第七十八話 【カーム国・合同使節団視点】後編
ご来訪ありがとうございます。ゆっくり楽しんでいってください。
【伯爵級特務調査官:ヴィクトール・フォン・グラナート視点】
村に足を踏み入れた後も、俺の理性が悲鳴を上げるような驚愕の連続だった。
家畜化された魔物だけではない。
森の暴君であるはずの魔猿や鬼熊までもが、この村では隣人のように平和に共存している。
信じがたい光景だが、それは厳然たる事実として目の前にあった。
さらに調査を進める中で、重大な事実が判明した。
村を構成する亜人たちは、大陸の既存データに存在しない特異な血筋――正真正銘の帝国の末裔である可能性が極めて高い。
そして何よりの収穫は、帝国跡地における変異種の異常発生。
その元凶が、俺たちの追う闇組織であると確証を得たことだ。
シェリルという女性から語られた組織の実態は、戦慄すべきものだった。
魔核を用いた非道な生体実験。変異した生物兵器の投入。
そして、組織の頂点に立つ者が帝国の王族を自称し、武力による帝国復活を画策しているという。
「……大至急、本国へ戻り対策を講じねばならん」
だが、絶望ばかりではない。
想像を絶する食事を堪能した後に行われた会談で、村のリーダーは、条件付きではあるもののロストテクノロジーの一部提供を承諾した。
闇組織という未曾有の危機に対する警告と、国家の勢力図を塗り替えるほどの朗報。
俺は、カーム国王への緊急謁見を脳内で組み上げながら、夜明けと共に帰路についた。
ー・・・・ー
【カーム商業ギルド:副会長マルセル・デュラン視点】
村に辿り着くまでの間、俺の頭の中では過去最大級의数字が激しく叩き出されていた。
この村がカームにもたらす利益は、想像を絶するものになる。
部下たちの興奮した様子を見れば、それが夢物語ではないことは明白だ。
最初、アルヴィンの手紙を「英雄の戯言」と疑った自分を殴ってやりたい。
もしこの商機を商売敵に奪われていたらと思うと、今でも背筋が凍る思いだ。
村の中の施設も、道中の宿泊施設を遥かに凌ぐ見事なものだった。
広々とした浴槽に贅沢に溢れる湯。
肩まで浸かりながら窓の外を眺めれば、そこには星々を散りばめたように美しく輝く変異植物の群生と、壮大にそびえ立つ魔晶石が織りなす絶景が広がっている。
数百年間、誰の目にも触れなかった魔境が、これほどまでに美しいとは。
「ふふふ……この地を観光施設として開拓したら、数字はどうなるか……」
想像しただけで、笑みがこぼれて止まらない。
ギルド長にこの話をすれば、間違いなく「自分が商談に行くべきだった!」と地団駄を踏んで嘆くだろう。
最高級の土産話と、未来への約束。俺はそれらを抱え、歓喜に震えながらカーム商業ギルドへの帰路についた。
ー・・・・ー
【凪の観測手アルヴィン視点】
やはり、隠し事があったか。
……だが、それが悪いことじゃなくて、本当によかった。
初めて会った俺に、すべてを話してくれなかった理由。それは、彼らが背負わされたあまりに重すぎる、非情な宿命のせいだったんだな。
あんな話、簡単には口にできるはずがない。
闇組織の非道。
そして、平穏を願うだけの彼らに向けられた悪意。
カームの国民であろうとなかろうと、そんなの関係ない。
「英雄の名にかけて……。お前たちの平穏は、俺が全力で守ってやる」
英雄の称号なんて柄じゃないと思っていたが、今この時ほど、この肩書きを誇らしく感じたことはない。
俺は心の中で固く決意し、頼もしい背中を見せてくれた村の若きリーダーに、音のないエールを送った。
いつもご愛読ありがとうございます。
※4月30日にすべて確認終了の案内
先日4月23日の更新分において、ルビ振り作業を効率化するためにAIツールを使用した際、意図せず本文の内容まで一部書き換えられてしまう事態が発生いたしました。
自分の意図しない言葉で物語が綴られることは、作者として、そして楽しみにしてくださっている皆様に対して誠実ではないと判断し、この機会に改めて第1話から第60話までの全内容を確認・精査いたしました。
確認に合わせ、物語の整合性を高めるための修正も行っております。修正の詳細は活動報告にてまとめておりますので、お手数ですがそちらをご確認いただけますと幸いです。
これからも「神蛇紫苑」の言葉で、皆様に物語をお届けしてまいります。引き続きよろしくお願いいたします。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
もし「続きが気になる!」「面白い!」と思っていただけましたら、
下の**【☆☆☆☆☆】評価とブックマーク**で応援いただけると、執筆の大きな励みになります!
今日は、これで終わります。また、つづきは、30日まで。予定通り21時までに3話投稿です。




