第五十五話 ソル・インヴィクタス――非道なる試作(テスト)
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【ソル・インヴィクタスの本部地下拠点】
カイル・ソル・レヴァントは、薄暗い実験室の中で不敵な笑みを浮かべていた。
「……やっとだ。ついに安定したぞ」
目の前のカプセルの中では、禍々《まがまが》しい光を放つ人工魔核が、被検体の胸部で拍動している。
これまで実験が失敗続きだったのは、生物が生まれ持つ天然の魔核が、人工物と激しく干渉し、反発し合っていたからだ。
その調整法をようやく見出した彼らは、野望という名の階段を大きく一段登ったのだ。
当初、彼らは魔獣を用いた生体実験を行っていた。
しかし、言葉の通じぬ獣は魔力出力に呑まれ、命令を聞くどころか凶暴化して手が付けられなくなった。
そこでカイルが選んだ非道な手段。
それは、奴隷魔法で縛り上げた人間による人体実験だった。
多くの犠牲を礎に、彼らはついに人間に適応可能な出力比を導き出した。
「よし! こいつらを引き連れ、帝国跡地周辺で実地テストを行う!」
カイルの高らかな宣言に、欲望に目を輝かせ、歓喜に沸く部下たち。自分たちがこの世で最強の力を手に入れたのだという、愚かな過信に酔いしれていた。
幹部たちは改造を施された奴隷兵を引き連れ、死の静寂に包まれた帝国跡地へと向かった。
奴隷たちは生気を失った瞳で、ただ機械的に引きずられていく。
だが、現実は甘くなかった。
帝国跡地にほど近い深い森。
そこは魔力汚染によって変異した、規格外の魔獣たちが支配する死地であった。
「……ッ!? 出たぞ! 変異鬼熊だ!」
幹部の一人が悲鳴を上げた。
目の前に現れたのは、体長4メートルに達する巨獣。その剛腕は一振りで巨大な岩を粉砕し、獲物の骨を容易く砕く。
明らかに自分たちの手に負える相手ではない。
しかし、幹部たちは冷酷に命令を下した。
「行け! 人工魔核の力を見せてみろ!」
奴隷たちは逆らうことすら許されず、震える足で巨大な絶望へと立ち向かわされた。
確かに魔核による身体能力の向上は著しかった。
しかし、所詮は元の人間としての強度の範疇。
生物としての絶対的な力の差があまりにも大きすぎた。
鬼熊の剛腕が振るわれるたび、奴隷たちは紙細工のように吹き飛ばされ、地面や樹木に叩きつけられた。
だが、ここからが本当の地獄だった。
胸に埋め込まれた人工魔核が、強制的に肉体を繋ぎ止め始めたのだ。
致命的な損傷を負い、本来なら即座に絶命しているはずの肉体。
しかし、魔核が放つ不自然な光が、無理やり彼らを死の淵から引き戻し、戦場に繋ぎ止める。
「あ、が……っ! 助け……殺して……っ!!」
死ぬことすら許されない再生の苦痛。
それを見た幹部たちは顔を青ざめさせ、あっさりと背を向けた。
「実戦テストは失敗だ! 全員撤退! お前たちは、その体で奴の足止めをしろ!」
あまりにも非道な命令を捨て台詞に、彼らは逃げるように森を去っていった。
深い森の奥、鬼熊の咆哮と、鈍い破砕音が響き渡る。
取り残された奴隷兵たちは、絶望の淵でただ、届くはずのない救いを求めて涙を流し続けるしかなかった。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
カイルたちの非道な行い、そして取り残された者たち……。
**「カイルに怒りを感じる!」「ユエ、彼らを救ってくれ!」**と少しでも思っていただけましたら、
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