴィンと、その右腕ジーク。
何よりこの場に静かな重圧をもたらしているのは、元騎士団長であり、国王の右腕として全権を委ねられた特使、オーウェン・マクドガルの存在だった。
「大陸の危機を前に、自らの正体を明かす決断をしてくれたことに感謝する」
オーウェン閣下は厳格な騎士の面持ちで、しかし私たちの覚悟を認めるように深く頷いた。
続いてセレナ殿が「古代に滅びた禁忌の術、その真価をこの目で見極めさせていただきます」と、魔導師らしい鋭い視線で応える。
私は実演に先立ち、周囲に自作の装置を配置した。
「皆様の安全を確保するための結界です。私たちの力は、既存の防御魔法では防ぎきれませんから」
怪訝な表情を浮かべる彼らを背に、私は演武場の中央で待つラウのもとへ歩み寄った。
「ラウ、手加減は無用です。魔核さえ無事なら、私たちは死ぬことはありません」
私の真剣な眼差しに、ラウは獰猛な笑みを浮かべた。
「ああ。一度、お前と本気でやり合ってみたかったんだ。俺と対等に戦えるのは、世界中でユエ、お前だけだからな」
刹那、私とラウは異形のキメラへとその姿を変じた。
立ち昇る圧倒的な魔圧と咆哮に、歴戦の重鎮たちが一斉に身を強張らせる。
激突:人知を超えた攻防
先手はラウだった。
火のエレメントを纏った一撃が空を裂き、爆圧が頬をかすめる。
私は即座に『アイスミラーワールド』を展開し、光の屈折が生み出した幻影で彼を翻弄した。
(……詠唱も、魔力充填の予兆すら皆無。あれほど精緻な術式を、自身の演算能力のみで瞬時に構築したというの?)
セレナの瞳に戦慄が走る。
現代の魔導理論をあざ笑うかのような練度だ。
空中を自在に舞う私は、ラウの背後から『ライトニングブレス』を放つ。
だがラウも即座に反応し、蹴り上げた岩盤を盾に雷撃を凌ぐと、そのまま巨大な岩塊を私めがけて蹴り飛ばしてきた。
「――くっ!」
私は岩盤を一閃して粉砕し、弾丸のような速さで地上へ突進する。
しかし、これこそがラウの狙いだった。
彼は姿勢を極限まで低くして私の懐へ潜り込む。
(速すぎる……! あの速度の慣性がついた状態で真下に入り込まれれば、空中では回避不能だ!)
バルトロメウスがその攻防の危うさに息を呑む。
交差する刹那、逃げ場を失った私の腹部に、狙い澄まされた両拳が突き上げられた。
ドォォン!
衝撃と共に私の脇腹が深く抉り抜かれ、鮮血が舞う。
ラウがわずかに動きを止めるが、私は構わず蛇の尾で彼の腕を絡め取り、遠心力を乗せて岸壁へと叩きつけた。
「……気にしなくていいと言ったのに!」
キメラの真価:欠損を恐れぬ戦術
攻防はさらに激化する。
跳躍してくるラウに対し、私は一瞬で人型に戻ることで急激な体格変化を起こし、攻撃を空振らせる。
そのままラウの尾を掴み、雷撃を流し込みながら地面へ叩き伏せた。
だが、ラウは拘束された自身の尾に全魔力を凝縮させた。
「……しまっ!」
気づいた時には遅かった。
至近距離で火のエレメントが臨界を迎え、ラウは自らの尾を「自爆」させたのだ。
ドォォォン!!
(再生を前提に、自身の肉体さえ使い捨ての兵器にするのか……!)
アルヴィンが叫び、即座に演武の中止を指示した。
私たちが人型に戻り歩み寄ると、私の脇腹も、吹き飛んだラウの尾も、すでに肉が編み上げられるようにして元通りに修復されていた。
「……いかがでしたか?」
私はダメ押しとばかりに、演武場の端にある巨大な岩塊へ歩み寄ると、最大出力の雷魔法を放った。
跡形もなく霧散した岩のあとには、底も見えぬほど深いクレーターが残された。
沈黙を破ったのはオーウェン閣下だった。
彼は国王の紋章が刻まれた特使の証を提示し、重々しく告げる。
「……陛下からは、私の独断で全機関を動かす権限を与えられている。 この目で確信した。 これはもはや、一国の軍事バランスで収まる話ではない。 陛下への報告書には、こう記さねばなるまい。 『彼らを敵に回すことは、我が国に落ちる雷に剣を向けるのと同じである』とな」
オーウェン閣下は、一同を見渡して命じた。
「大至急、各国に緊急連絡を入れよ。 王命である。 直ちに取りかかれ! 自らの身を削ることを厭わぬその特異な戦法こそが、彼らを最強の兵器たらしめている。 このような存在が闇組織で量産されたなら……本当に、世界が終わるぞ」
その言葉に異を唱える者は誰もいなかった。
現騎士団長も、宮廷魔導師長も、即座にその場から動き始める。
私たちは自分たちが示した「力」の重みを背負いながら、静かにギルドへと戻った。
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ちょっと今日は、のこりの2話遅れそうです。今日中に2話出す予定です。




