第五十四話 春の芽吹きと、やりすぎた天才たち
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長い冬がようやく終わりを告げ、雪解けの地面が顔を出した頃。
「ノア! 走っちゃだめだよ、転ぶから!」
「わかってるよー!」
シェリルの制止も聞かず、最年少のノアは解放感からか嬉しそうに庭を駆け回っている。
案の定、ぬかるみに足を取られて派手に転び、泥だらけになったところをセドリックに捕まってこっぴどく説教を食らっていた。
一方、家の扉からおずおずと顔を出しているのは魔猿たちだ。
まだ少し肌寒いのか外に出るのを躊躇っていたが、そこへ「鍛錬中毒」のラウがやってきた。
「お前ら、早く外に出て走るぞ! せっかく晴れたんだ、今運動しないでどうする!」
有無を言わさぬ勢いで、ラウは嫌がる魔猿たちを引き連れて広場へと消えていった。
助けを求める彼らの切実な視線に、私はただ笑顔で「いってらっしゃい!」と手を振って見送った。
さて、私の方にもやりたいことがあった。
「シェリル、例のゴーレムの試作機、動かしてみようよ」
「そうね。テストしたい項目も溜まってるし、ちょうどいいわ」
私がアイテムボックスから取り出したのは、しなやかな豹の形をしたゴーレムサーチャーと、鋭い鴉の形をしたゴーレムウォッチャー。
「これなら、索敵用の魔道具トリニティ・アイズを使わなくても広範囲を偵察できるわね」
シェリルが感心したように頷く。
これら自律型ゴーレムは、私の魔眼を使わずとも隠密性と戦闘耐久に重きを置いた偵察を可能にする特化型だ。
「起動」
ウォン、と低い駆動音が響き、ゴーレムたちの眼に光が灯る。
命令を下すと、彼らはすぐさまステルスモードを展開し、景色に溶け込むようにして森の中へと消えていった。
「……おぉ! かっこいいじゃない!」
「ロマンね、ロマン!」
二人でガッツポーズを決め、拳を合わせる。
通信機を介した遠隔操作テストも完璧。
帰還命令を出すと、彼らは瞬時に足元へ戻ってきた。
「よし、次は魔法耐久テストだ」
私は雷魔法の術式を編み、展開した魔法陣から紫電を放った。
ズドン!!
激しい衝撃と土煙が舞うが、それが晴れた後には無傷のゴーレムたちが平然と佇んでいた。
「素晴らしい。じゃあ、物理はどうかな!」
今度は私が全力を込め、ゴーレムの腹に蹴りを叩き込む。
――ドゴォォォン!!
凄まじい衝撃音と共にゴーレムは近くの廃墟へと吹き飛んだが、すぐさま身を翻して無傷で起き上がった。アナライズ・メガネで内部の魔導回路を精査したが、異常なし。
合格だ。
「さすが私たちね!」
「ああ。でもシェリル、ここの出力をさらに上げれば、もっと追随性能を極められるんじゃないか?」
「いいわね、やってみましょう!」
天才二人が揃うと、加減という言葉がどこかへ飛んでいく。
夢中で試行錯誤とテストを繰り返した結果――日が暮れる頃には、拠点の庭はまるで戦場跡地のようにボコボコになっていた。
「……お二人とも、何か仰りたいことは?」
そこには、般若のような形相で立つセドリックの姿があった。
帝国時代の最高知能と、兵器開発のスペシャリスト。
そんな二人が春の月明かりの下、並んで正座をさせられている光景は……客観的に見て、相当にシュールだったに違いない。
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