第七十九話 安堵の宴と、ソル・インヴィクタス偶然の「成功」
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カーム国・合同使節団が帰路に就いた後、私たちはようやく張り詰めていた緊張の糸を解いた。
「はぁ~~~。嘘はついてないですけれど……悪い方に誤解されなくて本当によかった!」
私は心底からの安堵と共に、大きなため息を漏らした。
隣でシェリルが「いい具合に誤解してくれて助かったよ。もしユエ達が人造生物兵器だと知られたら、もっと話がこじれていただろうし。数百年前に絶滅したはずの帝国の亜人だと思われたのは、不幸中の幸いだったね」と苦笑いを浮かべる。
自分たちの正体をどう説明すべきか正解が見えない中で、それは現時点での最良の着地点だった。
「とりあえず、今日は祝おう! 無事に販路を確保できたこと、そして公認で外の世界と繋がれるようになることを!」
シェリルや元奴隷の皆さんの命の保証が公的に得られたことも、計り知れない成果だ。
商人ギルドの面々からも要望があったことだし、次はこの拠点に「宿泊施設」を作る計画を進めよう。
地球水準のおもてなしを詰め込んだ「旅館」の構想に、私とシェリルの知識が唸る。
「この村を発展させるためにも、さらに人材が欲しいところですね。どこかに良いご縁でも転がっていないかな!」
そんな軽口を叩いていた時の私は、まだ知る由もなかった。
私たちの預かり知らぬ場所で、あの闇組織が、救いを求める声すら奪うような惨劇を引き起こしていることを。
【ソル・インヴィクタスの本部地下拠点】
カイル・ソル・レヴァントは、先代の金庫から暴き出した極秘資料を机に広げ、新型人工魔核の最終試験に没頭していた。
今回の被検体として用意されたのは、南の聖樹王国アイナ・サリア近隣に隠れ住んでいた少数民族――ダークエルフたちだ。
カイルは捕縛したすべてのダークエルフに奴隷紋を刻み、新型の人工魔核を無理やり植え付けていく。
戦力として使えそうにない個体は、冷酷にも「素材」として合成室へと送り込まれた。
この時、カイルはまたしても致命的な過ちを犯していた。
元の魔核を取り除かないまま人工魔核を重複して埋め込むという愚挙。
だが、偶然にもダークエルフの魔核が持つ特殊な適応力のせいで、目に見える拒絶反応が抑えられてしまった。
その奇跡的な「不運」のせいで、カイルは自身の術式の欠陥に気づく機会を失ったのだ。
やがてカイルは、一際衰弱した病弱な少年を一人選び、人造生物兵器生成の魔法陣の中央に据えた。
彼が盲信している人造生物兵器生成の魔導書には、「素材となる魔物の核を取り除くべし」との指示はあるものの、土台となる「素体」については「生きた状態で」としか記されていない。
即ち、素体の核を除去するという、生存率を左右する最も重要な工程が抜け落ちていた。
理由は単純だった。
その本は、かつてルナが研究の途上で何者かに盗まれた、未完成の「中間報告」をまとめたものに過ぎなかったからだ。
完成された最終術式は、世界でただ一人、ルナの頭脳の中にしか存在しない。
しかしカイルは、それを帝国全盛期の「完璧な叡智」だと信じて疑わなかった。
ここで、さらなる残酷な偶然が重なる。
選ばれた十五歳の少年は、生まれつき魔核を持たないという極めて稀な体質の持ち主だった。
自力で魔力を浄化できず、親が魔法で必死に手入れ《ケア》し続けることでようやく繋ぎ止めてきた、儚い命。
そんな親も無残に殺され、少年は冷たい石の床に横たわされる。
「我らの技術の糧になれることを光栄に思うがいい」
カイルが不敵な笑みを浮かべ、術式を発動した。
禍々しい光が部屋を満たし、逃げ場のない少年の細い体を呑み込んでいく。
救いのない闇の中で、少年はただ静かに、絶望と共にまぶたを閉じた。
お待たせいたしました、投稿を再開します!
改めて全体の確認を行い、気になっていた箇所を修正いたしました。
活動報告でもお伝えしましたが、セドリックの姿を「豹」から背の高い「猫」へと変更しております。
その他にも細かな修正が多々ありますので、ぜひご確認いただければ幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
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のこり2話は、21時までに投稿予定。




