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異世界召喚された俺、エルフの賢者と融合して究極のキメラになる〜禁忌魔術で、滅びた帝国を勝手に復興させてもらいます〜  作者: 神蛇紫苑


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第七十六話 ヘリックス村に到着前の話【カーム国・合同使節団視点】前編

ご来訪ありがとうございます。ゆっくり楽しんでいってください。



【伯爵級特務調査官:ヴィクトール・フォン・グラナート視点】


俺は、何十年もの間、カーム国の秩序と安全を維持するために数多あまたの修羅場を潜り抜けてきた。


昨今、大陸全土で闇組織ソル・インヴィクタスが不穏かつ活発な動きを見せているという情報が、俺の元に相次いで舞い込んでいる。


特に危惧すべきは、帝国跡地で観測された魔物の変異種ミュータントによる異常発生だ。


これが闇組織ソル・インヴィクタスによる禁忌の実験場となっている疑いが強く、俺はカームの英雄『凪の観測手カーム・オブザーバー』へ、組織の関与を裏付けるための正式な調査を依頼していた。


そのギルド長であるアルヴィンから、待望の緊急親書が届いた。


「調査が終わったか。やはり変異種ミュータントの発生源は、奴らの実験場だったか……?」


厳しい表情で封を切り、書類に目を通す。


だが、そこに記されていたのは俺の予想を遥かに超える、荒唐無稽こうむけいな報告だった。


帝国跡地の深部に、人の住む村が存在したというのだ。


さらにアルヴィンは、その村の住人と接触し「信じられない体験をした」と熱っぽくつづっていた。


組織との関連は不明だが、とにかく自分の目で確かめてほしい、驚くから一刻も早く来てくれ、と。


「……何を言っている。国家の依頼に対する報告書としてのていをなしていないぞ」


英雄と称えられる男が、ここまで冷静さを失うほどの事態とは何だ。


要領を得ない内容に苛立ちを覚えたが、アルヴィンが公的な調査報告で根も葉もない嘘をつく男ではないことも重々承知している。


俺は精鋭の部下を引き連れ、事の真偽しんぎを正すべく境界の町フロンティアへと向かった。


この時、己の常識が根底からくつがえされることになるとは、知る由もなかった。


ー・・・・ー


【商人ギルド:副会長マルセル・デュラン視点】


カーム最大規模を誇る商業ギルド。


その副会長として、私は多忙なギルド長に代わり、新商品の開発指揮から利権の調整まで、文字通り休む間もなく立ち働いている。


そんな折、突如としてあの英雄から直筆の手紙が届いた。


「ほう、新しい装備や消耗品の大量発注か?」


期待を込めて開封した手紙は、驚くほど分厚かった。


だが、その中身を読み進めるほどに、私の眉間のしわは深くなっていった。


「帝国跡地に新たな村ができた……? 魔牛マギュウやクワックチキンの取引だと?」


手紙には、野生のものより遥かに美味な魔物を家畜として育てていると書かれていた。


あの凶暴な魔牛マギュウを食肉として家畜化するなど、商人としての常識では考えられない。


おまけに野生より美味いなどと、眉唾まゆつばもいいところだ。


だが、英雄アルヴィンがわざわざ私を指名してきたからには、そこには金になる何かが必ずあるはずだ。


「……英雄の頼みでなければ、一笑に付すところですが」


ギルド長に相談したところ、「英雄の顔を立てる意味でも、行くだけ行ってこい」との命が下った。


私は鑑定の腕が確かな部下を選び、半ば疑いながらもフロンティアへと足を運ぶことにした。


ー・・・・ー


【境界の町フロンティア:凪の観測手拠点】


数日の旅を経て、俺ら一行は合流地点であるフロンティアへと到着した。


だが、出迎えたアルヴィンの歓迎ぶりは、国家調査の重大局面に似合わず異様なほどに手厚い。


俺――ヴィクトールを含め、同行した部下たちの困惑は深まるばかりだった。


儀礼に費やす時間は惜しい。俺は調査官としての職務を果たすべく、単刀直入に話を切り出した。


「アルヴィン殿、形式的な挨拶は抜きにしましょう。……まずは此度の呼び出しについてだ。国家が正式に依頼した帝国跡地の調査報告が、なぜあのような要領を得ない私信のみだったのか。説明してもらいたい」


俺の硬い問いに対し、アルヴィンは苦笑しながら、しかし周囲を警戒するように声を潜めて答えた。


「ヴィクトール、お前の怒りはもっともだ。だがな、あの報告書に詳細を記してみろ。もしどこかで内容が漏れれば、カーム国どころか大陸全土がひっくり返る大騒動になる。……あえて書かなかったんだよ。お前を呼び出したのは、お前のその確かな目で見極めてもらう必要があると判断したからだ」


「……何だと? 英雄ともあろう者が、それほどまでに慎重になる事態だと言うのか」


俺の言葉に、アルヴィンは確信に満ちた笑みを浮かべてうなずいた。


「驚くなよ。その村には、見たこともない種族の亜人と、数人の人間、そして魔物が共存していたんだ。さらに信じがたいことに、その亜人の一人こそが村のリーダーであり、かつ帝国の末裔まつえいである可能性が極めて高い」


「……何だと? 亜人がリーダーで、しかも帝国の末裔まつえいだと?」


俺は思わず絶句した。


アルヴィンの話によれば、その村には見たこともない意匠のゴーレムが守護として闊歩かっぽし、現代技術では再現不可能な高性能設備が平然と稼働しているという。


さらに、魔物を完全に家畜化し、この世のものとは思えない美味を実現したのだと、彼はいつになく熱っぽく語り続けた。


「彼らが本当に白かどうか。闇組織ソル・インヴィクタスとの関連、そして国として取引に値するか。それを諸君らの目で確かめてほしい。問題がなければ、カーム国としてその村の存在を認め、取引を許可したいんだ」


アルヴィンの真剣な視線が、俺を真っ直ぐに射抜く。


どうやら、俺の役割は単なる状況調査に留まらない。


その村を国として公認するかどうかの、極めて重い審判を下すことにあるらしい。


すると、俺の隣で黙って話を聞いていたマルセル副会長が、堪えきれないといった様子で身を乗り出してきた。


「もしそれが本当なら、商人の端くれとして見過ごせませんな、ヴィクトール殿。魔物の完全な家畜化に成功したとなれば、まさに歴史的快挙。カームが初の取引相手となれば、我がギルドの名も歴史に刻まれることになる。……それに、その帝国のロストテクノロジー。実に興味深いですな」


役人として国家の安全を最優先する俺と、新たな商機に目を輝かせるマルセル。


俺たちはそれぞれの思惑を胸に、未知なる村……ヘリックスへと足を踏み入れることになった。




最後までお読みいただき、ありがとうございます!

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残り2話21時までに投稿予定です。

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