第六十七話 【凪の観測手《カーム・オブザーバー》視点】蒼氷の英雄が見た、未知なる螺旋【前編】
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【アルヴィン・クロムウェル視点】
「信じられん……」
アルヴィン・クロムウェルは、眼前に広がる光景に、己の目を疑うしかなかった。
ジークからの報告を受け、精鋭を率いて数日。
帝国跡地の中央目前、その森の境界線で我々を待ち受けていたのは、到底この世のものとは思えない光景だった。
そこに立っていたのは、中性的な美貌を持つ不思議な少年と、彼を護衛するように立つ赤毛で褐色の青年。そして――何より私の目を釘付けにしたのは、少年の背後に控える純白の巨躯だ。
ジークの報告にあった通り、あの凶暴を具現化したような存在である鬼熊が、まるで忠実な騎士のように少年の意に従っていたのだ。
「止まってください! あなたたちは何者ですか? これ以上の侵入は、敵対行為と見なします!」
少年の鋭い声が響く。
それと同時に、我々の部隊にも緊張が走った。
一触即発の空気が流れる中、少年の傍らに立つ青年と、その後ろに控える白い巨躯が、隠しきれない強烈な威圧感を放ち始める。
「待て! 俺たちは争いに来たわけじゃない。近頃この森で不穏な動きがあったため、調査に来ただけだ」
俺は即座に部下たちを制した。
武器を地面に置き、一歩下がって自らの名を名乗る。
大陸でその名を知らぬ者はいないはずの、私の名を。
だが、少年の口から出たのは、予想だにしない言葉だった。
「……すまない。俺は世俗に疎いもので、その名を聞いても判断ができない。外の世界を知っている者に確認を取るので、少し待ってもらえるかな?」
驚いた。
自惚れるつもりはないが、この大陸に私の名を知らぬ者がいるとは。
だが、少年の様子を窺うに、それは虚勢でも無礼でもない。
纏う雰囲気から、本当に外界の常識を知らないのだと伝ってくる。
誰に確認を取ろうとしているのかと見守っていると、少年は何気ない動作で虚空へと手を伸ばした。
瞬間、何もない空間が水面のように揺らぎ、そこから真鍮色の重厚な輝きを放つ球体を取り出したのだ。
「な……空間収納だと……!? しかも、あの魔道具は何だ?」
魔導師の部下が、悲鳴に近い声を上げる。
俺もそれなりの年月を生きてきたが、これほど淀みのない空間魔法の行使、そして見たこともない意匠の魔道具は初めて目にする。
球体は自律的に浮遊し、複雑なルーン模様を浮かべながら青白い光を放つと、空中に鮮明な光の画面を投影した。
画面の中の少女と何やら話していた少年が、確認が取れたと合図を送る。
その直後だ。
俺の背筋に、冬の寒風よりも鋭い戦慄が走った。
「……いつの間に」
警戒解除の合図と共に、我々のすぐ目と鼻の先から、豹のような形状のゴーレムや樹上の魔猿たちが次々と姿を現したのだ。
完璧に気配を断ち、我々の死角を完全に封じていた。
もし敵対していれば、今頃我々の首はすべて地面に転がっていただろう。
「失礼しました、確認が取れました。立ち話も何ですから、私たちの拠点へ案内します」
ようやく許可が下り、案内された先で、俺はさらに言葉を失うことになる。
視界に飛び込んできたのは、整然と並ぶ飼育施設だった。
魔牛やクワックチキンが、牙を剥くこともなく、穏やかな様子で管理されている。
魔物とは、遭遇すればどちらかが死ぬまで戦う存在ではなかったか。
それらが殺気を一切見せず、人間に管理されているなど、常識では考えられない。
さらに周囲を見渡せば、見たこともない施設が立ち並んでいた。
規則正しく作業する真鍮色の巨大なゴーレムたちが、せわしなく道を整備し、建物を建築している。
(……これは、おとぎ話にある古代の技術大国か何かか?)
俺は直感した。
この見たこともない種族の少年や魔熊は、はるか昔に栄華を極め、歴史の表舞台から消えた知恵ある一族の生き残りではないか。
それが長い時を経て、再びこの地を復興させるべく戻ってきたのだと。
目の前の少年――ユエが持つ超常の技術と、俗世の事情に一切通じていないという奇妙な浮世離れ。
その矛盾した2つの要素が、俺の中に、ある種の確信を与えていた。
変な文章に変換されてたので、修正しました。すみません。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
今回はアルヴィン視点から見た、ユエたちの姿をお届けしました。
外の世界から見れば、今の「ヘリックス村」がいかに異質な場所なのかを感じていただければ幸いです。
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