第七十話 【帰路を急ぐ凪の観測手《カーム・オブザーバー》視点】
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【アルヴィン・クロムウェル視点】
俺たち調査団は、一分一秒でも早く支部へ戻るために、ひたすら歩き続けていた。
いや、もはや走っていた。
「なんだ、これは……! 体の底から際限なく力がみなぎってくる!」
「全然疲れないぞ! この勢いなら、予定を大幅に短縮して支部へ戻れそうだ!」
団員たちが口々に叫び、死地であるはずの森を爆走する。
この時、当のユエたちは気づいていなかった。
帝国跡地の高濃度魔力に耐えるために進化した生物を、さらにコード・オプティマイザで遺伝子レベルから品種改良した結果、とんでもない副産物が出来上がっていたことに。
跡地の生物は、過剰な魔力を逃がすために常に身体強化に近い現象を細胞レベルで起こしている。
その肉には当然、肉体強化の効果と膨大な魔力が残留していた。
さらに、過酷な環境を生き抜くために驚異的な再生能力を得た野菜たちは、口にするだけで高級回復薬を上回る治癒効果を発揮する。
それを知らずに「ヘリックス・フルコース」として大量に摂取した、耐性のない俺たちは――今や、一種のトランス状態。
いわゆる「ガンギマリ」の状態だった。
昼夜を問わず、不眠不休で魔境を駆け抜ける俺たち。
行く手を阻もうと襲いかかってくる魔物たちを、有り余る力に任せて、まるで行く手を阻む雑草でも払うかのように一撃で蹴散らしていく。
「ははは! どけ! 俺たちの帰還を邪魔するな!」
そしてついに、本来なら精鋭でも一週間は要するはずの死地をわずか数日で踏破し、俺たちはガス欠寸前の状態で境界の町フロンティアの支部へと飛び込んだ。
「ギ、ギルド長!? 予定より早すぎませんか、一体何が……」
出迎えたジークが驚愕の声を上げたが、俺はそれを無視して執務机に噛み付いた。
荒い息をつきながら、国へ提出する正規の報告書を書き殴ると同時に、商業ギルド長宛に、狂気すら感じるほどの熱量で推薦状をしたためる。
あの素晴らしい味、あの至高の体験を、一日でも早くこの地に、いや、俺の胃袋に定着させたい。
思い出すだけで涎が止まらないのだ。
その異様な姿を目にした、事情を知らないメンバーたちの間では「ギルド長は帝国跡地で闇組織に洗脳されたのでは?」という不穏な噂まで流れ始めたが、俺はそれを全力で否定し、跡地で起きた奇跡を事細かに語って聞かせた。
そして呆然とするジークに対し、王都へ書類を大至急届けるよう、英雄としての全圧力をかけて見送る。
「いいかジーク。一秒でも早く、この声を王都へ届けろ。これは命令だ」
「……そんなに、そんなに凄い料理だったんですか!? だったら……俺もついていきたかったーー!!」
ジークは悲痛な叫びを上げながら、魔力で強化された翼を広げ、王都の方角へと爆速で羽ばたいていった。
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あと、残り2話は、21時までに投稿予定です。




