第五十八話 開かれた禁忌、狂える野望
ご来訪ありがとうございます。ゆっくり楽しんでいってください。
【ソル・インヴィクタスの本部地下拠点】
「……なんだと! どういうことだ、何故置いてきたッ!!」
暗い地下拠点に、カイルの裂けんばかりの怒号が響き渡った。
人工魔核を移植した奴隷兵を森に置き去りにしたという報告を受け、カイルの額には怒りで青い血管が浮き上がっていた。
「貴様ら……! あの検体にいくらかかったと思っている! 組織の資金をどぶに捨てるとは何事だ!」
多額の資金を投じ、ようやくマシな成果が出始めた矢先の失態。臆病風に吹かれた部下たちの醜態に、カイルの理性は完全に粉砕された。
彼は手近な幹部を殴り飛ばすと、荒い息を吐きながら近くにあった本を鷲掴みにした。
「どいつもこいつも無能ばかりかッ! ええい、目障りだ!!」
激昂のあまり視界が真っ赤に染まったカイルは、衝動を抑えきれず、その本を全力で床へと叩きつけた。
「――ッ!? しまった……!」
乾いた衝撃音が響いた直後、カイルは我に返り顔を青くした。
投げ捨てたのは、一族が代々聖典として大切に受け継いできた人工魔核の研究書だったのだ。
「馬鹿な……、私はなんてことを……!」
己の不敬に戦慄し、慌てて聖典を拾い上げようと膝をついた、その時だった。床に叩きつけられた衝撃で、分厚い表紙の装飾がパキリと音を立てて剥がれ落ちていることに気づく。
「……ん? なんだ、これは」
緑色の宝石に見えていた装飾の裏から、一本の古びた鍵が転がり落ちていた。
持ち手には、旧ソル・レヴァント魔導帝国の国旗が刻印されている。
「これは、まさか……!」
カイルには心当たりがあった。
先祖代々の隠し遺産、何をやっても開かなかったあの金庫。
鍵はずっと、肌身離さずいた聖典の表紙の中に隠されていたのだ。
投げ捨てた失態への後悔など一瞬で霧散した。
カイルは狂喜に顔を歪めて鍵を掴み取ると、すぐさま重厚な金庫の元へと向かい、鍵穴へと差し込んだ。
――カチリ。
数百年の沈黙を破り、重い扉がゆっくりと解錠される。
期待に喉を鳴らし金庫を覗き込むと、そこには帝国の栄華をそのまま封じ込めたような、3冊の極秘資料が鎮座していた。
一冊目: 未完成だった人工魔核を完成へと導く詳細設計図。
二冊目: 禁忌とされた生物融合術、即ちキメラ化の秘術。
三冊目: 帝国最大の武器庫――戦略物資集積区画の地図と全データ。
内容を読み進めるにつれ、カイルの瞳に狂気的な歓喜が宿っていく。
「こ、これは……ッ! あぁ……『ゾフィアの導きに感謝を。この火を、我らの歩みを止めぬ力とせん』……! 素晴らしい、これこそが真の叡智だ!!」
かつての帝国の祈りを捧げ、カイルは暗い地下室で高笑いした。
だが、同時に彼は理解した。
この設計図に記された完璧な人工魔核とキメラ兵団を現実に形にするには、まだ戦力と準備が不足している。
「……今は力を溜める。この設計図に基づき、究極の個体を量産するのだ」
カイルは、拾い上げた資料を愛おしそうになぞった。
目的地はただ一つ。
地図に記された聖域――ユエたちが拠点としている、あの場所。
「待っていろ、……。戦略物資集積区画完璧な軍団を引き連れ、今度こそ真の主が迎えに行ってやる……!」
カイルは、その扉が自らの破滅へと続く地獄の入り口であるとも知らず、地下拠点に籠もって禁忌の実験に没頭し始めるのだった。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
怒りに任せて聖典を投げ捨てたカイル。
しかし、その愚かな行動が皮肉にも「帝国の遺産」への扉を開いてしまいました。
**「カイルの勘違いが加速してて面白い!」「ユエの拠点が狙われる展開にハラハラする!」**と、今後の激突が楽しみになった方は、
ぜひブックマークと、下の**【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】に**染めて応援をお願いいたします!
皆様の評価という「叡智の火」が、ユエたちの物語をさらに高みへと押し上げる力になります!今日の最後の1話は、21時までに投稿予定です。




