第五十三話 白銀の冬ごもりと、魔導の進化
ご来訪ありがとうございます。ゆっくり楽しんでいってください。
本格的な冬が到来すると、帝国跡地は白銀の世界へと姿を変えた。
連日、視界を遮るほどの猛吹雪が吹き荒れているが、新拠点の内部は驚くほど快適だ。
私とシェリルが心血を注いで作り上げた魔導暖房システムが、真鍮のパイプを通じて心地よい熱を家中に行き渡らせている。
「ふぅ……やはり文明の利器は素晴らしいですね」
私は温かい飲み物を片手に、窓の外の荒天を眺めた。
かつて雪山で冷水を浴びていた頃が、まるで遠い昔のようだ。
外に出られないこの期間、家族たちはそれぞれ自身の研鑽に励んでいた。
【ラウと5匹の門下生】
トレーニングルームからは、連日激しい打撃音が響いている。
ラウは、鵺の身体能力を最大限に活かした新しい武術の開発に没頭していた。
その姿を、先日名を授けた5匹の魔猿たちが、心底憧れたような目で見つめている。
責任感の強いリーダー格の【ラン丸】
おっちょこちょいだが愛嬌のある【リン太】
手先が器用で工作を好む【カレン】
お調子者で場を盛り上げる【アルマ】
仲間思いで心優しい【コハル】
彼らもラウの動きを真似て、互いに切磋琢磨している。
今ではすっかり立派な門下生だ。
【ノアの飛躍】
ノアはさらに難解な学術書を読み解きつつ、私から直接魔術の指導を受けていた。
「ユエ、この術式の構成をこう組み替えれば、もっと発動が早くなると思うんだけど……」
「……ええ、その通りです。ノア、君は本当に天才ですね」
彼は教えたことを吸収するだけでなく、独自に理論を組み立てて新しい魔法を編み出すことさえある。
その恐るべき適応能力には、師である私の方が驚かされる毎日だ。
【食卓の守護神・セドリック】
セドリックは、温室で品種改良した新種の野菜やスパイスを使い、料理の研究に余念がない。
「ユエ様、新作のポタージュです。このスパイス、身体が芯から温まりますよ」
彼の探究心のおかげで、私たちの食卓は最高級レストランも凌ぐほどの彩りに満ちている。
【姉弟の共同開発:魔法防護衣】
そして、私とシェリルは共同開発室に籠もり、ある特殊な装備の開発に心血を注いでいた。
「シェリル、ここの空間転移の術式、もう少しレスポンスを上げられないかな?」
「わかってるって。でも、キメラ化した時の圧力に耐えるピアス側の亜空間容量がギリギリなのよ」
私たちが作っているのは、『自動換装型・魔法防護衣』。
あらゆる魔法と衝撃に耐える特殊素材を用いるのはもちろん、最大の肝は変身への対応だ。
私たちがキメラに変身した瞬間、衣服はピアス型の亜空間デバイスへ自動で収納される。
そして人型に戻った瞬間、身体へ直接転移して再装着される仕組みだ。
「……これで、変身するたびに服を脱いだり、破けたりする心配はなくなりますね」
「本当によ。これこそ乙女(?)の嗜み、および魔導師としての矜持だわ!」
私たちは技術屋としての意地をかけ、連日深夜まで魔導回路と格闘した。
時折、雪が止んだ合間を見計らって、外の世界へも足を伸ばす。
静まり返った帝国跡地には、雪の下に眠る過去の遺物がまだ数多く眠っている。
厳しい冬は、私たちに静かな休息と、次なる飛躍への準備期間を与えてくれた。
春が来て雪が解ける頃、私たちは今よりもずっと強く、そして高い場所へと進んでいることだろう。
とりあえず、今日もセドリックの美味しい夕食を囲み、家族全員で笑い合える。
それだけで、この拠点を築いた価値はあったというものだ。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
新拠点の冬ごもり、楽しんでいただけたでしょうか?
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