第五十二話 雪の日の新生活に備えて。
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季節は秋が深まり、吐く息が少しずつ白くなり始めた頃。
私たちは戦略物資集積区画で見つけた遺物を活用し、冬を越すための拠点作りを急いでいた。
デポのすぐ近くに手頃な空き地を見つけると、シェリルに魔改造されたゴーレムたちが猛然と整地を開始する。
以前の拠点からここまで往復するのは正直面倒だったから、この移転は合理的かつ必然の選択だ。
建築はゴーレムたちに任せ、私とシェリルは家電作りと防衛設備の設計に没頭した。
ラウと魔猿たちは食材集め、セドリックとノアは資源探索。それぞれが役割を分担し、着実に新しい家が形作られていく。
「シェリル、この術式を改良すれば魔力出力が安定して、無駄な消費を抑えられるんじゃないかな?」
「そうだね。でもそこ、もう少しこうすればもっと効率化できると思うよ?」
新規開発したアナライズ・ゴーグルを額に上げ、あーだこーだと言い合いながら魔道具を作り上げていく時間は、至福だった。
そして、空から雪がちらほらと舞い始めた頃。
ついに私たちの新拠点が完成した。
「……さすがゴーレムだ。シェリルがデポの存在に気づいていなければ、厳しい冬を覚悟していただろうな」
皆で完成した内部を視察して回る。
内装は、私とシェリルのロマンを詰め込んだスチームパンク風の建築だ。
観賞用植物を随所に配置し、モダンでお洒落な仕上がりにこだわった。
セドリック: 最新鋭の設備が整った台所に、感激のあまり涙を流している。
ノア: 学習用タブレット(魔導版)などを取り揃えた、勉強の捗る特製ルーム。
ラウ: 鍛錬好きの彼のため、トレーニングルームを完備。鵺に変身しても壊れない……はずだ。
魔猿たち: 文明的な個室は苦手そうだったので、ジャングルを再現した温室を寝床に。ここは品種改良した植物を育てる実験場も兼ねている。
もちろん、各員のプライバシーもばっちり完備だ。
そして中心部にある私たちの共同開発室で、私はふと思いついたことを口にした。
「とりあえず、冬を越す準備は整った。あとは通信用の個別デバイスも作らなきゃね。今度の冬は大雪になりそうだし、開発に集中するとしようか。シェリル、そこら辺をお願いできる?」
「いいよ、任せておいて」
シェリルは試作中の魔道具をいじりながら、片手間で返事をした。
「それじゃあ、私はキメラ術式の応用型魔術でも考えるとしよう」
シェリルがぴたりと手を止め、こちらを向く。
「……何のためにキメラ術式を?」
私は腕を組み、これまでの出来事を踏まえた構想を伝えた。
「変異種を素体にした新たなキメラを作り、拠点周りの防衛に配置しようと考えているんだ」
「ゴーレムじゃダメなの?」
「ゴーレムは命令されたことしかできないでしょ? 自分で状況を判断して動ける、自律型の生物が必要だと思うんだ。……まあ、道徳的にどうかとは思うけどね」
私は苦笑いしつつ、本心を続ける。
「でも、これは変異種を助ける意味もあるんだよ。魔力汚染の影響で肉体が蝕まれ、常に魔力に飢えている彼らを、術式で救ってあげたい。過剰な魔力に耐えられるよう肉体を作り変え、意思疎通までできるようになれば、彼らにとっても、私たちにとっても有益だろう?」
今回改良したい術式には、保険として「こちらに敵対できない」という制限を組み込むつもりだ。
私の意図を汲み取ったのか、シェリルは再び手元の作業に戻った。
「……まあ、ね。ほどほどにしなよ?」
その言葉を背に、私は雪に閉ざされる冬の間に作り上げるべき「新たな命」の設計図を、静かに脳裏に描き始めた。
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