第五十話 魔導科学と文明の利器!
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戦略物資集積区画内に入ると、そこには数百年という歳の断絶を微塵も感じさせない、驚異的な保存状態の魔道具群が並んでいた。
整然と並ぶ魔導ゴーレムの列。
禍々《まがまが》しくも機能美を湛えた魔導戦車。
そして天井から吊り下げられた、巨大な魔導飛空艇。
帝国がかつて誇っていた国力の結晶たちが、新たな主を待つように、圧倒的な威圧感を持って佇んでいる。
「ああ、素晴らしい……! シェリル、これだけの物資があれば拠点の強化も劇的に効率化できますよ!」
感嘆のあまり両手を天に掲げたが、返事はない。
隣を見ると、魔導兵器のスペシャリストである姉は、すでに有用なパーツを求めて猛然と倉庫の奥へ突撃していた。
相変わらずの行動力というか、目利きに関しては私以上の執念だな。
私は掲げた両手をそっと下げ、苦笑いと共に溜息をついた。
「……さて、私も情報の精査を始めるとしましょうか」
私はアイテムボックスから探索ユニット、トリニティ・アイズを起動させた。
フギンとムニンが浮遊して舞い踊るように飛んでいき、倉庫内を縦横無尽にスキャンしていく。
その膨大な魔力パスの解析データは、中継機ヴァルキリーを介して、私のアナライズ・メガネへとリアルタイムで流れ込んできた。
「うん、順調ですね。……おや?」
ふと背後を見ると、ラウたちがいた。
彼らは見たこともない巨大な鉄の塊――微動だにしないゴーレムたちを見上げ、今にも飛び上がらんばかりにビクビクと周囲を警戒している。
百戦錬磨のラウでさえ、この戦いの予感を孕んだ沈黙には当てられているようだ。
だが、唯一ノアだけが、キラキラとした目でゴーレムたちを眺めている。実に微笑ましい。
「セドリック。ラウたちのケアは任せましたよ。大丈夫、これらはまだ眠っていますから」
「えっ、私一人でこの猛獣たちをなだめるのですか……!?」
セドリックの困惑を背中で聞き流しながら、私は情報の波を精査していく。
戦車型は重機に改造して鉱山発掘に回そう。
ゴーレムたちには後でシェリルに頼んで、現代のAIに近い論理術式を組み込んでもらおう。
そうすれば自律型の防衛や建築の自動化も夢ではない。
思考を走らせていると、ふと一つの試作機に目が止まった。
「ん? これら……」
それは、稼働中に高温になる魔導機器を冷却するために開発されていた、未完成の温度調整デバイスだった。
「……これだ! これですよ! 術式を反転させて熱を持たせれば、IHコンロのような魔導調理器に応用できるはずです」
それだけではない。冷却機能を活かせば冷蔵庫、冷暖房、そして……何よりも!
「お風呂! 追い焚き機能付きのお風呂が作れる! なんという大収穫だ!」
インフラ整備の光明が見え、私は心の底から歓喜した。
冬が来る前に、この文明の利器を総動員して、拠点を現代日本並みに快適に作り変えてみせる。
「シェリル! 良いものを見つけましたよ! 今日からここは、兵器工場兼・家電研究所です!」
背後でラウたちが「カデン……?」と首を傾げ、セドリックが「またユエ様の悪い癖が……」と遠い目をしているのも構わず、私は未来の快適な生活――とりわけお湯の温もりを夢見て、さらにスキャンの速度を上げるのだった。
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